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異説・百物語~物部カタルは斯くも語りて~  作者: 八月 猫
其の弐 河童(カッパ)

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17/21

河童(3)

 クリスマスを翌週末に控えた12月の寒い夜だった。

 豊峰がその日の勤務を終え、帰宅する準備を整えている時、ふいに携帯に妻からの着信があった。


 電話越しの妻の声は明らかに取り乱しており、豊峰が冷静になるように促しても、妻は息子が返ってきていないと繰り返し訴えるのみであった。


 そして豊峰の説得で何とか落ち着きを取り戻した妻の話では、息子ののぞむが学校からまだ戻ってきていないという話だった。

 豊峰が時計に目をやると、針は18時を少し回ったところで、普段であれば友達と遊びに行っていても17時には家に帰ってきており、こんな時間まで家に戻っていないことはこれまでに一度も無かった。


 すでに普段遊んでいる友達の家にも電話をかけたが、今日は遊びに来ていないとのこと。

 学校に連絡を取ると、今日は15時過ぎには下校したとの返答があったという。


 豊峰は刑事という職業柄、これまでに様々な事件に携わってきていた。

 そこで培われてきた刑事の勘が、頭の中で激しく警鐘を鳴らしていた。


 妻にすぐに帰るので家で待っているようにと告げて電話を切ると、その足で急ぎ生活安全課へと向かった。

 そしてそこで同じく帰り支度をしていた知り合いの刑事を見つけると、先ほどの妻との電話の内容を伝えた。

 真剣な表情で話を聞いていた彼は、全てを聞き終わる前に近くにいた他の署員に出掛ける準備をするように指示を出した。

 そして生活安全課の刑事である奥野と、二人の若い警察官を連れて家路を急いだ。


 家に着くと玄関の前で妻が落ち着きのない様子で立っていた。

 豊峰の姿を見て駆け寄ってきた妻は、「のぞむのぞむ!」と息子の名前を繰り返し叫び、その悲痛な様子に豊峰の心にも強い動揺が走った。


 話を聞いた奥野はすぐに署に連絡を入れて応援を要請。同行していた警察官は学校と子供の立ち寄りそうな付近の公園へと向かった。

 幼い子供とはいえ、小学校高学年くらいになれば帰宅が多少遅くなることもあるだろう。しかし、豊峰の息子は今年小学校に上がったばかりの7歳。例え一人でどこかへ行っていたとしても危険が大きい。しかも今は時期的に日没が早く、すでに周囲は完全に夜。少し北に行けば深い山があり、この付近には大きな川も流れている。夜道を子供が一人で歩いていたのを見かけた者が不埒な考えを起こさないとも限らない。すでにこの時点で最悪の状況すら想定して動かなければならない程に切迫した状態だった。

 もし迷子となっていたのであれば、誰かが保護して警察へと連絡を入れてくれるだろうが、奥野が署に連絡した際にはまだそのような報告は届いていなかった。


 翌朝から本格的な捜査が始まった。

 しかし現状で事件性があるとは判断出来ていない為、捜索は生活安全課が引き受けることになる。捜査一課に所属する豊峰は、自分の手で探すことが出来ない悔しさを抱えたまま署へと出勤することになった。


 付近の聞き込みが進められたが、有力な目撃情報等が見つかることなくその日の捜索が終了する。


 そして翌日事態は急変する。

 学校から家までの間にある防犯カメラの解析が進むと、15時30分頃に亀水きすい川付近の堤防を、他の小学生たちと同様に歩いて自宅のある方向へと向かっている希の姿が映っていることが確認された。

 そしてその後、どの防犯カメラにも希の姿は映っていない。

 その事から希は亀水川周辺にいる可能性が高いと判断され、直ちに亀水川周辺の捜索活動が開始されることとなった。


 消防と協力しての大がかりな捜索となったが、亀水川の河原周辺は長く生い茂った草に覆われ、前の週に降った雨による水嵩みずかさの上昇もあり、希の捜索活動は難航を極めた。



 

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