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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

婚約破棄の現場でアクシデント

婚約破棄の現場で~転生悪役令嬢は原作知識で暴露した~

作者: Ash

 婚約破棄されてしまった。

 婚約破棄されることは、原作の漫画、読んでいたから知っていたけど。

 ついでに原作の通り、玉座で笑顔で婚約破棄を認めている国王夫妻。

 子も子なら、親も親。

 浮気相手と婚約者の捨て方ぐらいしか変わらない。

 陛下の元婚約者は婚約が無くなった後、他国に渡ったそうだ。

 私にもそうしろ、と思っているだろうが、そこは原作メタ知識のある転生者。問屋はただでは卸さない。


「スタータイプ前伯爵の庶子であることは百歩譲っても、このような王家主催のパーティーで婚約破棄を許す王など、この国の恥です!」

「「「?!!!」」」

「「「スタータイプ前伯爵?!」」」


 阿鼻叫喚だよね。

 今の国王は前王妃じゃなくて、前国王の側妃から生まれたんだけど、母親が前国王に寵愛を受けているから、王太子にされたんだよね。

 前国王の寵愛マジックで、スタータイプ前伯爵の庶子が国王になってしまったのでしたマル

 前王妃の実家が滅茶苦茶、怖い目で国王を見ている。前王妃腹の王兄も。

 ハラワタ煮えくり返っているようですマル


「何を戯けたことを!」

「だって、陛下もスタータイプ伯爵家男子の証である右脇腹に星型のアザがありますよね? 殿下にもございますし、陛下になければ王妃殿下がスタータイプ伯爵家の庶子を産んだことになりますが?」


 原作でヒロインが気付いちゃうんだよね、殿下のアザ。

 スタータイプ伯爵家のアザはスタータイプ伯爵家の令息が剣術の授業が終わって、服の裾で汗を拭っているのを多くの学生が目撃していて、ヒロインもその一人だった。

 殿下にあって、国王に無いってことは、王妃と浮気相手の庶子。

 婚約破棄してまで結婚した女性に浮気されて、ざまあ。

 でも、原作で国王自身がスタータイプ前伯爵の庶子だって書かれていて、王妃は浮気していないんだよね。


「そんな、馬鹿なことがあるか?!」

「では、スタータイプ伯爵の右脇腹を確認してください。殿下と同じ形のアザがございますから」

「・・・!」


 国王は自分も息子のアザにも気付いていないみたいだけど、王妃は蒼白な顔だ。息子は知らなくても、夫のアザくらいには気付いているだろうし、不貞を問われているし。


「クリスティーナは不貞などせぬ! 余、一筋だ!」

「ですから、申し上げているではありませんか。スタータイプ前伯爵の庶子は陛下だと」

「なっ?!!」


 自分が伯爵の庶子だなどと、生まれてこの方、王族として疑わずに生きてきた国王は、脳が理解できなかったので、説明してやった。


「な?! 何をする?!」

「陛下に忠誠を誓うなら、何故、潔白を証明しない?!」


 大広間の中程で悲鳴がして、見たらスタータイプ伯爵が数人に押さえられて服を破かれていた。やっているのは、前王妃派の人々だ。

 国王が托卵された庶子だったなんて、前王妃の実家や王兄の妻の実家などの前王妃派にとっては王位を取り戻す最高のカードである。


「あったぞ! ジョコンド嬢の言う通り、星型のアザだ!」

「!!」


 王家の血を尊ぶ家の目の色が変わった。国王を見る目から、前国王の側妃の庶子を見る目に。


「ラルフ!」

「嫌だ!! 離してくれ、叔父上!!」

「大人しくしろ、ラルフ! すぐに終わる!」


 こちらでも悲鳴が聞こえる。

 ラルフ殿下を押さえつけて服を引き千切っているのは、王兄だ。

 手早くアザを確認した王兄は、ラルフ殿下を解放する。

 ラルフ殿下はこれ以上、狼藉を加えられたら、と素早く国王夫妻の傍に逃げた。


「ラルフ、良かったな。ジョコンド嬢と結婚する必要がなくなって」

「婚約破棄したのに、結婚するはずがないだろ!」

「婚約破棄など関係ない。伯爵家の庶子には、王妃教育を受けた令嬢と結婚する必要などないからな」

「へ?」


 王兄は呆気にとられたラルフ殿下を無視して、国王に向き直った。


「陛下! 王太子にはスタータイプ伯爵と同じアザがありました! 伯爵家の庶子を王太子になど、酔狂が過ぎます! 今すぐ廃太子のご決断を!」

「ガナッシュ! 何を言うのだ! ラルフを廃太子などと――!」

「では、不貞を犯した王妃殿下を処罰なさると?」

「クリスティーナは不貞など犯してはおらぬ!」

「はて。これは異な事を。婚約者のいた陛下を誑かしておいて、陛下は不貞を働いていないとおっしゃるのですか? 略奪婚をした王妃殿下は不貞を犯していないと?」

「余とクリスティーナは愛し合っておるのだ!」

「ですが、王太子殿下の父親はスタータイプ伯爵家の直系。王妃殿下が不貞を犯していなければ、誰が産んだとお考えで?」

「ラルフはクリスティーナが産んだ余の息子だ! スタータイプ伯爵の息子ではない!」

「陛下。退位なさるか、ご子息を廃太子にするか、お選びください」


 答えは初めに私が言ったというのに、王兄は王妃か国王の実母のどちらが不貞を働いたか、国王に決断を迫っている。

 この流れは原作ではラルフ殿下が国王に決断迫っていたんだよね。

 婚約破棄までが前編で後半は出生の秘密を苦悩するラルフ殿下を支える流れだから、王兄みたいにその場で事態把握して決断迫るなんてしない優しい流れだったけど。

 前国王が前王妃の息子であるガナッシュに王位を譲らないなんて、やらかしてたからなあ。


「余の退位も、ラルフの廃太子も許さぬ!」

「許す許さないの問題ではございません。これはスタータイプ伯爵家の庶子を廃太子にするか、陛下がスタータイプ伯爵家の庶子だと認めて退位するか、の問題です。自分を守るか、ご子息を守るか、どちらを守りますか?」

「どちらを守るも何も、ラルフは何も悪くない。ラルフは余とクリスティーナの息子だ。スタータイプ伯爵家の庶子ではない」

「王太子をスタータイプ伯爵家の庶子にしない為には、ご自分がスタータイプ伯爵家の庶子であるとお認めください」

「嫌だ、嫌だ! 余は、余は・・・、――」

「王妃殿下を不義密通の罪にしない為には、陛下ご自身が不義密通で生まれたと、認めるしかございません」

「・・・」

「ご決断頂けないようなら、一時的に王権を停止させていただきます。――前国王に急使を! スタータイプ伯爵家は一族、貴族牢へ! 国王御一家は自室にて軟禁せよ!」




 ◇◆




 急使を受けて宮廷に戻ってきた前国王は、スタータイプ伯爵と国王の同じ場所にある同じアザを見て大激怒。

 愛しさ余って憎さ百倍。前国王の側妃は、息子一家の目の前で毒杯を呷らせたそうな。

 元国王も前国王の血を引いていない為に一家揃って塔に幽閉。

 スタータイプ伯爵はいつの間にかなくなり、結婚していたスタータイプ伯爵の一族も離縁されたりして、社交界から姿を消した。

 スタータイプ伯爵一族?

 貴族牢に入ってから、行方知れずですが、何か?


 ヒロインはどうしたかって?

 塔に幽閉されるラルフ殿下が可哀そうなので一緒に入れてやった。

 真に愛し合う二人なら、どんなところでも、幸せになるだろう。元国王夫妻のように。


 こうして、王兄殿下が即位して、前王妃がそれはもう鼻高々。

 前国王は何とか前王妃にスリスリしようとして無視されていた。前王妃の産んだ年長の息子を押しのけて、愛する側妃の息子に王位を与えた前科は、和解なんてできるものじゃないよね。

 そして、私は断罪を回避して、今日も公爵令嬢として優雅な生活を続けている。――とは、いかなかった。


「待って、ティーナ」

「ふふふ・・・。トミー、捕まえてみて」


 若い恋人同士かと思ったら、目の前に見えるのはアラフォーの平民男女。

 長閑な光景だけど、私はこれを監視しなければいけない。


「あら、オペラ! こんにちは。調子はどう? 良い人は見つかった?」


 朗らかにそう言うのは、ティーナこと、塔に軟禁されているはずの元王妃のクリスティーナ。

 その横でデレデレしているのは、トミーこと、同じく塔に軟禁されているはずの元国王トーマスである。


 実はこのクリスティーナ。かなりの強心臓の持ち主だと判明した。

 夫であるトーマスに冤罪をかけられて婚約破棄された女性にはすまなかったという気持ちはまったく、持っていないのだ。そういう人だからか、息子が冤罪かけて婚約破棄しようとした私にも平然と声をかけてくる。


 クリスティーナの強心臓伝説は、塔への幽閉にもある。

「何故、余がこんな目に遭わなければならないんだ!」と嘆くトーマスに、「これで一緒に居られる時間が増えたわ」と喜んだそうだ。

 トーマスは待遇の違いを気にしたそうだが、

「あなたがいてくれるだけで、私は幸せよ」と、宣ったそうだ。


 幽閉されているにも関わらず、王妃としての生活より喜んでいるなんて・・・なんて強心臓。

 元は伯爵家の庶子で、王立学校に入る直前まで平民として暮らしていたとはいえ・・・なんて強心臓。

 夫の母親が毒杯を呷る場にも立ち会っていて、その後も二人の世界を楽しむ、その余裕。自分たちの身の危険など、一切、考えていないのだろう。


 幽閉されているはずの塔の中で、あまりにも二人の世界を展開していた為に、罰にならないと、我が家の領地で平民夫婦として暮らさせることになったんだけど、これがまた大喜び。

 日常生活を二人で送れるようになり、トーマスも農場に雇われて働くことに慣れてきたら、教会で預かっている孤児たちと遊んだり、物語を語ったりと、慈善(ボランティア)活動まで始めて地域に溶け込み、孤児たちの面倒を看る仕事を任せられるようになってしまった。

 自分の息子の教育に失敗したのは、王族として仕事に追われて息子との距離が開きすぎたせいだったのかもしれない。

 それぐらい、孤児たちに慕われる良い世話係なのよ。


 ラルフ元殿下の真実の愛は塔の中で破綻し(罵り合っ)ているけど、その両親である元国王(トミー&ティーナ)夫妻の真実の愛はどんな状況になっても継続している。


「ラルフも私たちの手で育てたら、オペラにおススメできたんだけど」

「え。婚約破棄王子(ラルフ元殿下)なんていらない」

「私たちの手で育てたら、婚約破棄なんてしないわよ。オペラの良さに気付く子になっていたわ」

「そうだな」


 だからって、なんで婚約破棄してきた婚約者の両親が退位した後に親しくしなきゃいけないのよ?!

 せめて、イチャイチャ生活を見せつけないで!!

トーマス元国王の婚約者だった女性「トーマス殿下が怖いので(クリスティーナに押し付けました)」

実はヤンデレ気質に気付いて逃げていました。

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― 新着の感想 ―
夫がどれだけ落ちぶれても愛し続ける元王妃となんだかんだ仲良くなってる元国王ってまさに真実の愛ですね…。 面白い小説を読むとコミカライズされると良いなーとか思うのですが、このお話の場合は元国王夫妻のキャ…
これはひどい(褒め言葉)
こういうのを親の因果が子に報いって言うのか…?とも思いましたがそうか??という気分にもなったり……フフフ…… まぁ元王妃はたくましい庶民の血が流れてただろうから、どこでも生きていける逞しさがあるのかも…
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