第7章: 再生
著者からの注釈:
以前の章に若干の変更を加える予定ですので、すでに読まれている方は、ぜひ今日から明日にかけて再読をおすすめします。物語の本質は変わりませんが、テキストの深みが増す予定です。また、Patreonではすでに数十話先まで公開されています。日本向けのコレクションも用意しています。
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視点: マグナス・ブリッジ
どれくらいの時間が経ったのだろうか? 正直、わからない。周囲の部屋は静寂に包まれ、薄暗い視界の中で影が闇の中を揺らめいている。時折、虫やコウモリが音もなく横切る。私はこの止まった時間を活用し、魔法の方程式、呪文の構造、ルーン、召喚術、呪い、そしてそれに類する数々のことを考え続けていた。しかし、ときおり、何か大事なことを忘れているような感覚が胸をよぎる。それはきっと、時の流れが記憶を蝕んでいるからだ。
物理的な身体がなくなった今、焦燥感を感じることはないはずだ。それでも、冒険者がこの扉を通らない可能性を考えると、不安が頭をもたげる。このエネルギーが尽きたらどうなる? 私の思考が全て失われたらどうなる? いったいどれほどの時間が過ぎたのだろうか?
もしもリッチになる道を選んでいれば、せいぜい一つか二つの文明を滅ぼせば済んだはずだ。果たして、私は正しい選択をしたのだろうか? 過去の決断を悔やむ中、突然、部屋に轟音が響き渡った。
人影が暗闇の中から姿を現した。ぼやけた輪郭しか見えないが、その周囲に漂うマナが普通ではない。
「ようこそ、若き冒険者よ。このダンジョンを突破したことを称え、最大限の知識を授けよう。」これまで何度も練習してきた芝居がかった口調で語りかけた。
すると、部屋にくしゃみが響き渡った。「なぜこんなにも死体が転がっているんだ?」男の声だった。この時点で、来訪者が男性であることはわかった。
「恐れるな。これらの死体は、昔、魔法の事故で命を落とした研究者たちのものだ。私はその研究の残された情報だ。さあ、近づいてオーブに手を置くのだ。そうすれば、最強の魔法使いになる知識を授けよう。」
半分は本当だ。彼らが死んだのは、確かに私が犯した失敗のせいだ。しかし、その全てを話す必要はない。
暗がりの中、彼の腕がゆっくりと持ち上がる。あともう少し…そう思いながら、じっと見つめた。しかし、彼の手は途中で止まり、後ずさった。「断る。怪しすぎる。」
「どういうことだ、断るだと?」予想外の反応だった。ここで彼を逃がすわけにはいかない。次の冒険者が来るまで何十年、何百年かかるかわからない。「若き冒険者よ、知識以外に欲しいものがあるのか? 宝物などはどうだ?」
「いや、だって考えてみてくれ。死体だらけの部屋で、絶対的な力を与えると言われても怪しいだろ?」彼の声には明らかな疑念が込められていた。「ところで、この部屋には宝物があるのか?」
「宝物か。では、こうしよう。私は何世紀もこのダンジョンに囚われている。君の冒険に同行させてくれるなら、隠された宝物の場所を教えよう。」
私は焦らず待った。彼がオーブに触れれば、彼の身体は私のものになる。ムハハハ!
部屋の静寂が続いた。人影はしばらく動かなかったが、やがてこう言った。「俺の名前はクリストファーだ。お前の名前はなんだ、しゃべる玉?」
その質問は重要ではない。彼の意識はすぐに私のものになるのだから。
「私は最高魔術師マグナス・ブリッジ。聞いたことくらいあるだろう。」
再び静寂が訪れた。私は焦れた。
「それで? 取引は成立か?」
彼はついに動き始めた。オーブに向けて腕を伸ばしながら。「まあいいさ。どうせ他にやることもないしな。」ため息混じりにそう言った。
「もしこれが罠だったら、お前を真っ二つにしてやるからな。」
彼の指がオーブに触れた瞬間、エネルギーが部屋を駆け巡った。私はその身体に流れ込む感覚を得た。目が開くと、周囲の光景がはっきりと見えるようになった。オーブは輝きを失い、部屋は魔力結晶のかすかな光だけで照らされていた。
しかし、何かがおかしい。トーチが点灯するはずなのに、全て消えたままだった。「エネルギーが切れたのか、しゃべる玉?」彼の声が口から出たが、喋っているのは私ではなかった。腕を動かそうとしたが、全く反応しない。
(何かが間違っている。この身体には魔力が不足している。)
彼が…いや、私が動き始め、部屋を物色し始めた。---