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第2章: 列車の旅

作品を気に入っている方へ、お知らせします。すでに多くの章が制作されています。私のPatreonのリンクを貼りますので、月に1本のソフトドリンクの価格で、ほとんどのコンテンツに早期アクセスできます。月額5USDです。

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**視点: クリストファー・ルーズベルト**


ロンドンは思った通りの街だった。本当に魔法のような都市、美しい建築物が古さと現代性を絶妙に融合している。その通りは活気に満ち、何世紀にもわたる歴史を反映している。そして、都市の混沌とした様子の中にも不思議な秩序があることに気づいた。実際、世界そのものが、私が旅を始めて以来、一層美しく見えるようになった。成功していないときは、すべてがもっと暗く、複雑に感じられるものだ。フリーランスの銀行家として、世界中のどこにでもクライアントを持てる自由、そしてもちろん、旅を理由にできる特権がこの職業の魅力だった。ロンドン、パリ、東京、ニューヨーク、ソウル…。ブラジル人であることの特権の一つは、世界で最も優れたパスポートを持っていることだ。


私はロンドンのセント・パンクラス駅にいた。この駅は、まさに建築の驚異だった。鉄骨の曲線的な屋根が踊るように見え、自然光がガラス窓から差し込み、大理石のように磨かれた床に幻想的な模様を作り出していた。駅内は賑やかで、騒がしい声や急ぐ人々の笑い声が飛び交っていた。大きな荷物を持った人々が忙しなく動き回り、どこか目が虚ろだ。それでも、この混雑の中には奇妙な調和があり、皆が事前に練習された振り付けのように動いている。遠くから、ヴァイオリニストが甘く切ない「I Want to Hold Your Hand」を演奏しており、そのメロディーは駅全体に響き渡り、列車の音や人々のざわめきと混ざり合っていた。


私の次の目的地はケンブリッジ。観光目的で向かう予定だった。ラッシュアワーで、周囲の人々を観察していると、左手の方で何かが起こった。騒ぎ声が聞こえ、「泥棒だ!」と叫ぶ声が私の耳に飛び込んできた。周りの人々がざわつき始め、何かが起きているのは明らかだった。それでも、私は動かなかった。自分には関係ない問題だ、と心の中で決めていた。英語も完璧ではなく、外国の地で問題に巻き込まれるのは避けたいと思ったのだ。


右手には列車が滑り込んでくる音が響いていた。車輪の金属音とブレーキ音が混じり合い、駅全体を包んでいた。しかし突然、周囲の現実が歪んだ。騒ぎ声が遠のき、音はすべて鈍くなり、一瞬、何か巨大なものが近づいてくるような低い音が響いた。


その瞬間、誰かが私にぶつかり、私はバランスを崩して前のめりになった。そして、光が現れた…それはとても明るく、まるで太陽そのものが地上に降りてきたかのようだった。その光は次第に強くなり、私はその中に飲み込まれていった。そして、全てが闇に変わった。私の周囲の世界は完全に消えてしまった。


「若き英雄よ。お前の願いを叶えよう。剣と魔法の世界を。」闇の中で、深く遠い声が響いた。しかし、その願いは10年以上も前に抱いたもので、私が人生に迷っていた20代の頃のものだった。冒険、魔法、剣のある世界を求めていた。しかし、今の私は全く違うものを求めている。安定した生活、豊かさ、そして苦しみから解放された人生だ。しかし、それを伝える時間もなく、私はただ浮遊していた。重さもなく、方向感覚も失い、何もない虚無の中を漂っていた。


頭の中が混乱し始めると同時に、鋭い痛みが襲ってきた。もしかして列車に…轢かれたのか?不条理な思考が頭をよぎった。「トラックに轢かれて異世界転生する人は多いが、列車ではどうなんだ?」


時間が経つにつれて、頭の痛みがさらに強くなっていった。背中には何か重みが感じられ、奇妙な感覚が指先に広がった。尖っているようで柔らかい。周囲の空気は新鮮で、まるで森や公園の近くを歩いているかのようだったが、視界には何も見えなかった。そよ風が肌に触れ、思わず深呼吸すると、体が軽くなった気がした。


頭痛が少し和らいだ頃、ようやく目を開けた。そこには草原が広がっていた。私の周囲には高くそびえる木々があり、葉が空を覆い、太陽の光が僅かな隙間から地面に降り注いでいた。私は湿った苔の上に横たわっており、鼻をくすぐるような湿った土の匂いが漂っていた。葉の色鮮やかさは風に揺れ、森全体が命を宿しているかのように感じられた。鳥の声と木々のざわめきだけが静寂を破っていた。


「なんで俺は裸なんだ?」私は肺に深い痛みを感じながら呟いた。「生き物は異世界に転移できるが、服は駄目なのか?」混乱した頭の中でも、裸でいることの違和感は否応なしに現実に引き戻してくれた。力を振り絞り、肘をついて上半身を起こすと、空腹感が腹の底から湧き上がってきた。


私の目の前に広がる世界は信じられないほど神秘的で、今まで訪れたどの土地とも違っていた。木々の中には柔らかい光を放つものもあり、その空間全体が魔法のエネルギーで満たされているようだった。私は完全に異なる世界にいたのだ。しかし、私の心の中では、「これだけか?」という疑問が湧いてきた。本来なら城に招かれ、英雄として扱われるはずが、ただの草原に転がっているのはどういうことだ?


「ターザンごっこをするつもりはないけど、普通なら城とかから始まるものじゃないのか?」と考えながら、状況を理解しようとしていた。


こうして、私の冒険が幕を開けた。それは壮大でも華々しくもない、ただの草むらの中から始まる物語だった。


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