シェアハートー僕の心のルームメイトー
第6回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞応募作品です。テーマは「ルームメイト」。
夜の街が静寂に包まれる頃、僕の部屋にはいつもと違う温もりが漂っていた。
部屋の隅に佇む影。彼女は今日もそこにいる。
「ねえ、聞いてるの?」
透明な声が僕の耳元をかすめた。
彼女、心という名の僕のルームメイトだ。
正確には彼女は僕の“心”そのもの。
物心ついた頃から彼女はそこにいたが、大人になってから彼女の声がより鮮明に聞こえるようになった。
「今日は職場で怒られたんでしょう?そのせいで、こんなに部屋が冷たいのよ」
「勝手に分析するなよ」と僕は苦笑した。
心の声を実際に聞ける人間がどれほどいるのかわからないが、僕にとってはこれが日常だ。
彼女は僕が隠したい感情や無意識の思いを暴き出してしまう。
それは時に面倒で、でも、孤独を癒してくれる存在でもあった。
「まあ、気にしないで」と心は軽やかに笑う。
「失敗なんて誰にでもあることよ。あの課長だって昔は君みたいだったんだから」
「どうしてそんなことがわかる?」
「私は君の中にいるんだから。君がどれだけ課長を恐れているかも、同時に彼を少し羨ましく思っていることも知ってるわ」
彼女の言葉に、僕は一瞬息を飲んだ。
確かに彼のように堂々と振る舞える人間になりたいと思ったことがある。
しかし、それを口にしたことはない。
「ほら、図星でしょ?」心は悪戯っぽく笑った。
「だから、今日もちゃんと向き合おう?私とね」
彼女の存在は、僕の内面と向き合うための鏡のようなものだった。
逃げ場のない対話が続く夜に、僕はようやく自分が本当に望むものを見つけ出せる気がする。
数週間後、僕は課長に向かって初めて意見をぶつけた。
震える声で、自分の思いを伝えると、意外にも彼は真剣に耳を傾けてくれた。
「お前の言うことも一理ある」と彼は静かにうなずいた。
その瞬間、部屋の隅で微笑む心の姿が頭に浮かんだ。
「やったじゃない、勇気を出したね」
その夜、彼女は珍しく僕の隣に座った。
薄い光を纏った彼女の姿はどこか儚げで、でも力強い。僕の中で小さく輝いている希望そのものだ。
「これからもずっとそばにいてくれるか?」僕は思わず聞いた。
「もちろんよ。だって私は君の心だから」
彼女の言葉に、僕は初めて心から笑えた気がした。
僕と心のルームメイトとの物語は、これからも続いていく。
拙作は「なろうラジオ大賞6」参加作品です。
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