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またね

作者: 八夕 由宇

『またね』『さよなら』

どちらもお別れの言葉

それぞれの言葉の意味を考えたことはありますか?


これは遠く昔の話

気軽に連絡を取る手段がなかった頃の『親友』の物語


『さよなら』なんて言わないから

お別れの日、親友に言われた言葉だ

私の住んでいた時代では、東西で争いが絶えずにいた

その争いは熾烈を極め、いつしか壁が出来た

その壁はとても閉鎖的で、もしこの壁を超えれば裏切り者として祭り上げられるだろう

そんな争いに嫌気が刺し、私はよく争いから離れるために静かな場所に抜け出した

そこには壁がなくて、とても開放的で、自然を感じられる


そんなある日のこと、私の場所に誰かがやってきた

どうやら私と同じく争いから逃げるようにこの場所にやって来たらしい

仲良くなるのに時間はかからなかった

だって同じ理由で抜け出してきたのだ

私達は似た者同士なのだろう

それからはよく一緒に過ごした

この場所で共に笑い、共に泣き、時には怒った


一緒に過ごした時間はかけがえのないものになった

この時間が永遠に続けばいいのに

そんな気持ちを抱えながら私達には2つ、暗黙のルールが出来た

1つ、争いの話はしないこと

争いから逃げてきたのだから、わざわざすることはない

2つ、お互いのことは詮索をしない

何故かって?

知ってしまえば一緒に居られない

なんとなく、そんな気がしたのだ

だからお互いのことに深入りはしない

この距離感が心地いいから

何も知らなければ問題はない

そのはずだった


私達はいつも通りに争いから逃げ出す

いつも通りにあの場所へ向かう

何もかもいつも通りだと思っていた

後を付けられていたことも知らず…

いつも居ないことを怪しまれたのだろう

だがそれも確信に変わってしまった

『裏切り者』という確信に

だからこそ、残酷なことを持ち掛けられた

『裏切り者じゃないのなら、次に会った時に連れて来い』

裏切り者じゃないならば、『親友』を差し出す

裏切り者ならば、『自身』を差し出す

どちらを取るかということだろう

考える必要もない

『自身』を差し出そう

せっかく出来た『親友』を手放すなんて出来ないから

だからせめて…お別れをしよう


お互いにいつもと違い、思い詰めた表情をしてた

だから察した

きっと同じ状況なのだろうと

『さよならなんて言わないから』

涙を零しながら告げられる

『また…君に会いたいから』

涙で顔を歪めながらも笑顔を作り言った

また会おうね(またね)


秋の訪れたあの場所には、いつの日か植えた『ダイヤモンドリリー』が咲き誇った


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