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僕はおならで無双する  作者: 温泉卵


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聖女の憂鬱

 聖女鈴木は頭を抱えていた。どうしてこうなった?

 

 勇者須田が聖都でいろいろやらかしていることは、風の噂で聞こえて来る。

 魔法の目で確認する気にもならない。嫌なことは見たくない、それこそストレスで胃に穴が開く。

 

 一番の問題は勇者を呼び込んだのが聖女だと広く知られてしまっていること。今更知らぬ存ぜぬは通用しない。

 勇者須田が破滅すれば、聖女鈴木も共犯者として責任を取らされるだろう。だが須田は鈴木を恨んでいる。今後も思い出したように嫌がらせを仕掛けて来るだろう。

 

 本当にどうしてこうなった? 不良の金田に比べれば、須田はまだ話が通じる相手の筈だったのに。

 聖女のカリスマも、魅了や人心掌握の魔法も、勇者には通じない。いや、リセットされたのだ。

 勇者は死んで蘇る際に、状態異常も解除してしまえるのではないか? デスペナルティがないどころかメリットしかない。

 

 聖女にも死者蘇生の魔法はあるが、対価が大き過ぎる。一人の人間を復活させるには、一人の命を捧げなければならない。悪魔の等価交換だ。

 対価もなしに自動発動する勇者の復活はまさにチート。だが本当にそうなのだろうか?

 

「ダンジョンに、勇者は仲間達と共に向かった。生きて帰ったのはただ一人……」

 

 地球人を復活させるには、地球人の命が必要なのではないか? であるならば、自分達の命も利用される可能性がある。

 かつて鈴木自身も考えたことだ。幸か不幸か命を刈り取る死神の鎌は喪失した。今にして思えば、そのおかげで彼女は悪夢から解放されたのだが……

 

 勇者の視界には、ゲームのように残機が表示されているのかもしれない。問題は、残機のストックに上限があるかだ。勇者が補充したくなった時、誰かが犠牲になる。

 

 

 

 薄暗い部屋の隅で、かつて賢王と呼ばれていた男はほくそ笑んでいた。

 神の国の属国となったものの、国を売った王に従う者などいなかった。お飾りの王にすらなれず、お情けのような捨扶持を与えられて生きながらえていた。

 

 男は小さな木箱から儀礼用の短剣を取り出す。青黒い刃に精緻な文様が刻まれている。

 勇者を滅せる世界で唯一の武器だった。

 勇者は全ての召喚者を倒した後、動けぬ肉の塊と化す。それにこの短剣を突き刺せば、どんな願いも叶うのだ。

 

 姿を消していた勇者が舞い戻り、神の国で傍若無人な振る舞いを繰り返しているという。噂を聞くたび愉快でたまらない。

 全てを失ったが、まだ終わりではない。最後に全てを手に入れるのだ。男は短剣を舐めるように磨き始めた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 鈴木は「どうしてこうなった…」モード。 聖王は終わった奴かと思われたが対勇者キーアイテムを所持。 [一言] グラさんにより蠱毒システムが無効化されたので勇者は肉ダルマにならない筈。素の勇者…
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