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僕はおならで無双する  作者: 温泉卵


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84/250

内ゲバ

「革命バンザイだ。お前にしてはよくやったセンコー」

 

 金田は泥酔していた。両脇に美女を侍らせてご機嫌だ。

 

「今じゃ女の方から寄ってきやがる。オッサンにも一人分けてやろうか?」

 

「……あまり調子に乗っていると、そのうち刺されるぞ」

 

「ンだとバロー! 俺様は超ツエんだよ!! 刺されても平気だし。物理ダメージカットあるし。てめーと一緒にすんじゃねえぞ」

 

「油断し過ぎだ。ここでお前に死なれちゃ困るんだよ」

 

「おいオッサン、ジジイ。年寄りが上から目線で威張んなボケェ。てめえなんざ俺様の手下なんだよ。どっちがボスか、今日こそはっきり教えてやる!」

 

 怒り出した金田の周囲から、女達はそそくさと離れて行く。

 

「馬鹿な奴だな。いいか、我々は全ての人間が平等な社会を目指して戦ってるんだぞ。指揮命令系統は上下関係ではないんだ。全ての命令は私が下すが、君達全てが私と同じ身分、すなわち同志である……」

 

「馬鹿言うな! うっせんだよ! あー、俺キレたかも。キレちまったなあ。テメーの革命ゴッコはもう終わりだ」

 

 ふらつく足で立ち上がった金田は、腰の剣を抜く。大金持ちの宝物庫に死蔵されていた伝説の勇者の剣だ。

 

「馬鹿な真似はよせ。今なら酒の上の不始末ということで、始末書だけで済ませてやる」

 

「死ね死ね死ね死ね! 必殺奥義ダイナマイトブレードッ!!」

 

 力任せに振り抜いた剣から炎系の衝撃波が拡散し、屋敷の半分が吹き飛ぶ。

 

「キャアア! センコー様が」

 

「なんてことだ! センコー様がお亡くなりに。我々はどうすればいいのだ!」

 

 彼らを教え導く存在が光となって消えてしまった。

 部屋にいた女達や組織の幹部達が狼狽え騒ぐなか、金田は腰を下ろし愉快そうに酒を飲む。

 

「騒ぐな騒ぐな。あんな奴は死ねばいいんだよ。クズ教師だって皆が言ってたんだ。アハハ、今日から俺がてっぺんだ。サイキョーの王様だ。いや、皇帝だ。最強皇帝金田様だ!!」

 

 金田の気に障れば、次は自分が殺されるかもしれない。逃げるに逃げられず周囲が固まる中で、利に敏い者が賭けに出る。

 

「か……カネダ皇帝陛下バンザーイ!! サーキョー皇帝バンザーイ」

 

「お、お前イイ奴じゃん。気に入った。大臣にしてやる」

 

 慌てて他の者達も唱和に加わるが、大臣のポストは落ちてこない。

 ほんの数秒の差で、宰相の地位を手に入れた小者は嬉しくてたまらない。金田への忠誠と、帝国建国の指針について熱く語りまくるのであった。

 

 

 

 

 

 平和だ。

 

 一時期は秋山さんがハッスルしまくったせいで、皆死ぬほど忙しかったけれど、それも一段落した。

 秋山さんが金儲けに飽きたからね。ほらね、結局みんな飽きるんだよ。

 

 結局、吉田がまったり実現可能なスケジュールを組んでくれて、スパイスとお茶の交易はのんびり続けることになった。

 一般の貿易商人も食い込めるように、マンドレイク商会はわざと隙だらけの経営を目指す。

 

 吉田は怠け者だけど有能だ。怠け者っていいよね、いてくれるだけで周囲が安心できる。

 

 世界を震撼させたセンコー教団の勢力拡大も頭打ちになったようで、ならず者どもは世界各地で撃破されていっている。こうなると結局、一番得をしたのは神の国の人達だね。

 マンドレイク商会のお得意様だから悪口は言いたくないけれど、神の国って内部は相当に腐ってボロボロになっている。

 聖鎧ってロボはわりと最近開発されたみたいで、あれのせいで新旧の派閥の対立が激化しているらしい。うちが開発費を支援したことになっていて、旧派閥の人達からだいぶ恨まれているみたいだ。どっちの派閥にも不公平ないようお金は回したんだけどね。旧派閥の人達は派手な儀式とかにどんどん使ってたから。

 

 人を大勢集めてイベントをすると、食費だけでもとんでもなくお金がかかるんだよ。軍隊を動かしたりするのも大変だね、兵站って奴? 聖鎧って高価らしいけど、単機で空から敵をポチポチ攻撃してれば、下手に大軍を動かすよりむしろ安上がりらしい。

 

 常備軍を作った信長スゲーとか誰かが言ってたから、そのくらい当たり前じゃんとか思っていたけど、そうじゃなかった。

 軍隊って存在するだけで金食い虫なんだよ。常備軍とか戦争なかったらずっと金食い虫。だから必要な時だけ集めるのが中世世界だと正解。だけどそんな中で常備軍を作った信長はチート。

 

 兵站とか考えると、不良グループの野望は最初からいろいろ無理があったんじゃないかと思う。爆弾とかロケットで戦いには勝てたとしても、補給が続かなければ自滅してしまう。

 

 この世界の人口密度は低い。収穫に応じて広く薄く散らばって住んでるんだから、大軍を組織して進軍なんかしたら、略奪したところですぐに食べ物が無くなる理屈だったんだ。

 結局最後は大勢の人が死ぬことで需給のバランスが落ち着くんだろうけど、異世界の人々に迷惑をかけただけだったね。

 

 まあ、センコー教団に加わったならず者達は、元々社会の底辺で、放っておいてもそのうち飢え死にするしかなかったんだ。食料に余裕がない世界だから仕方ない。

 彼らが武器をとって蜂起したせいで、本来死ななかった層の人間まで大勢死ぬことになった。それについてはいいことなのか悪いことなのか、僕には良くわからない。

 

 秋山さんは食料の増産をすれば皆が豊かに幸せになれると言うけれど、結局それで人口が増えればやっぱり同じことの繰り返しじゃないだろうか? 人が増えた分、死ぬ人の数も増えてしまう。

 

 地球は上手くいっていた? 本当にそうなんだろうか? 日本は少子化だったけど世界人口は増え続けていた。増え過ぎた人口の行きつく先は、この世の地獄かもしれない。 

 

 

 悪逆非道な連中が退治されていくのは喜ばしいニュースで、僕らもそのために資金面で協力した。

 自業自得だと思う。女子達も平然としている。

 死刑がいけないとか考える者はこの世界にはいない。そもそもリソースが足りないんだ。悪人を始末しなければ善人が生きていけない。

 

 食料については、僕には当てがあるけどね。四つ足しか食べないなんて言ってないで、鳥や魚を食べればいいんだ。海には幸が満ちている。

 でも、わざわざ教えないけどね。どうせすぐに、何世代かで捕りつくし喰いつくしてしまう気がする。宗教上の理由というなら、その神様にはきっと何か考えがあったんだろう。

 

 海の見える丘の上で、今日も皆とお腹いっぱいカレーを食べる。

 

 今日も平和だなあ。

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 元々大した思想も理想もない過激集団あるある。いやあってもあるあるか。センコーは本当に死去? 力による恐怖政治に移行かな?アホな不良と小物達でも出来ちゃうんですよねある程度までは。 [一言]…
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