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僕はおならで無双する  作者: 温泉卵


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政治献金

「何よこれ? バースカ砲ってやつ?」

 

 竹井はギャグで言っているのだろうか? 誰も反応しないのは武士の情けか?

 

「金田と先生がこんなの作ってたなんて。何考えてるのよ」

 

「どうせ世界征服とかじゃない、あいつら馬鹿だから」

 

「喧嘩で日本制覇とかイキってたしね。喧嘩弱いのに」

 

「弱いの?」

 

「弱い弱い、カツアゲした中学生にボコられてた」

 

「さいあくー、イタイタしいんですけどー」

 

「今どきの中学生こっわー」

 

 金田の評価は散々だよ。というかこの子達、不良が怖くないのかな?

 

「黒色火薬はともかく、プラスチック爆弾ってそう簡単に作れるものかしら?」

 

「知識があって材料が手に入ったとしても、大量生産するためにはこの世界の人間に作らせる必要があるだろう。火薬の製法が伝わったってことは、剣と魔法の時代の終焉を意味する」

 

 大人二人はなんかシリアスな話をしている。剣はともかく、魔法は爆弾なんかに負けないよ? 僕はおならで米軍にだって勝てる自信がある。鉄が溶ける温度まで上げてやれば、戦艦も戦闘機も壊れるだろう。核兵器? 爆発する前に燃やせばいいんじゃないかな?

 

「金田って戦士じゃなかった? なんかパッとしないやつ」

 

「取り巻きの二人は剣士と、なんか殴るやつ?」

 

「ああ、山本君は別行動してるよ。金田達と別れたみたい」

 

「先生がいるんでしょ? そりゃ逃げ出すわ」

 

「先生やだなあ。ここまで攻めてきたらどうしよう」

 

「担任が別の先生だったらなあ。あいつじゃなきゃ誰だって良かったのに」

 

「私が皆を守るし。干物トリオのバフがあれば、大抵の攻撃は防げると思う」

 

 あ、赤松がなんかカッコイイ。僕なんかよりよっぽど勇気があるな。

 ああ、でも、そうか。バフを上手く使えば、戦力は圧倒的に底上げできる。

 防御は赤松に任せて、島に近づくもの全てを僕が最大火力で焼き払えば、わりとなんとかなるかも?

 

「干物トリオは酷いなあ。せめてシーフード歌劇団って呼んで」

 

「梅さーん。歌劇団は古いよー」

 

「なんで? どうしてよ? 歌劇団は乙女のロマンなのよ」

 

「とにかく、我々はこの島を出て生きてはいけないんだ。一文無しで手に職もない。一致団結して本土決戦に勝利しようじゃないか!」

 

 本土決戦って、秋山さん何歳だよ?

 

「ああ、それじゃあこれ皆に渡しておきます。贅沢しなきゃ数年は暮らせる筈です」

 

 金貨の小袋を皆に配る。

 

「何これ? おはじき?」

 

「金貨だと思う。意外にできが悪いね。押しつぶした豆みたい」

 

「いや、君、こんなものは受け取れないよ」

 

 秋山さんって律儀なとこあるよね。

 

「どうせ海に捨てようと思ってたお金ですから。金貨は下手に見せると命を狙われるんで、本当に万一の時のお守りだと思ってください」

 

 まあ、銀貨だって銅貨だって、殺してでも奪おうとする奴はいるんだよ。お金って怖いよ。

 

「金貨を海に捨てるって!! そりゃ君、頭おかしい!」

 

「お金は大事なのよ! 捨てちゃダメよ。お金は大事なんだから」

 

 あれ? 大人達が凄くパニクってる。

 

「捨てるんなら全部私にちょうだい?」

 

「なんで捨てるんですか? 有り得ないじゃないですか?」

 

 あれ? 僕がおかしいんだろうか?

 

「お金なんて使わなければただの数字」

 

「金貨をいくら積んでも、このレベルのプリンは食べられないもんね」

 

「オサム様はおとぎ話の英雄みたいです」

 

「金貨を捨てちゃう俺様カッケー」

 

 良かった。理解者もいたよ。セーラちゃんはいい子だ。竹井には馬鹿にされてる気もするけど。

 

「あのですね。香辛料を右から左に流すだけで、ゲーム感覚で大金が転がり込んでくるんですよ。使い切れない分は捨てるしかないじゃないですか」

 

 いや、ゲームだって普通はここまで簡単にお金は増えないよ? それにゲームだとお金がカンストするとそれ以上増えないから、わざわざ捨てなくていいし。

 いきなり所持金MAXの裏技とかもあるけどさあ。ぶっちゃけお金の有難味が全然なくなるよね。

 

「大航海時代にアジアとヨーロッパを日帰りできるようなものか。そりゃあ君チートだよ! チート過ぎる!!」

 

「いえ、飛行時間は十分くらいなんですけど」

 

 交渉とかあるから、結局、一時間くらいすぐかかっちゃうんだけどね。

 

「こんなチャンスは滅多にないよ! 君はどんどん稼ぐべきだ! 倉に金貨の山を積み上げるべきなんだ」

 

「でもほら、漁の時間とかなくなっちゃうし」

 

「そんなことは定年後にやればいい!」

 

「牛乳とか卵の買い出しもありますし」

 

「プリンは大事よ! そこは譲れないとこだからね」

 

「コロと遊んでやらないと、あいつ拗ねるし」

 

「コロちゃんはあたしに任せなさい!」

 

 駄目だ。秋山さんは完全に金に目が眩んでいる。

 よし、商売の辛さを愚痴ってやろう。

 

「生産農家さんの中には、樽の中身を誤魔化す人がいるんですよ。それを買った商人がクレームつけてくるんですけど、中には嘘をついて返金させる悪い人もいるんですよね」

 

 面倒なんでクレームが来たら言われるままに返金しちゃったけどね。お金はどうでもいいけど、ああいうのって心が痛むんだよ。

 

「それは、品質管理しない君が悪い」

 

「だって、いちいち樽を開けてられませんよ。それだけで何日かかるか」

 

「大丈夫だ。私に任せなさい」

 

 秋山さんはスパイス倉庫に積んである樽の中からいくつかを選ぶ。

 開けてみると、わら屑のようなものでかさまししてあった。

 

「作物鑑定の魔法だよ。植物関係なら大抵のものを鑑定できるようだ」

 

 おお。これは便利だ。

 

「買い手市場なんだから。インチキする相手とは二度と取引しなければいい」

 

「まあ、そうなんですけどね。交渉事は心が渇くというか、なんか疲れるんで」

 

「ならそっちも私が手伝おう」

 

 あー、そうしてくれると助かるよ。

 

「あと、商人の中には贋金を混ぜて来る奴もいます。別にいいんだけど」

 

「良くはないよ! 君、舐められてるよ! 売り手市場なんだから舐めた真似する奴には売らなきゃいい」

 

「あー、あたし多分なんとかできるよ。嘘を見抜く魔法があるから」

 

 吉田ってなにげに便利な魔法が多いよね。

 

 

 秋山さんが凄く乗り気なので、助っ人つきで貿易を再開することにした。

 赤松を抱っこして飛べば、結界で一気に大人数を運べる。秋山さん達は結界の中にゴザやクッションを敷いてくつろいでいる。傍目には空飛ぶ絨毯にしか見えない。

 人探しの魔法をブロックする護符が足りない問題も、赤松の結界で解決できるようになった。

 

 結界もいろいろ便利過ぎるよねえ。フィルター機能とか寄生虫を除去できるから、生の刺身が食べられるようになったし。

 誰もそうなんだけど、ある程度レベルが上がっちゃうと、いろんな能力が解放されて急速にチート化するよね。戦闘職の連中が今どうなってるか考えるとちょっと恐ろしい。勇者君とか絶対ヤバいよね? だってとにかく最強らしいし。

 

 

 結論から言えば、人手が多いと商売は凄く楽だった。

 秋山さんは口だけで交渉はからっきしだったけど、梅木さんが超凄かった。

 あと、赤松の結界があれば運べる量が桁違いだ。今まで船数隻分だったのが、大船団並みになった。

 

 で、どんぶり勘定だった僕と違って梅木さんがきっちり価格管理した結果。

 もうね、恐ろしい程の金貨が溜まっていくよ。

 

「確かに、こんなに簡単に稼げちゃうと有難味はないよねえ」

 

 野晒しで並べられている金貨の樽を見て、赤松が呟く。

 

「投資するにしても、株式市場なんてものは無い……無いんだよね?」

 

 秋山さんも憑き物が落ちたようだ。やっと理解してくれたか。お金のむなしさを。

 

「こんな大金、父なら大喜びで領地改革に使うでしょうね。使いきれないですけど」

 

 ああ、セーラパパに何樽かあげちゃおうか。いろいろあったけど、セーラちゃんのパパだしね。

 

「それだ! 大名貸しだよ。王侯貴族に貸し付けるんだよ。別に返済されなくても問題ない。政治献金だと思えばいい」

 

「回収を考えなくていいなら、そんなに難しくは無いですよね。ゲーム感覚で影響力工作とか、結構楽しそう」

 

 大人二人がまた難しいこと言ってるよ。なんとなくニュアンスはわかるけど、要するに越後屋だろ? お主も悪よのう、みたいな。

 

 

 

 

 海に金貨をばら撒いても何も起こらないけれど、権力者にばら撒くと効果は抜群だった。

 貴族とかって意外に金に困っていて、はした金でも結構便宜を図ってくれるみたい。まあ、借金は返さないんだけどね。

 

 で、権力をどう利用するかだ。不良グループの邪魔をするために、梅木さんと吉田がなんかいろいろ画策している。ヒャッハー達に対抗するための軍資金を貸すとかね。神の国とやらの偉い人達にも随分お金を融通したよ。おかげで僕らの空飛ぶ絨毯はフリーパスになった。

 

 神の国の本拠地って、摩天楼そびえる近代都市みたいで驚いた。デザインはサグラダファミリアみたいだけど、それがまたいい。ガウディ大先生は天才だ。

 

 塔の間を常に六枚羽根のロボが巡回していて、悪の基地みたいでカッコイイ。偉い爺さんに八枚羽根のロボも見せてもらった。凄く強い切り札らしい。赤松は結界で圧殺できると思うって言ってた。赤松が頼もしい。僕だってあんなの焼いちゃうけどね。

 

 偉い人に会いに行くのにゴザはないだろうということで、凄く高価な絨毯を買った。なんでも一人の女性が一生かかって織り上げたものだそうだ。それで金貨千枚なんだからお買い得だと思う。

 

 上手く位置調整すれば、僕や赤松も絨毯に座った状態で空を飛べるんだ。もうね、気分はアラビアンナイト。梅木さんなんかアニメの歌を熱唱するし。歌姫のバフで驚くほどパワーアップするし。

 

 あと、絨毯を盗もうとする輩があまりに多いので、もれなく腕をこんがり焼くことにした。命までとらないのは甘いらしいけど、どうなんだろうね? 大金を積めば回復魔法で治療してもらえるしね。


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― 新着の感想 ―
[良い点] どんどん話が変わって進むから楽しいですね。 [一言] セーラちゃんは別格として、他のメンツもいい意味で個性がでてきた!
[一言] ヒシヒシと嫌な予感が
[良い点] みんなでやれば大儲け。儲けた金貨はちゃんと使ってて、それが一番ホッとしたw 献金賢いですね。返さないでいいから貴族からは恨まれにくいし、社会的プレゼンスの強化が安全と自由を担保。センコー共…
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