プラモこうしよう
新しいオモチャが増えた。新入りのライルによれば竜骸と呼ばれているゴーレムの一種らしい。まあ、ほぼロボだよね。魔法で動くロボだ。
一機はほぼ無傷で手に入ったので、だいたいどんな感じかは理解した。
要するにコロ達の劣化版だね。オーブに力がないので、そのままだと再生できない。魔力を注ぎながらデザインを常にイメージしてやる必要がある。
失敗した個所を魔法のパーツで無理やり補完しているのがよろしくない。
この辺はロボ作り経験の差だね。小学生の頃からロボットプラモを作り続けて来た僕に言わせれば、この世界の錬金術師達はまだまだだね。
ぼくのかんがえたさいきょうのロボ? 武器とか一杯持たせたら強そうだ。プラモ初心者は、最初は大抵そういうのを考えるんだよ。
でも、中級者になって来ると、可動を重視するか見た目を優先するかでざっくり方向性の違いが出て来る。
僕くらいの上級者になると、買ってきたプラモを箱のまま積み上げるだけで作らない。脳内で作ったつもりになって、大きくなっていく積みプラの山を見てニヨニヨする。
さらに神クラスになると、そもそもプラモを買わない。買ったつもりになってイメージの世界で楽しむ。まさにプラモ仙人だ。
とにかくプラモ道のキモは、最初にしっかりテーマを決めることだ。
楽しく作るのがテーマなら、ランナーから手でむしり取って、本能の赴くままに勢いで組み立てちゃうのもまた良し。忘れていた何かを思い出すことができる気がするね。
竜の墓場でコロに餌をやる片手間に、真剣に二つのオーブに向かい合った。
今回僕の考えたコンセプトは、オーブの特性を活かすこと。竜骸のオーブはコロ達のと違って、小さなオーブをいっぱいくっつけて作られたものだ。同じアプローチでは上手くいかないと思う。
フランケンシュタインのように後付けで埋め込まれているパーツは、おそらく不具合が出るたびに追加されている。
コロは勝手に餌を喰って進化していくけれど、船頭が多いとてんでバラバラに進化して、放っておくとキメラみたいになるんだろうね。別にカッコイイじゃん、キメラ。
後から勝手気ままに進化できるように、余裕を持ったデザインにしておく。スカスカの内部フレームに、極薄の独立したモノコック外装を仮止めしていく。一見、超重量級だけど、実は超軽い構造だ。
見掛け倒しもいいとこだけど、どうせ戦いはおならで決着をつけるからいいんだよ。
ほら、自由になったオーブが喜んで暴走している。あとは動かしながら方向性を与えてやればいい。失敗したと思ったら、思い切って剪定してしまうのもありかもね。
満腹になったコロとプロレスごっこをして遊んでみる。やはり中身空っぽなので弱い。
調子に乗ったコロが嬉々としてぶちかましをかけてくるのでコロコロ転がされてしまう。でも軽いので転倒してもダメージが少ないな。常時エアバッグに包まれているようなものだ。
生まれ変わった竜骸は一機は島で女子達のオモチャに、元ライルの機体は彼女に返してやった。
ライルにはアイナ村で竜の騎士見習いをしてもらう。なんでも領主との古い盟約で、各村に一機までは竜の騎士を置いておけるらしい。
領主が盟約を破ったら、力でねじ伏せても反乱扱いにはならないそうだ。
ライルの身の上については、アイナ婆さんにだけ話してある。ライル機はアフロダヨンと命名。竹井が命名したタマゴドンよりネーミングセンスはいいと思う。
「ライルちゃんはミーさんに捕まって運が良かったよ。可哀そうに、もう一人の騎士さんは領主の館に連れて行かれて手籠めにされてるそうだよ。凄い別嬪さんだったからねえ」
アイナ婆さんの言う別嬪さんは当てにならないけど、確かにリシアさんは美人だった。
「ああ、先輩なら大丈夫だと思います。なんというか、傾国の美女なので。札付きの」
大きな声では言えないが、凄い悪女だそうだ。コクピットから放り捨てたので、性別とか確認してなかったけど、そんな話を聞くと気になるよ。顔くらい確認しておけば良かった。
「あんた達の悪の組織って、女の騎士が多いんだね。うちらの村じゃイステアが騎士になるのも皆反対したのに」
それでわざわざ男装してたのか。お祭りのイベントだと思っていた。
「イフリートの騎士が女性だとわかったので、私達に命令がきたんだと思います」
「ああ、女騎士とは女騎士が戦うって奴だね。そんな古風な流儀、まだ残ってたんだねえ」
へえ、ふーん。文化が違うねー。
アイナ婆さんとライルが話しているのをぼーっと聞いている。別にお喋りに参加するのが面倒だとかそういうんじゃないよ。
「ミーさんはこれからどうするつもりなんだい? これからも女騎士がどんどん攻めて来るんだって。全部捕まえて嫁にでもするかい?」
「面白い冗談だね。悪の組織だって馬鹿じゃないさ。同じ失敗を何度も繰り返すもんか」
「わかってないねえ。それなりに大きい組織ってのは面子があるから、成功するまで同じ失敗を続けなくちゃならないんだよ」
そんなもんかね。まあ、襲撃して来るんならオーブだけ頂いてお帰り願いたい。
「捕虜をどうやって送り返すかだね。エロ領主に差し出すのはさすがに気の毒かも」
村人を狙って殺すような悪人ならともかくね。
「改心はさせないのですか? 先生の言葉を聞けば、組織の方針に疑いを抱いている者達は目を覚ましてくれると思います」
いやいや、ライルがチョロインなだけだと思うぞ。そんな簡単に捕虜が寝返ったら戦争なんかできないから。
「ミーさんは男前だからねえ。甘い言葉の一つもかけてやれば、若い娘っ子なんぞイチコロじゃよ」
「あのねえ、僕はまだ子供ですよ。からかわないで下さいよ」
「それがいいんじゃないですか!」
なんだ。やっぱり僕をからかって遊んでたんだな。緊張感のない人達だ。
「とにかく、もしまた襲撃があったら防御に徹して時間稼ぎしてください。世界の果てからだって駆けつけますから」
10分あれば飛んでこれる。コロはイフリート達とテレパシーで連絡できるようだから、早期発見に努めてもらえば戦端が開かれる前に間に合うかもしれない。




