ハラペコキャラは正義
這うように広場に突入した元カカシのバケモノ。取り込まれそうになってる僕が可哀そうな状況だ。
『エサ! ウマ!』
嬉しそうな思念が流れ込んでくる。口は……一応あるけど、ほぼ骨組みの癖にどうやって食べるんだと思っていたら、適当に融合するのね。
どんどん骨の隙間が埋まって行き、血管や肉が発生していく。頭の上でピクピクしてるの心臓か?
竜の化石を貪り喰うのはいいけど、ついでに僕の魔力までゴッソリ持っていかれる。
「まてまて、お預け! ステイ!」
『ドウシテ? マリョククレルノ ゴシュジンノ シゴト』
お、レベルが上がった。こいつに魔力を与えても経験値が入るんだ。
MPが満タンになったし、ちょっとくらいいいか。
「ちゃんとお預けを覚えたからご褒美だ」
魔力を注いでやるとバケモノが食事を再開する。こいつ、名前がないのは不便だな。
「お前の名前はコロだよ」
『コロ? コロッサスのコロ』
違うよ、犬っころのコロだよ。
広場に積んであった竜の化石をあらかた喰い終わって、一応コロは満足してくれた。
勝手に食べさせて怒られないだろうか? どうしよう? まあ、竜の化石なんて人間の大陸にはいくらでも転がっている。竜の鱗ならまだ利用価値はあるが、骨なんて硬すぎて加工が大変過ぎるからな。そのまま棍棒にするくらいしか使い道がないんだよ。
馬鹿みたいに硬い竜の化石を簡単に融合させてしまうとは、一体どうなってるんだ? これがオーブの力か?
ただのボロッちい座椅子だったシートが、アニメに出て来るコクピットみたいになってるし。手足を見る限りコロ本体も今や立派なロボだ。お台場に飾ってもいいくらいの完成度だ。
なんか全周囲モニターみたいになっていて、見たいと思ったものをズームしてくれる。ゲームみたいだな、コントローラはないけど。
赤い輝点が空に浮かんでいるのは餌? じゃないな。エネミー表示? 本当にゲームみたいだ。
ズームしてみると、ロボっぽいのがフラフラ飛んでる。羽根は六枚かなあ? 羽根が多い方が偉いとか言ってたけど、作り物なんだから好きなだけ増やせるだろうに。
飛んでる奴を見ても、別に羽ばたいている訳じゃない。飾りだね。
これも祭りかと思っていたら、飛んでる奴が発砲し始める。弾はファイアーボールなんだね、その辺はファンタジーだ。
狙いは温泉宿に集まってる山車みたいだ。着弾すると爆発して本当に被害が出ている。お芝居ってわけでもなさそうだな。
山車の中からハリボテがなんとか立ち上がるが、碌に動けないのでいたぶるように倒されてしまう。
うん、人が死んでるな。これは遊びじゃない。
『アイツ コロス』
コロが怒っている。のそのそと向かっていく。
一応四肢が出来上がって歩けるようになったのね。
悪いロボが振り向いてファイアーボールを撃ってきたので、おならバリアーで防ぐ。
あれ? 意外にたいしたことないぞ。連射してくるので徐々にバリアーを弱くしてみる。普通に防げるね。ビビッて損したよ。
こいつ、弱いくせに村人を殺したな。とりあえずボコってやろう。
まずはおなら火炎放射だ。盾を構えて防いでくれるので、テストに丁度いい。
おなら火炎放射はメタンガスを燃やしているだけだ。ファンタジー系のロボだと、魔法攻撃でしかダメージを与えられないとか良くあるよね。
効いていない? でもずっと盾で防いでるからずっと火炎放射を続けてみる。
地球の戦車とかだったら、多分これだけ炙れば中の人とか蒸し焼きだと思う。これで平気なんだから、実は相当に強い?
あ、盾を構えていた左手ごと融け落ちた。それでも中の人はまだ生きてるみたいだ。
『卑怯者! 騎士ならば正々堂々と剣で勝負しろ!』
なんか言ってるし。剣を抜いてヨタヨタ切りかかってくるし。
『ハハハ! 剣も持たぬ二枚羽根風情が!』
いや、コロは多分凄く弱いよ? でもお前はおならに負けるんだ。
空中におならトーチを出現させる。青白い炎のコーンがシュッと伸びてカッコイイ。前からアニメのビーム剣みたいだと思ってたんだ。
高熱だからね、鉄だって簡単に溶けるよ。その前に噴き出す熱風を向けられたら生き物は死んじゃうけどね。
『馬鹿なっ! それは光の聖剣!!』
面白い人だなあ。なんか殺したくないと思うけど、捕虜にしてもどうせ、殺された村人の家族が敵討ちで殺すよね。
トーチで相手の剣を焼いてやると、赤熱してボトッと融け落ちた。
鉄製だとまあそうなるよね。ミスリルとかの不思議金属じゃないのか。
『オイシソウ タベテイイ?』
「中の人は食べちゃダメだよ」
焼け焦げた敵ロボの残骸が、コロには美味そうに見えるらしい。
こいつ、本当にガツガツ食べるね。そしてグングン減る僕の魔力。あ、またレベルアップした。
転がり出した中の人は、案の定、村の人達に棒で殴られまくっている。
うーん、状況的に考えて、多分僕は正しいことしたよね? 怒られることはないと思う。正義の巨大ヒーローだったら当然の行動だよ。
でも、ちょっとテンパってしまって。何が何だかちょっと良く分からなくなった。
だから逃げた。おならロケットを何本も収束させて、コロごと空を飛んで逃げた。
だって、光の巨人だっていつもやってるし。面倒な事情聴取とかエスケープするには、疾風のごとく去って行くに限るんだよ。




