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僕はおならで無双する  作者: 温泉卵


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旨味クラブ

「ぎゃあ! 何よその派手な魚! 熱帯魚みたいじゃない」

 

「シイラは超美味いんだからね。吉田はアジで練習してろ。アジも超美味いけど」

 

 島での生活初日、夜明けとともに吉田は海岸に引っ張られていった。魚臭い粗末な掘立小屋で、いきなりの干物づくり。先輩風をふかしまくっている竹井がうざい。


「呼び捨てしないでよ。クラスメイトでしょ」

 

「クラブ活動じゃ一日でも先輩が偉い。常識でしょ」

 

「何よその昔の体育会系のノリは! だいたいクラブじゃないし」

 

「クラブよ。ウマミクラブ?」

 

「何よそれ。私そんなの入った覚えないし」

 

「クラブ員はデザートにアイスクリームがつくのに」

 

「入るわ! 入らせて竹井センパイ!」

 

 お喋りをしながらも手際よく魚を処理していく竹井達を横目に、アジと格闘する吉田。

 

「なんか私のこと見てるし。こいつまだ生きてるんじゃない?」

 

「さっきまで生きてたから新鮮なのよ。三井寺君が内臓を抜いてくれているから、まずはウロコを落としてね」

 

「バスガイドさんはいきなり皮を剥いてますよね?」

 

「良くみてるわね。でもこれは初心者にはちょっと難しいから、最初はウロコとりから、ね」

 

 吉田は魚の調理など初めてだ。ちょびちょびとウロコを剥がしている横で、竹井がこれ見よがしにウロコごと皮を剥いていく。

 

「さすがセンパイ、上手いものね。靴下を脱ぐみたいに簡単に」

 

「こら竹ちゃん。干物にするアジは皮まで剥いちゃ駄目でしょ」

 

「お刺身にするからいいの」

 

 刺身と聞いて吉田は生唾を呑み込む。

 

「お刺身なんか食べられるんですか?」

 

「アニサキスがいるかもしれないから、数日凍らせてからね。生きたまま内臓を抜いてるから、多分大丈夫なんだけど、ここにはお医者さんもいないから」

 

「あ痛っ」

 

「ほらもう、言ってるそばから。刃物を持ってる時は気を抜いちゃダメよ。痛いの痛いのとんでいけー」

 

 歌姫の梅木が歌い出すと、吉田の指の傷がゆっくり塞がっていく。

 

「わ、私も回復魔法は使えますから」

 

「それは頼もしいわね。でも私の歌はMPとかそういうの使わないから。タダよタダ」

 

 結局、吉田はアジを一匹処理しただけで朝食の時間になった。

 

「炊き立てご飯だー。美味しい美味しい! 炙っただけの干物が神!!」

 

 泣きながら米の飯をかきこむ吉田。

 

「やっとお米が食べられるようになったんだからね」

 

「ここまで本当に大変だった。次の収穫からは好きなだけ銀シャリが食べられるようになるだろう。台風とか来なかったらだけどね」

 

 秋山がしみじみと言う。

 

「私、糠漬けの作り方とか知ってます! 農業のお手伝いをさせてください。干物作りはむいてないもの」

 

「なんだとゴラア!」

 

 キレる竹井。

 

「まあまあ、一通り仕事を体験してもらおうじゃないか。それに私も糠漬けは食べたいよ」

 

「さすが大人の人は話がわかりますね!」

 

 

 午後から吉田は畑仕事を手伝った。照り付ける太陽の下、ひたすら雑草を抜いていく地道な作業だ。

 

「暑い! 死んじゃう!! 何も一番暑い時間にこんな作業しなくていいじゃない」

 

「いつもは早朝と夕方に作業して、この時間はお昼寝タイムなのよ。今日は特別に吉田さんに体験させてあげているの。働かざる者食うべからずよ」

 

 羽山は何故か吉田に厳しい。竹井とは違うプレッシャーがある。

 

「こんなに神経質に草むしりしなくていいんじゃない? ほら、あっちの畑なんか草ボーボーよ」

 

「あっちはセーラちゃんの畑だからね。地母神? の加護があるから、雑草も害虫も好きにしていいの。収穫はこっちの半分もないけどね」

 

「いや、絶対そっちの方がいいじゃない? 働かないで畑を倍に増やそうよ?」

 

「セーラちゃんも祈ったりで忙しいのよきっと。子供が遊んでるようにしか見えないけど」

 

「あ、私もそういう能力あります! シャーマンだから! 森の恵み? 使ったことないけど」

 

 

 この島にも小さな森がある。三井寺と秋山が呼ばれ、森の利用について相談し始めた。

 

「一応、肉食獣もいるんだよ。イタチみたいのと、子犬くらいのオオカミみたいのがいてね。危険かも?」

 

 三井寺は基本的には森に干渉しない方針だった。グラさんがこの島に来た頃から変わらない森なら、ずっとそのままにしておきたかった。

 

「私シャーマンだから多分大丈夫かも」

 

「森の入り口に椎茸のホダ木を並べてあるんだよ。成功したかどうかはまだわからない」

 

 バーベキュー用の椎茸から胞子を採集して埋め込んでみたが、秋山は種駒しか使ったことがなかったので完全に未知の領域だった。成功したらラッキーだろうと、あまり期待はしていない。

 

「キノコと言えば森の恵みなんだよ。シャーマンは森と共存共栄するの。任せてよね」

 

 三井寺が森の入り口に小屋を建ててやると、吉田は一日中そこでゴロゴロ寝るようになった。

 ごくたまにホダ木を見に行ったりするが、森の奥には入らない。しばらくすると夜も森の小屋に泊まるようになったが、食事だけは忘れずきちんと食べにくる。

 

「私って有能な怠け者なのよね」

 

 そう言い放つ彼女を、三井寺は好きなだけゴロゴロさせておくことにした。

 結局、旨味クラブの試食担当に収まったらしい。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 吉田も上手く収まった。でも太るぞ。 島組は農業と食事でひとつのコミュニティとして落ち着いてきた感じ。 [一言] 干し椎茸はグアニル酸の宝庫。旨味クラブの名に恥じない仕事ではある?
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