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僕はおならで無双する  作者: 温泉卵


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プリン物語

 

 プリンなんて簡単に作れると思っていた。

 母さんが作ってるのを見たことがあるけど、なんかプリンの素みたいなのを牛乳に混ぜて冷やすだけだった。冷蔵庫に入れる前に、鍋を火にかけていた気もするけど、どうだっけ?

 

「甘いわミー君。それはプリン風ゼリーであって本物のプリンじゃないわ」

 

 結界師の赤松はスイーツ系女子だったらしい。食べるだけじゃなく作る方の知識もあるようで、今回の作戦には欠かせない人材だ。

 

「ちょっと待て。誰がミー君だ」

 

「三井寺君だからミー君」

 

「猫みたいでかっわいー」

 

「ミー君! ミー君!」

 

 馬鹿な竹井が喜んでミー君連呼している。うるさいぞ、お前だけはミー君言うな!

 いや、今はプリンに集中しよう。


「プリン好きの吉田を唸らせるには、本物のプリンじゃないと駄目ってことか」

 

「いや、あの子はババロアも水ようかんも大好きよ。冷たくてプルプルしてて、美味しかったら何でもいい。ただ、異世界ではゼラチンも寒天も手に入らない。本物のプリンが多分一番簡単」

 

 なるほど。

 膠ならあるけれど、精製していないから食用には向かないだろう。あれって溶かすと凄い匂いがするし。

 寒天はテングサから作るのは知っているけれど、テングサがどんな海藻なのか知らない。詰め込み教育の弊害だよ。

 

「じゃあ、本物のプリンを作ろう。材料を教えてよ」

 

「卵と牛乳とお砂糖。最低それだけあればなんとかなるかな。なんだったら牛乳もいらない」

 

「亀の卵は駄目だよね? 砂糖は水飴で代用できない?」

 

「ごめん、やってみないと分からないわ」

 

 魔族の国なら鶏卵も手に入る。カレーに比べればありふれた材料で、なんとでもなると思えたんだけれど……

 

「美味しいんだけど、何かが違うわ」

 

「何か一味足りないのよね」

 

 バスガイドさん含む女子一同には不評だったようだ。これでは吉田を落とせそうにない。

 せっかくお高い蒸し器まで買って来たのになあ。

 

 もったいないので赤松が残した材料で茶碗蒸しを作ってみた。卵液を裏ごしして、砂糖の代わりに出汁で味を調え、具材はゆり根、カニ肉、ウニだ。三つ葉っぽい香辛料の葉を彩りに乗っけて蒸す。

 

 こうしてみると茶碗蒸しとプリンって似てるよな。甘いかしょっぱいかの違いだけ?

 

「美味しいわ」

 

「スが入ってるけど美味しい」

 

「やだあ、優しい味だー」

 

「これだわ! あたし、卵液を裏ごししてなかった」

 

 僕は卵のカラザがヌルヌルして苦手なんだ。栄養があると言われてもあれは捨ててしまう。

 

 赤松に手伝わされて卵液を裏ごしする。

 蒸し器大活躍だな。プリンの試食と茶碗蒸しで満腹感があるんだけど、女子達はまだ食べる気か? 冷やしておけば半日くらい持つんじゃないかな。

 

「ん-、だいぶマシになった。舌触りが全然違うわ」

 

「でもやっぱり一味足りない」

 

「私は凄く美味しいと思います」

 

 ふむ、セーラちゃんは満足したのか。

 どれどれ、僕も味見しよう。

 

 良く冷えたプリンは、この世界では間違いなく贅沢なスイーツだ。冷たくてプルプル、滑らかな舌触り、お高い砂糖の甘さ、そして牛乳と鶏卵のコク。

 

「そうか! 匂いだよ。このプリンは牛乳臭いんだ」

 

 牛乳は魔族の農家からしぼりたてを買って来たものだ。成分調整なんてしてないから、なんかドロドロしてて草の匂いみたいなのがする。それが本物の牛乳なんだろうけど、慣れないと好き嫌いはありそうだよね。

 

「あっそうか! バニラエッセンス忘れてたわ! 買って来てよミー君」

 

 僕はバニラアイスは好きだよ。でも、バニラって何だ?

 

「バニラはバニラよ。小さい茶色い瓶に入ってるやつ」

 

「異世界じゃ売ってないでしょ。バニラビーンズは蘭の種だって聞いたことあるけど」

 

 おお、バスガイドさんさすが博識。蘭の種なら探せば売っているだろう。

 

 

 僕は世界中を飛び回り、様々な蘭の種を買い集めた。蘭以外の種も買って、交易で小遣い稼ぎもできた。

 残念ながらプリンにあう甘い香りの種はなかったけれど、いらなくなった種は全て運転手さんが喜んで植えていた。人を楽しませることができたんだからまあいいか。

 

「あの、お菓子に合う香りなら、香料ギルドで売ってると思うんですけど」

 

 セーラちゃんの提案に目からウロコだ。

 早速世界中を飛び回り、香料貿易で一儲けした。まあ、初心者なんで騙されたりボッタくられるのはいつものことだけど、遠距離貿易というのはそれを補って余りあるほど儲かるんだ。

 

 赤松は大喜びでいろんな香料を試していたけれど、結局プリンに合う香りはなかった。

 

「バニラは奇跡の香りだったのね」

 

 赤松はさすがにプリン作りに飽きたみたいなので、僕が一人で全部作ってみる。

 あれだけ毎日試食して飽きないんだから、女子達は本当にスイーツが好きなんだな。

 

 旅の途中でプリンの型にぴったりな富士山型の銀のカップを見つけたので買い占めたのだよ。貿易でお金がたまる一方なので大人買いですよ。

 

 蒸したプリンを冷やし、食べる直前にてっぺんに飾るカラメルシロップを作る。ぶっちゃけ、ただ砂糖水を鍋で焦がすだけだから簡単だよ。

 

「あ! あーっ!!」

 

 突然赤松が叫び出し、おかしくなった。ストレスが溜まってたのかな?

 

「普通にカラメルシロップで甘い香りが出るじゃん! ありきたり過ぎて作ってなかったけど、あたしって馬鹿みたい」

 

 まあ、なんだ。青い鳥を探してたら、実はお家にいましたとか? よくある話だよね。

 

 やっぱりプリンにはカラメルでしょ。バニラがあれば完璧だったけど、吉田が釣れればいいんだよ。

 女子一同の満足した表情を見れば、作戦の成功は約束されたようなものだ。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] イグノーベル賞で、牛のふんからバニラ香料が取れるというのがあったので おならの成分変えて作るんじゃないかと警戒しながら読みましたが、やらないでくれたのでよかったです。
[良い点] 異世界でのプリン作り。 材料が違うだけに創意工夫が楽しいですね。 女子グループとも少し仲良くなったみたい。 [気になる点] おならの存在感が薄くなってるのが、少し気になります。 [一言] …
[良い点] 試行錯誤のプリン作り。カラメルは簡単おいしいお友達。 ミー君は共同作業で姦し三人組とちょっとだけ仲良くなれた? [一言] > 馬鹿な吉田が喜んでミー君連呼している おそらく吉田ではなく竹井…
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