廃墟は今は草だらけ
香辛料を買い求める旅の途中、奇妙な噂を聞いた。
賢王の国がどこぞの宗教国家の庇護のもとに入ったという。イケイケドンドンだった交易も縮小して、元の弱小国家に逆戻りだそうだ。というか、弱小国家だったんだ。
保護国って、要するに属国だろう。つまり、真のボスが登場ってことだろうか? でも、真のボスはグラさんが倒したしなあ。
気になるので久しぶりに様子を見に行く。危険かもしれないけど、好奇心は猫をも殺すって言うしね。仕方ない。
城を上空から見ただけだと良く分からない。一旦スルーして召喚魔法陣のある森まで飛ぶ。
魔法陣は草ぼうぼうだった。バスにもツル植物がからみついて、ワイルドな感じになっている。近くで見ると車体に錆が浮いてきている。こういうのって一度錆び始めると一気にボロボロになるんだよな。僕の自転車も高校に入って乗らなくなったら一年で錆びの塊と化した。ホームセンターで一万円もしなかった安物だけど、毎日乗っている間は何年もわりと平気だったんだ。
オカルトめいているけど、人に忘れられたら道具は死ぬのかもしれない。単に油とかが切れただけかも? やっぱ動かさないと駄目なのかもね。
魔法陣も役目を終えて停止していたから、植物に浸食されるがままになっている。ろくでもない術式なんだから、消えてしまっても惜しくもなんともないね。
グラさんがいなくなり、もう一人のリッチも消滅したから、この世界から多くの知識が失われたんじゃないかな。三人目のリッチ? そんな人いるのかなあ?
ああそうか、何人かいた兵士達の姿が消えているんだ。人っ子一人いない。
今まではあの人達が草抜きとかしてたのかもね。賢王軍の兵士って、荷物運びとか草抜きとか雑用ばかりやらされてるよなあ。戦っているところは見たことがない。
運転手さんの畑があった場所も見に行ってみる。空を飛べばすぐだけれど、森の中を数十キロも歩くのは大変だろう。
考えてみれば、賢王軍の兵士って結構大変な職業だよね。安い給料でこき使われて、いざという時は命懸けで戦わなくちゃいけない。ある意味、港湾労働の方がまだ待遇良くないか? 下っ端兵士の大半は結婚もできないんだぞ。まあ、十人兄弟とか当たり前みたいで少子化問題は起きないんだけどさ。可哀そうだよね、兵士。
草ぼうぼうはこっちも同じだった。やっぱり人っ子一人いない。
野生化したジャガイモやサツマイモが生えてなきゃ、ここが畑だったとはわからないだろう。運転手さん達がここを見たらなんて言うかなあ。
この辺りって雨も多いし、森の腐葉土だって好きなだけ利用できる。島より余程農業に向いているんだ。もったいないよなあ。
賢王軍の痕跡を求めて、周囲の森を探索する。さらに数十キロ離れた地点に、怪しい山小屋を発見。
異臭がする。花火の匂いだ。
小屋の中は花火師の工房のようで、黒色火薬のような粉末が入った壺もある。
ひどく散らかっていて、まるで整理整頓ができていない。腕のいい職人は仕事場をみればわかると言うし、きっと腕の悪い花火師が働いているんだろうな。
周囲に他の施設はなく、小道が森の中に十メートルほど伸びていてそこで消えている。
うーん? 森の中で椎茸栽培でもしてるのかな? 原木とか見当たらないけど。
僕は椎茸はそこまで好きじゃない。ヌルヌルして苦手だった。椎茸昆布は好きだけど。
椎茸の原木栽培はだいたいわかるけど、わざわざやらないよ。何年もかかるし、そもそもこの世界に椎茸あるのかな?
マッシュルームやエノキは好きだけれど、栽培方法は知らない。困ったもんだ。マッシュルームは多分馬糞とかを使うんだった。馬糞かあ……
まあ、干しキノコは普通に売られているし、買えばいいんだよ。トリュフっぽいのが凄く安い。トリュフは地球では凄くお高いので、お得感あるよね。
気が付くと森の中で迷子になっていた。同じ場所をぐるぐる回っている。話ではよく聞くけど、こういうのって本当にあるんだね。
道に迷っても飛び上がれば問題ない。上空から見れば現在地は一目瞭然。どうしても分からなければ衛星軌道まで上がればいい。
おならで空を飛べれば、迷子になる心配はない。割と何でも力技で解決できるよね、おならって。




