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僕はおならで無双する  作者: 温泉卵


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その頃の不良達

「ヒャッハー! 男は皆殺しだー! 女も平等に皆殺しだー!」

 

 日暮れ前、三人の男達が小さな村に襲い掛かる。

 

 戦士の金田、剣士の山本、拳闘士の伊集院の三人組だ。元はクラスの不良グループで、そこそこのジョブを引いたものの勇者グループとそりが合わず離脱した。

 今は冒険者稼業のつもりであるが、この世界のモンスターは貨幣を落とさない上、地味に強い。なのでもっぱらモンスターではなく僻地の村を襲っていた。

 

「やっぱり女は見逃そうぜ金田」

 

 抵抗する男達をあらかた切り捨て勝利が確定した後、山本が金田を止める。ちょっと気に入った娘がいたのだ。

 

「さんをつけろよタコスケが!」

 

「金田さんかいワレ」

 

「あはは、寒いギャグ言ってんじゃねえ。殺すぞ」

 

 グループナンバーツーの山本は、最近金田より強くなりつつある。戦士と剣士の差だ。下剋上を恐れた金田は山本達が戦っている間に無抵抗な女子供や老人を殺しまくってレベル差を維持しているのだが、最近レベルが上がりにくくなってきている。そのせいか山本は金田に反抗的になりつつあった。

 

 カルマが溜まればペナルティが発生し、成長限界が大幅に引き下げられる。それ故にこの世界では同族、特に弱者の殺傷は禁忌とされているのだが、三人はそのことを知らなかった。

 

「日本人も殺せば経験値になるのかなあ」

 

 淡々と村人達を撲殺していた伊集院が、金田達を見て突然そんなことを言う。

 

「そ、そりゃあ人として普通に駄目だろ。俺は親父に人殺しだけはするなって言われてんだよ。だけど異世界人は宇宙人だからよお、弱いのに経験値たっぷりだし問題ないじゃん? わざわざクソ強いオークなんて狩るの馬鹿じゃね?」

 

 伊集院は天然系で何を考えているのか分からない所がある。経験値目当てに自分が殺されるかもしれないと考えた金田は、言い訳にもならない言い訳をする。

 

「金田……クンって殺すぞが口癖じゃないか」

 

「本当に殺すわけないっしょ。人殺しは絶対駄目だって。こいつらは人間じゃないし、そう、復讐、俺達を拉致った世界への復讐だぜ。むしろ正義じゃん」

 

「完全犯罪」

 

 伊集院がボソッと言う。

 

「そう、完全犯罪。そのための皆殺し? どうせ夜になればゴブリンどもが片付けてくれるから。俺達が力をつけるまでは、お尋ね者になる訳にはいかねえって」

 

「一理ある。やっぱり金田クンは頭いいなあ」

 

「経験値ゲット」

 

 金田が話している間にも躊躇なく女達の頭を次々粉砕していく伊集院。

 

「あいつ、やべえよな」

 

「ああ、ヤバイ。俺もう女はいいわ、なんか萎えたし」

 

「ゴブリンが来る前に金と食料探そうぜ」

 

 村人達の夕食の残りであろう薄いスープを鍋から直接回し飲みしていると、かなり近くでオオカミの遠吠えが聞こえた。

 

「やべ、もう来やがった」

 

「村の門を閉めたか?」

 

「閉まんないようにぶち壊した」

 

「いや、やべえだろ? どうすんだよ! 逃げるしかねえって」

 

 たいまつに火をつけてほうほうのていで夜道を逃げ出す三人。

 

 オオカミにまたがったゴブリンの姿がチラリと見えるが、すぐに闇の中に姿を消す。

 

「絶対ヤバイって。飛び道具でもないとあんなの相手に勝てないぞ」

 

「ビビんなって、村ン中には餌がたっぷりあんだよ。わざわざ俺達を襲うメリットがないし」

 

「気の弾を練って……飛ばす」

 

 伊集院の拳から青白いエフェクトが飛んでいき、若木をへし折る。

 

「わお、スゲー。ハズレジョブじゃないじゃん。結構当たりな奴?」

 

 金田は頭の中で素早く計算する。戦士は最初こそ強かったが未来がない。下剋上されるくらいなら、今のうちに上手く取り入って利用するのが利口だ。

 

「俺達は仲間だからよ。仲間ってのは決して裏切らねえ、見捨てねえ。血より濃い絆なんだぜ」

 

「おい、追って来たぞ。凄い数だ。あいつら村に向かうんじゃなかったのか?」

 

「知るかこのタコ! 何でもかんでも俺のせいか? あ? ちったあ自分の頭で考えろよ」

 

 仲間の絆作戦は一瞬で崩壊してしまった。

 

「ゴブリンなんてスライム相当じゃなかったのかよ! ふざけんな!!」

 

「策がある。森に火をつける」

 

 言うより早く、伊集院が立ち枯れている木にたいまつの火を移す。乾燥した枯れ葉が一気に炎上し、木全体が燃え始めた。

 

「なるほど、獣は火を怖がる」

 

「なあ、火で焼き殺したら経験値ってどうなるんだろうな?」

 

「おい、何考えてんだ?」

 

「実験だよ実験。山ごと全部燃やしちまおう。汚ねえゴブリンどもは浄化しねえとな」

 

 炎に目をギラギラさせた金田を見て、山本は尻込みする。自分は強くなった、金田より強くなった。そう思っていたが間違いだった。こいつは本当にヤバい奴だ。力で勝ったところで、こいつには逆らえない。一緒にいれば、これからもずっと顎で使われ続けるだろう。

 

「ついていけない」

 

 そう言い残し、闇の中に走り去る山本。

 

「裏切ったね。殺す?」

 

「……いや、人間殺しちゃ駄目っしょ」

 

 嬉々として追いかけようとする伊集院を金田は慌てて止める。人殺しで経験値が入った場合、次は自分が殺されるだろう。

 

『殺られる前に殺っちまうか? 正当防衛だよな』

 

 背後から伊集院に斬りかかろうとするが、思いとどまる。

 勝てる気がしなかった。仕掛けるなら絶対勝てるタイミングを狙うべきだ。

 

 傍若無人な言動とは裏腹に、金田は筋金入りの小心者だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] グラさんとの思い出を胸に成長していく主人公勢。 そこから一転してこの話、酷い落差だ。こんな『一方その頃…』は嫌だw [一言] 保身にだけ長けた小物は予想外の負の大活躍をしたりするんですよね…
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