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僕はおならで無双する  作者: 温泉卵


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祭りの後

 衛星軌道を回りながら思い切り泣いてみた。ここなら誰にも見られることはない。

 グラさんもここからの眺めをとても気に入っていたみたいだしね。

 

 ずっと泣いていたかったけれど、泣くのも案外体力を消耗する。

 セーラちゃんを放っておけないし、夕食前には帰らないと。

 

「お帰りなさい」

 

 駆け寄って来るセーラちゃん。

 

「ただいま……」

 

 うっ、涙腺がヤバイ。けど耐える。

 僕の表情から事情を察したのか、セーラちゃんは何も聞かなかった。地味に助かる。

 

 セーラちゃんお手製の豆のシチューを一緒に食べる。優しい系の味だ。

 

 もう寝てしまいたいけれど、泣きはらして顔がパンパンなのでお風呂に入る。長湯して危うく溺れるところだった。

 

 毛布にくるまって横になる。精神的に疲労困憊しているのに、喪失感で眠れない。生まれて初めて睡眠薬が欲しくなった。おなら魔法で自分を眠らせることができるだろうか?

 

 セーラちゃんが僕の隣に潜り込んで来ると、背中をぽんぽん叩きながら子守唄を歌ってくれる。

 彼女の前では泣かないと決めたのに、とめどなく涙が出ていく。人肌の温かさが心を癒してくれる。

 

 人は一人では生きられないか……グラさんは長い長い間、独りぼっちだったんだ。多分あいつもそうなんだ。だから神になりたかったのかな? グラさんはあいつのことを憎んじゃいなかった。共感? 憐れみ? 何か通じる部分があったんだろうね。

 

 僕は死にたくないな。大切な人達と別れたくない。でも、不死者になりたいとは思わない。

 まだ良く分からないけど、死から逃げるのではなく、いつか来るその時と真剣に向かい合わなければいけないんだろうね。グラさんは最後まで冷静に消滅を受け入れていた。凄いと思う。

 

 

 

 朝の光。目覚めると体も心も元気になっていた。まだ悲しいけど、泣くほどでもないね。

 考えてみれば死ぬのも寝るのも似ている。永遠の眠りって言うくらいだし。寝るのは怖くない、むしろ大好きだし。

 

 セーラちゃんはまた今日も元気に走り回っている。あの子の方が僕よりずっと大人だな。

 

 さあ今日も朝食の準備から始めようか。生きているから腹も減る。面倒臭いけれど、食事は人生を彩る楽しみに成り得る。

 

 別にそんなにご馳走じゃなくてもいいんだ。毎日食べ続けても普通に美味しいものがいい。ご飯と味噌汁? それはこの世界では特別なご馳走だな。

 

 蠱毒の術式はもう無くなった。もう帰れない。これからはこの世界で普通に生きていくんだ。

 ありふれた日常がどんなに輝かしいものか教えてくれた人がいるから、普通で十分幸せに暮らせる。

 

 まずは近場の海でサバかアジでも捕まえて来るか。急がないと朝食がバッタだけになってしまうよ。



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