天才グラさん
「なあ、儂って天才かもしれん」
「はあ」
気持ちよい朝の目覚め。いきなり目の前にドヤ顔の髑髏がドアップで現れたら、テンション下がるよね。
「できたんじゃよ! 理論上はできる筈じゃったが、まさか本当にできるとはのう。一刻も早く作動させてみたいのじゃ!」
何ができたんだろうね?
あ、セーラちゃんだ。とっくに起きて、今は蝶々を追いかけ回している。猫みたいな子だなあ。
まさか、蝶を食べるつもりなんだろうか? イナゴやバッタ、ギリギリでコオロギは食べられるけど、蝶や蛾は嫌だなあ。鱗粉とか毒っぽくない?
「聞いとるのか? 蠱毒の術式を乗っ取れるんじゃぞ!」
ああ、あの話かあ。ぶっちゃけ、わりともうどうでもいい気もしてたんだよね。
日本の家に帰りたいとは思うけれど、こっちの家もそのうち完成するだろうし。
クラス召喚されなかったとしても、いつか大人になれば親離れするんだ。誰かと結婚して新しい家庭を作って、子を産み育て死んでいくんだ。
親の死に目に会えないのは寂しいけど、そんな人はいくらでもいるんだし。
「あの、グラさん。クラス召喚って、本当になかったことにしなくちゃ駄目ですかね?」
「オサムがそれを望んだんじゃろうが?」
「なんかもう、今更戻らなくても別にいいかなあって」
「あの娘か?」
「それもあります。ここまで関わっちゃったら、もうほっとけないでしょ。グラさんとも別れたくないし」
「ぐぬぬ。じゃが、蠱毒の術式は放置せん方がいいじゃろう。まあ、壊すだけならずっと簡単なんじゃ! ふむ、いろいろできる、いろいろできるのう! 創作意欲が湧いて来たぞ!!」
新たなお題で何か作るんだろう。ブツブツ言いながら地下の研究室に戻って行く。徹夜で作業してた筈なのに、リッチって眠らないんだろうか?
世界中のリッチが不眠不休で、今も妙な研究を続けているんだろうね。そう考えると空恐ろしいところはあるよ。
不死者にとっての善悪は、生者のそれとは違う。食欲について理解はできても、感じることはないみたいだし。
グラさんは理性的なリッチだから、生者に害をなすどころか世界の安定に気をつかってるくらいだけど、中には有害な不死者もいるみたいだ。
非業の死をとげて、恨みを残したまま現世をさまよい続けているような連中。そういうのは自然に消滅していくのが世界の理らしいんだけれど、何かの偶然で力を得たりすると危険らしい。
人為的にコントロールして戦力にしたりすることもできるらしいから、蠱毒の術式なんかと組み合わさると大変なことになるそうだ。
賢王が何を企んでいるのか。グラさんの予想では、人工の神、邪神の復活、強力な武器、凶悪なモンスターの創造、世界の破壊あるいは再生、愛する者の蘇生、人生やり直し、云々。
百パーセント悪事とも限らないっぽい。万一賢王がいい奴だったら、術式改変を仕掛ける際にわかるから、改変を中止すればいいしね。
僕のイメージでは、蠱毒の術式ってのはどんな願いも叶えられるなんか超凄いエネルギー? それを理解して使いこなせるであろうグラさんは天才だ。
クラス召喚をなかったことにしないのなら、他にどんな願いをするのかな? とんでもなくつまらない願いでエネルギーを消滅させる? それはそれでまあいいか。つまらなければつまらない程、賢王に与える精神的ダメージは大きいもんね。
あ、でも、賢王側にもグラさんに匹敵する天才がいるってことだよ! 油断はできないね。きっと命懸けの勝負になる。
もう何度かそういうの経験したから、ラスボス感はないけどね。異世界じゃ毎日がラスボス戦だよ。




