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僕はおならで無双する  作者: 温泉卵


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海賊の決闘

 海賊船長はスラリと剣を抜くと、僕の足元に投げてよこす。

 普段から剣を二本腰に差してるってことは、こいつ、二刀流か。なんかカッコイイけど、揺れる船の上で両手が塞がるってどうなんだ?

 

「よし、決闘だ!」

 

「は?」

 

 普通は人質と宝石を交換しようって流れじゃないか?

 

「海賊の流儀だ! 欲しいものは力で全て手に入れろ!」

 

「野蛮だなあ……」

 

 周囲を取り囲む海賊達は皆興奮してお祭り騒ぎだ。セーラちゃんまでなんで目を輝かしている?

 野蛮で残酷だけど、なんか魔族の人達って生きるのを楽しんでるよなあ。

 

「決闘に勝ったらその子は貰うよ」

 

「勝者は王だ。全て思うがままよ」

 

 あ、なんか上手いことはぐらかしたね。これは後からゴールポストが動かされるパターンだ。

 スポーツの試合じゃないんだから、余力を残して勝たないと駄目だね。

 

 足元の剣を拾う。カットラスと呼ばれる湾刀にそっくりだ。カリブ海なんかで海賊が良く使ってる奴だよ。船の上で振り回すならこういう形状が便利なんだろう。収斂進化って奴だね。

 

 想像していたより重い。自慢じゃないけど僕のステータスは相当なものなのに。ステータスオープンしてみると赤字でマイナス補正がついている。全てのステータスが四分の一って、ある意味凄い。

 海賊船長、やることがセコイな。ハナから正々堂々と戦う気はないようだね。いいよ、そっちがその気ならこっちもハンデはつけてあげないよ。全力で戦おう。

 

 戦いはステータスが全てじゃない。鍛えられた技なんかはステータスを超えて来る。

 海賊船長が居合抜きで首を刎ねるの、目で捉えられなかったからなあ。

 あれは怖いので首をガードするように剣を構える。

 

 ガツッと火花が飛び散る。見えない斬撃を受け止めた? 刃こぼれ一つないのはさすが呪いの剣だよ。

 

 海賊船長は納刀し、馬鹿笑いしながら拍手。そして再び居合抜きで首を狙って来る。

 

 二度三度、同じことが続くと周囲の海賊達もざわめき出す。

 

「オラオラ! 守ってるだけじゃ勝てねえぞ」

 

 そう言って納刀して僕を挑発してくるんだけど、なんかおかしくないか? あれだけ見事な居合切りができるのに、それ以外の体捌きは凡庸なんだよ。セバスチャンと比べても数段見劣りがする。わざと隙を見せてるんだろうか?

 

 あれれ、おかしいぞ。僕が首を必死でガードしてるのはバレてるのに、なんで首しか狙って来ないんだろう? 小手とか狙われたら対処できないんですけどね。一撃で首を刎ねるのにこだわりがある人なんだろうか?

 

 あー、わかっちゃったかも。船長の剣も呪いの剣なんだ。抜くと自動的に首を刎ねる呪いとか、そういう奴じゃないかな。

 

 剣を斜め前に突き出し、首をガードしたまま船長の方に駆け寄る。角度的に切っ先が相手の顔面に刺さるんじゃないかな。

 下半身は無防備になるけど、推測が正しければ安全な筈。一応おならバリアは展開しておくけど、呪いの剣相手にどれだけ効果があるかは未知数だ。

 

 死の上を裸足で歩いているような不安。マリアナ海溝の上で泳いだらこんな感じかもしれない。

 でもまあ、昔の人はチートも何もなしで命を懸けて戦ってたんだし、まあいいか。どうせ一度は必ず死ぬんだし。女の子を助けるために命を落とすなら、そう悪くないじゃないか。死んじゃったら救えないんだけどね。

 

「ちょ! 待て!」

 

 僕のただの前進に海賊船長は凄く慌てた。これは当たりだったかな。元気百倍で突進する。

 

 ガシッと苦し紛れに放たれた居合切りを受け止める。おならバリアーは切り裂かれたけれど、呪いの剣はやはり無傷だった。いや、これだけ頑丈なら呪いの剣でもないか? ペナルティは大きいけど使い方次第じゃ役に立つ。

 

 あたふたと刀を鞘に納めようとしている船長。そうはいかないよ。小手! 面! 胴! 峰打ちでござる。

 

 あっさり意識を手放す海賊船長。そりゃあそうか。鉄の塊だもの。峰打ちでも大怪我だよ。

 

「さあ、その子を渡してもらおうか」

 

「勝負はまだついてねえ! 船長一人が相手だなんて言ってねえからなあ」

 

 海賊達がゲラゲラと笑う。

 

「そんなことだと思ったよ」

 

 海賊船長が手放した剣を拾い上げる。こっちもカットラスぽいけど、若干細身で刃も鋭い。

 海賊達は剣が怖いのかザザッと下がる。大丈夫だよ、鞘に納めなければただの鋭くて丈夫な剣じゃないかな?

 

 二本の剣で二刀流だ。我流で振り回すだけだけど、海賊達も我流剣術みたいだ。セバスチャンのような洗練された動きではないね。

 気がつくとセバスチャンの足さばきを真似していた。角灯に照らされた甲板を、両手の剣を振り回しながら舞うように舞うように。

 死の恐怖とか、憎しみとか、なんかもうどうでもいいよ。自分という存在の境界線が曖昧になって、世界に広がって行くような……

 

「ひいっ! お助けっ!!」

 

「お嬢様はお返ししますっ!」

 

 生き残った海賊達がセーラちゃんの後ろで命乞いしている。

 え、もう終わり? なんかちょっと残念?

 

 そこいら中に大勢の海賊が倒れている。ああ、なんかいちいち手加減とか気にしてなかった。美しい動きを楽しみたかったので。

 

 癒しのおならで周囲を包む。助かるかどうかはわからないけれど、多少はマシだろう。

 

 セーラちゃんの拘束を切り捨てる。船長の剣は切れ味が良くて便利だ。

 

「素敵! バーサーカーみたいだった」

 

 ひしっと抱き着くセーラちゃん。え? バーサーカー? そりゃないよ。

 

 でもまあ、呪いの剣は気に入りました。剣舞は気持ちよかった! せっかくだし二本とも貰っていこう。

 鞘は……いらないか。確定で首を刎ねる機能とか面白くないし。

 

 トンと甲板を蹴って飛び上がる。首元のルビーから火の粉のような輝きがこぼれる。ホント、綺麗だな。

 

「飛行宝石……」

 

 気がついたらしい海賊船長が僕達を眩しそうに見上げていた。

 

「さらばじゃ」

 

 そのままグングン高度を上げて、弾道飛行でグラさん島に向かう。

 後は野となれ山となれ。婚約相手が死んじゃったんだから婚約破棄成立ってことでいいよね?



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― 新着の感想 ―
[良い点] 1番すごいのは主人公のメンタル。 それに比べたらオナラチートも霞んじゃうね!
[良い点] つるぎのまい、二刀流!バーサーカーは褒め言葉! 居合効果の鞘はつまらないので要らないってのは心意気として好き。 [一言] やっぱり主人公ヤベェ奴ですよ、これは。人間の限界を当たり前のように…
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