お宝島
「海賊のお宝ですか?」
「わりと最近のまっとうなお宝じゃよ。巨人の時代までは遡らない。せいぜい百年くらい?」
グラさんは頭はいいのに歴史が苦手だ。どうも細かい年代を覚えることに興味がないみたいだ。特にリッチになって以降は自分の歳すら数えるのをやめたらしく……一体何歳なんだろうね?
「欲しいのは銀貨なんです。インベントリとかあれば銅貨でもいいんですけど」
「インベントリとは何ぞや?」
「魔法の鞄みたいな? いろんな物をしまえる空間で、重くならない? あと時間が止まっている」
「オサムはもう少し論理的に話す癖をつけるのじゃ。おそらく収納魔法のことを言っとるんじゃろうが」
インベントリ、あったね。
収納魔法の術式が刻印されたプレートをグラさんにもらう。それだけでいろいろ解決だよ。こんなに便利なアイテムの材料となる、竜の鱗の価値ははかり知れないと思う。
お宝島は小さい島で、お宝は座礁した海賊船が積んでいたものだ。既に船は朽ち果て、お宝は付近の海底に散らばって埋まっている。
水中作業用の鎧が欲しいけど、強引におならで呼吸しながら潜水作業をする。これでこの鎧も水陸両用型だ。
やることは潮干狩りとあまり変わらない。浅い海底で、砂や泥の中から硬貨を拾い集める。たまに装身具みたいなのも見つかる。
グラさんは宝石のはまった黄金のベルトとか、高そうなものをすぐに見つけてしまう。宝石には持ち主の情念のようなものが残り易いので、それを手掛かりに見つけるんだそうだ。
金貨と銀貨は同じくらい見つかる、むしろ銅貨の方がレアだな。なんかもう、港で荷運びの仕事をしていたのが馬鹿馬鹿しくなってくるよ。
まだまだ埋まってそうだけれど、当座の買い物には十分集まったのでキリのいいところで終了。
買い物のためにわざわざ遠くの町に向かう。空を飛べるから多少の距離は誤差の範囲だし、何かあっても旅の恥は掻き捨てってことで逃げちゃえばいいし。
グラさんは町の中では姿を消す。霊体化っていろいろ便利だよ。敵に回したら物凄く面倒くさいだろうなあ。
必要なのは金属製のパネルらしいんだけれど、どんなのがいいのか僕じゃ良く分からない。
「多分あの店じゃな」
三角形の銅製の看板が出ている店だ。どうせ看板出すんならイラストで説明するとか、せめて文字くらい書こうよ。
グラさんを信じてドアを開けると、本当にいろんなサイズの銅板を売っていた。
僕が黙って立っていると、グラさんが声を出してどんどん注文していく。腹話術の人形になった気分だ。
結構大量に買ったのでズッシリ重い。金貨一枚で支払い、山ほど釣銭を受け取る。
「こりゃすげえ、本物の皇帝金貨じゃないですか。お客さん海賊王ドラコの財宝でも見つけなすったか?」
へえ、海賊王もいるんだ。異世界凄いな。
「どんな海賊じゃ?」
「百年前に南の海を荒らしまわって、お宝を積み過ぎて沈んじまったっていう13人目の海賊王ですよ」
海賊王の最後はあんまりカッコよくなかった。
買った商品は店を出る瞬間にグラさんが収納してしまう。魔法で盗み放題だろうに、それをしないのは悪事は割に合わないってことだろうね。
海でお宝を拾うのは悪事にはならないのかな。地球だったら駄目だったような……
「つけられとるのう」
「袋小路に追い詰められましたね」
怪しい連中が……四人か? いや、どんどん増えて十人以上。皆ナイフや棍棒で武装している。
「あの店の男の差し金か。道理で海賊に詳しい筈じゃ」
うわあ、そういうことか。もう二度とあの店で買い物しないぞ。
ニヤニヤ笑いながら威嚇してくる男達。すぐにかかって来ないのは、全身鎧を着た僕を警戒してるんだろうな。
よし、僕もグラさんを見習って犯罪を未然に防ぐよ!
三角飛びで屋根に飛び上がると、男達はポカンと口をあけて見上げている。
そのまま反対側の道に飛び降りる。あれ? 誰も追って来ないぞ。ちょっと拍子抜けだよ。
作業がしたくてウズウズしているグラさんを一度島まで送り、僕はいろんな町を回って調味料などを買い込んだ。
お金の心配がないと買い物は楽しいね。やはり市井の店では銅貨が使い易い。
昔の貨幣は相当に価値があるようで、両替屋で最高で八倍の値が付いた。騙されたりもしたけれど、どうせ拾ったものだからね。授業料だと思うことにした。
苦労して稼いだお金じゃないと有難味も少ない。あぶく銭って奴かね? 勉強になりました。
宝島って、宝を見つけるまでが華だよね。いきなり拾っちゃったらやっぱ駄目だよ。
グラさんはクライマックスを平気ですっ飛ばしちゃうからなあ。いや、遊んでる場合じゃないのはわかるんだけど、なんだかなあ。




