表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕はおならで無双する  作者: 温泉卵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

217/250

プリン無双

「聖女様、クリスタルの配置完了しました」

 

「ご苦労様。急いで魔法陣の起動テストを行います」

 

 無人島での元クラスメイト達と会談が決まるやいなや、一足先に大船で乗りこんだ聖女鈴木は罠を張った。

 それが不可視の魔法陣だ。不可視のため相手に気づかれないのはいいが、自分達にも見えないため確認が大変なのだ。

 

「魔法陣で私の魅了を強化し、リーダー格の三井寺君を下僕にしちゃえば、全ては丸く収まることでしょう」

 

「三井寺って、あんなのただのモブ男ですよ。男が一人しかいないもんだからチヤホヤしてるだけでは?」

 

「どうなんでしょうね? 魅了してみれば謎は全て解けるでしょう」

 

 失敗した場合のリスクはあまり考えていない。なにしろ相手はスクールカースト下位のミソッカスばかりなのだ。彼らは総じて覇気が無い、熱量が足りない。基本的に事なかれ主義な連中なので、何かあっても謝ってしまえば解決だ。

 

「ああ、吉田さんがいたわね。彼女が来たら要注意です。なかなか強かなところがあるので」

 

 今回、代表者三名ずつで話し合おうと提案したが、船員の数については特に触れていない。大型船には選りすぐりの屈強な信者達が400人以上乗り組んでいる。数の暴力でカタがつきそうなら、躊躇はしない。

 用意しておく切り札は多い方がいい。吉田も同様に策を巡らしているのだろうが……

 

「先手必勝。私達がこの島に先に着いた時点で勝負はついているのよ」

 

 聖女鈴木は微笑む。相手が勇者須田並みのバケモノでもない限り、抗う術は無い筈だ。

 いや、勇者であっても魅了は有効だろう。そもそもが須田対策に開発した罠なのだから。

 

 

 約束の時刻が過ぎても、待ち人は現れなかった。

 

「まさか、罠だと気づかれたかしら?」

 

 こちらがスパイを送りこめたということは、逆もまた可能ということだ。

 

「やはり、敵に回すと厄介な子。こうなる前に好条件でスカウトするべきだった」

 

「吉田はただの陰キャですよ。聖女様の前では路傍の石ころ、刺身の上のタンポポです」

 

「あれはタンポポではないのだけれど……まあいいでしょう。もうしばらく待ってみましょう」

 

 ただの遅刻だとすれば、交渉を有利に進めるネタに使えるかもしれない。遅刻を気にしないような相手には効果は無いだろうが。

 

 

 聖女一行のイライラが限界に達しつつある頃、夕波をかき分けて一艘の小舟が近づいて来た。

 早速盗聴を開始すると、巌流島がどうこうとか、主役は遅れて登場するとか、遅刻を反省する気がまるで無さそうな会話が聞こえてくる。

 

「舐め腐ってやがりますわね」

 

「まあ、これで心置きなく罠を使えるというものです」

 

 砂利交じりの砂浜にざざっと乗り上げると、三人の人影が降り立つ。

 男が一人、女が二人。男はぽうっとした顔で、聖女の大船を見上げている。

 二人の女は油断なく聖女を睨みつけている。どうやら盗聴は見抜かれているようだ。

 

「少し、かなり遅かったのではないかしら?」

 

 普段は聖女自身が口を開くことは滅多にないのだが、見知った顔に思わず歩み寄る。

 

「小次郎、敗れたり!」

 

「誰が小次郎よ!」

 

「相変わらずキレのいいツッコミね。鈴木さんのそういうとこは嫌いじゃないわ」

 

「な!」

 

 聖女鈴木もその取り巻きも、予想外の吉田の言動に咄嗟に対応できず、会話の主導権を奪われてしまう。

 

「くっ! 吉田、なんて恐ろしい子」

 

「船旅で喉が渇いたわね。とりあえずおやつタイムにしましょう」

 

「なんて図々しいの!」

 

「ご心配なく、全部用意して来てるから。よかったらあなた達も食べます?」

 

「いや結構、我々はこの世界では高貴な身分で舌が肥えてしまっていてね……いや! 何その凄いスイーツ!!」

 

 取り出した立派なテーブルに、豪華なガラスの器が並べられていく。

 器の中心にはプリンが、その周囲には美しくカットされた果物が配置され、生クリームでデコレーションされている。

 さらに吉田はアイスティー、赤松はメロンソーダ、三井寺はアイスコーヒーをドリンクに選んだ。赤松のメロンソーダには丸いアイスクリームまで浮いている。

 

「あなた達! それは一体?」

 

「プリンアラモード知らないの? うーん、疲れた脳に甘味が嬉しい。アイスもいいけど、やっぱ主役はプリンよね」

 

 聖女一行の、特に女子の目の色が変わった。あれは、どう見ても美味しい奴だ。

 彼女達とて、貴重な砂糖をふんだんに使った菓子を毎日のように食べている。だが、見た目からして次元が違う。

 

「仕方ないですね。親睦を深めるためご相伴にあずかりましょう」

 

「素直じゃないなあ。まあいいけど」

 

 気が付けば鈴木は無我夢中でスプーンを口に運んでいた。忘れかけていた日本の記憶、甘味が口の中に広がる。

 

「何これ凄い! 完全に日本の味を再現している」

 

「いいえ、これは既に日本の味を超えているわ! こんなに美味しいプリンを私は食べた事が無い……」

 

 登り詰めたと思っていた。聖女として、この世界の頂点の一人になったと、そう確信していた。

 中世レベルの世界で苦しむ民衆を、現代知識で救ってやって得意になっていた。

 それでも、チートがあるとはいえ、決して楽な道のりでは無かったのだ。

 

 だが、目の前の吉田は、自分が食べたいプリンを作るためだけに、持てるリソースの全てを注ぎ込んできたのだろう。

 馬鹿だ。優先順位をいろいろ間違っている。

 

 本当にそうだろうか?

 

 スイーツを貪る聖女とその取り巻き達の目から、熱い涙がとめどなく流れ落ちる。

 彼女達自身、その涙の理由を理解できないのだった。

 

 

 

 






 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 巌流島からのプリンアラモード!完璧な場の支配! 吉田め、やりおる。 [気になる点] 一箇所「聖女須田」になってます [一言] やはり企んでいた聖書鈴木。しかし、彼女もうら若き乙女?極上の甘…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ