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初めてのレベルアップ

 通訳ならある程度待遇がいいんじゃないかって、なんとなくそう思ってたんだけど。

 結論から言うと船員と同じ扱いだった。

 そしてこの船では船員の立場は最底辺だ。船長の奴隷の方がいい暮らしをしているそうだ。

 

 狭い船室に汗臭い船員達と一緒にすし詰め状態。

 食事は一日二回、メニューは常にイモの海水煮だ。拳骨サイズの大きいイモが木の碗に一個だけ。ガリガリで美味しくない。丸イモっていうらしい。

 イモ類はデンプンが含まれていて、唾液と反応して甘くなる筈なんだけど、そうじゃない。

 なんだろうなこれ? 味のないゴボウって感じだ。ちゃんと栄養はあるんだろうか?

 

 丸イモにはすぐに飽きた。それでも食えるだけ幸せみたいだ。船員達はイモの大小で喧嘩するし、弱い奴は強い奴に椀ごと奪われてしまう。

 僕がイモをとられないのは、どういう立場か良く分からない存在だからだ。偉い人の不興を買えば簡単に殺されるので、厄介事は御免だそうだ。考え方が大人なんだな。

 なんだろうな、異世界に人権なんて存在しないのは理解できた。人類普遍の権利の筈なのにおかしいな。

 

 船員達は見た目はごっついオッサンだけども、実際の年齢は僕とそう変わらない。潮風と照り付ける太陽が、若者達を急速にオッサン化させてしまうのだろう。アンチエイジングの真逆だから……普通にエイジングでいいのかな? 僕はエイジングは嫌だなあ。

 

 丸イモは不味いけど、腹持ちはよくて飢えを誤魔化すことはできる。そして食べるとおならがよく出る。食物繊維が豊富なんだと思う。

 すかしっ屁をすると、何故か経験値が入る。調子に乗って放屁しまくってたら、すかしっ屁のランクが上がった。

 

 どうでもいいような魔法でも成長すればちょっと嬉しい。おまけに新しい魔法も覚えた。

 おなら変換? なんだそれはと思ったけれど、どうやら排泄物を全ておならに変えてしまう魔法のようだ。よし、これでどんどんすかしっ屁ができるね。別におならがしたい訳じゃない。経験値目的だ。

 

 普通は経験値を稼ぐにはモンスターを倒さなければいけない。屁をこくだけで経験値が入るとかチートだけれど、おならマスターなんだからおかしくはないのか?

 

 まあ、ぶっちゃけ、誰に遠慮することもなくおならをするのは気持ちいい。

 船員達も気にせずブーブー屁をこきまくっているし、今更恥も外聞もない。僕のはすかしっ屁だから、まだ配慮してる方だと思う。

 

 おなら変換の魔法は、MPをおならに変換することもできるみたいだ。1MPで10分間ほどおならが出続ける。

 ふむ、すかしっ屁の魔法やおなら変換の魔法を使ってもMPを消費しないのは何故だろう? 消費MPが小数点以下なのかもしれない。

 

 モンスターを一撃で仕留めるような魔法と、ただのすかしっ屁が同じ消費MPな訳ないもんな。

 そんな屁みたいな魔法でも、使い倒していれば熟練度のランクは上がる。そして経験値も溜まっていく。

 

 シュワワワーっと全身がエフェクトに包まれた時はびっくりした。初めてのレベルアップ。

 幸か不幸か船員達は皆寝ていて、誰も気づいた者はいないようだ。

 

 レベルアップするとどうなるのか? まず体調が良くなる。絶好調だ。寝違えて首が痛かったのも、転んでできたかすり傷も綺麗に治ってしまった。

 そして全身に力が溢れている。ステータスの伸びはなかなか凄いな。一番伸びなかった力ですら、以前の三倍以上になっている。ハズレの僕でさえこんなだから、勇者君はスーパーヒーロー間違いなしだろう。そりゃあ召喚するわけだ。

 

 HPよりMPが著しく上がったことから、どうやらおならマスターは魔法使い系のジョブのようだ。

 

 新たにおならチャージとおならエディットの魔法を覚えたぞ。

 おならチャージはその名のまんま、おならを蓄える魔法だ。特にお腹に違和感はないから、どこか異空間にガスを貯めておけるのかもしれない。

 おならエディットはおならの成分を細かく調整できるようだ。とりあえずメタンガスの比率を下げてローズの香りにしておく。おならの臭気成分とバラの芳香成分の構造はかなり似ているらしい。

 

 船員達は狭い船室で遠慮なくおならしまくるのでとにかく臭い。汗の匂い足の裏の匂いもとってもキツイ。

 そんなところにローズの香りをぶつけても負けてしまうどころか、混じり合ってさらにヤバイ匂いになってしまう。

 それならば、最終的に相殺しあって無臭になるよう調整すればいい。対消滅オナラーだ。

 

 なんと無臭化のおならはできた。しかもかなり簡単にできた。おならに関してはおならマスターはマジでチートだ。

 おならエディットの魔法は素晴らしい。ほんの短期間で、かなり匂いや香りについて理解が深まった気がする。

 

 せっかく不快な匂いを消したのに、船員達は気づきもしない。元々悪臭に慣れて鼻が馬鹿になってたんだな。

 本当は、嫌な臭いも大事なんだ。腐っている物を知らずに食べてしまったら病気になるもんね。消臭はほどほどにしておこう。

 

 とにかく、嫌な臭いのしない清潔な環境を保つこと。それが一番大事。

 理屈はわかっていても、海の上ではそう簡単ではない。

 

 思うに、小さな木の船に大勢乗り過ぎなんだよ。荷物も欲張って積み過ぎだ。

 船倉はぎゅうぎゅう詰めだから空気が流れずによどんでいる。船底からは海水が少しずつ漏れていて、濡れた積み荷が腐っている。そして甲板にも積み上げすぎてトップヘビーだから、一度傾くとなかなか持ち直さない。なんか全てがダメダメな感じだよ。

 

 せめて船員達が頑張って掃除をしていれば、多少はマシなんだろうけど、誰も仕事は増やしたくないもんね。僕だって嫌だし。

 

 船尾楼には小奇麗な部屋があって、僕を雇った商人や船長など、偉い人達はそっちで快適に暮らしている。格差社会だからね、船尾楼には下っ端の船員は入れないんだ。

 船内で疫病が広がっても、自分達は助かるとか思ってるんだろうか? うーん……普通に思ってそうだ。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] ここからドコに向かって行くのか、楽しみです。
[良い点] 連続更新ありがとうございます! おならの自由度高いなあw 主人公がおなら魔法を手持ちの武器として冷静に分析して伸ばしてるのがまたw
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