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C2輸送機は200億円以上

 やっぱり異世界は空気が違うなあ。主に湿度が違う。というか、日本の湿度が高過ぎるんだな。

 

 空島は日本に比べればずっと過ごし易い気候だ。不思議パワーのおかげかもしれない。

 でっかい島が空に浮いてるのは、改めて凄いと思うよ。現代の科学力では再現できないだろう。

 

 

 インベントリから飛行機を取り出して、造船所のそばの空き地に置く。車輪が出てないから、機体の底の方が少し潰れてしまった。案外脆いんだな。

 

 エンジンから石油臭い液体がポタポタ垂れてきたよ。飛んでるところを無理やりインベントリに突っ込んだから、急停止して壊れてしまったかも。

 勿体ないけど、飛行機なんかどうせ使わないだろうしなあ。操縦とか大変そうだし。

 

 積み荷はほとんどが食料だ。勇者の軍隊に補給に行く途中だったからだ。インスタントラーメンとか懐かしいけど、量が多過ぎて食べきれないよ。

 

 ああ、インベントリには飛行機だけじゃなく、船も何隻かあるんだ。船は飛行機よりずっと沢山積めるんだ。一体全体何食分? 何万食分あるんだろう?

 幸い年単位で日持ちするものばかりだ。知り合いに配っていけばなんとかなる? とりあえずインベントリに収納。

 

 

 とりあえず、まずは油漏れをなんとかしなきゃなあ、火事になったら大変だ。

 ガソリンかと思ったら灯油に近いのか。ジェット機が灯油で動くとか面白いよ。なんか凄いエネルギーを使っててもおかしくないのにな。

 

 灯油だったら、ここ空島でもそれなりに消費されている。魔法のある世界でも石油ランプは便利なので、かなり普及している。ランプって構造も簡単だし。最低限、皿と燈心さえあればいいし。

 

 飛行機から燃料を全て抜いてインベントリに収納。これまたとんでもない量だなあ。

 この世界にも油田はあるけれど、地球の油田は凄すぎるだろう。どれだけ大量の石油を産出してるんだよ。

 

 これで可燃物は無くなったと思う。ミサイルとか武器の類は無かった。銃すら無かったのはどうかと思うよ。小さなナイフはあったけれど、ロープを切ったりする用だと思う。

 まあ、地球の武器で異世界人は倒せないんだから、丸腰というのも案外正解なのか。

 

 コクピットに入ってみると、パイロット達の所持品が散らばっていた。彼らの衣服とかはインベントリの機能で取り出したんだけれど、ポケットの中の物とかは残ったみたいだ。財布とか返してあげたいけどなあ。家族の写真とか入っているけど、死亡フラグとか気にしない人なんだろうか。

 

 あれもこれもインベントリに収納。結局、インベントリの整理をしてるだけ?

 

 操縦席に座ってみる。やっぱりなんかカッコイイな。椅子だけ外してもらっちゃおうかな。

 計器やボタンがいっぱいあるのっていいね。最近はデジタル化で随分整理されちゃったのが残念だ。観賞用としては、アポロ時代の月ロケットとかがカッコイイと思う。ソ連の有人ロケットもメカメカしくっていいな。

 おならで空を飛ぶのに計器とか必要ないからなあ。ちょっと憧れるんだ。

 

 

 こうした計器一つとっても、随分お高いと思う。飛行機一機丸ごとだと何億円もするに違いない。元は日本国民の税金だからなあ、分捕って来ちゃって悪いことしたなあ。

 この先使い道も無さそうだし、返しに行こうかな? その辺の飛行場に置いといたら引き取ってくれるだろうか?

 

 ああ駄目だ。コロに見つかってしまった。いいオモチャを見つけて、まっしぐらに走って来る。

 造船所の近くはいらないガラクタが貰えるので、コロの遊び場になっているんだ。

 

 さっそく尾翼によじ登ろうとして、メリッとやっちまいやがった。はあ、壊れてしまったら仕方ない。遠慮なく分解して遊ぼう。

 

 翼や外殻は適当なサイズにカットすれば、屋根を葺くのに使えそうだ。胴体をおならカッターで輪切りにすれば、コテージとして利用できるかも。

 

 鉄製なら溶かしていろいろ再利用できたんだけど、アルミとかでも同じようにできるかなあ? 金属は金属だし、熱で溶かせば鋳造できるだろう。

 面白い形の部品がいろいろあるから、溶かすより削り出して何か作った方がいいかもしれない。傘立てとか帽子掛け? ああ、窓とか扉はそのまま流用できそうだよ。

 

 コロに千切れた尾翼だけやると、なんか一人遊びを始めた。ボールを貰った犬みたいだ。

 こいつも凄いのか馬鹿なのかよく分からない奴だ。多分AIみたいな存在なんだろうが、好奇心旺盛でいらんことを好んでする。優秀かどうかは別として、心はあるように見える。地球の科学技術ではまだ作れないんじゃないかな?

 

 

 僕はエンジンで遊んでみようか? 翼についているジェットエンジンの一つを慎重に切り取る。

 これって、ジェット燃料の代わりにおならを燃やして動かせないものだろうか?

 

 燃料パイプは多分これだな。メタンガスを送り込んで点火してみると、爆発してあっけなく壊れてしまった。

 危ない危ない、レベルが低かったら即死だった。

 

 コロが爆発を面白がって食いついて来た。

 

『コワシテモ イイヤツ?』

 

「どうせお前は全部壊すだろ? よし、分解するぞ。検査だ。原因究明だ」

 

 ラッキョウの皮を剥くように、パーツを引っぺがしていく。

 なんか凄く精緻で高級そうな機械だよ。組み立てるのは大変だったろうなあ、でも、バラすだけなら簡単だ。コロにもできる。

 

 どうやらガスを爆発させた場所が悪かったみたいだね。正しい位置で燃焼させないと壊れると見た。今度は少しずつガスを流してみようか。エンジンはまだもう一つあるし、失敗は成功の元とも言うし。

 

 二回目の試みも失敗したが、なんとなく原因がわかったよ。爆風が逆流してるんだろうな。

 ジェットエンジンは前の穴から空気を吸い込んでお尻から噴き出すんだ。羽根車みたいのが動いている状態でガスを燃焼させないと駄目なんだろう。

 

 圧縮空気を送り込んで羽根車を回してからメタンガスに点火すると、少しの間回り続けた。思った通りで、なんか感動。

 

 よし、なんとなくだけど、原理は理解した気がする。空を飛んでみるか? エンジンだけで飛ばすのもおかしな話だけれど、おならロケットの代替品として使うだけだ。そんなに難しくなさそうだ。

 

 ジェットエンジンを一旦インベントリに収納。おならジャンプで一度上空に飛び上がって空島から離れる。

 

 空の上でエンジンを取り出すと、当然自由落下を始める。

 エンジンにしがみつき、羽根車を十分回転させてから、おならを送り込んで点火。いいぞいいぞ、ちゃんと自分の推進力で飛び始める。パワーはイマイチだけど、魔法じゃなく科学の力って感じがして新鮮だ。

 

 メタンと酸素の量をどんどん増やしていくと、それなりにパワーアップもする。このまま世界一周してみようか?

 

 いい感じにエンジンのお尻から火柱が噴き出し、なかなかそれっぽくなってきたと思ったら、いきなり木っ端みじんに爆発してしまった。

 久しぶりに空でくるくると吹き飛ばされる。空で失敗するのは懐かしいな。

 

 五分ももたなかったぞ、なんでだよ?

 

 やっぱり燃料がおならじゃ駄目だったんだろうか。精密な機械ほどデリケートだって言うしなあ。

 

 まあ、いい勉強になったと思う。僕達の手に負えないことが良く分かった。

 残りの飛行機は壊れてしまう前に返しに行こう。

 

 空島に戻ってみると、コロはまだ壊し足りないような顔をしていた。仕方ないなあ、もう一機だけだぞ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 随分と高価なオモチャだこと 見切りの速さは流石といったところ [一言] ミー君値段知ってても同じこと…しそうだな…
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