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武器よこんにちは

 草原に横になって、空を見上げる。

 駄目だ。乾いているようで、意外に地面は湿っている。それに小さい虫も一杯いる。スズメバチ達はあまり小さい虫は狩らない。

 

 インベントリからベンチを取り出して、ごろっと寝転ぶ。今日は働きたくないでござる。

 こっちの世界に来て以来、結構頑張って来た。異世界に骨を埋める覚悟もしたつもりだった。

 でも、地球と行き来できるようになって、厄介なトラブルも起きて、いろいろやる気が無くなってしまった。遅れて来た五月病みたいな?

 

 人は何のために生きるんだろう? 日本だと会社に入って働いて……こっちとは違って命の危険はない生き方だと思ってたんだけどな。実は僕が思ってた程平和な世界でもなかったみたいだ。

 あっちだと魔法で身を守ることもできないから、死ぬ時は簡単に死ぬよね。

 

 剣と銃、殺されるならどっちがいいだろう? まあ、どっちも嫌だけど。

 剣で斬られると、見た目的には凄く痛そうだ。銃弾は体内をグジュグジュにしてしまう。回復魔法でも銃創は綺麗に治らないから困る。

 あと、剣で人を斬るには腕も覚悟も必要だけれど、銃だと誰でも簡単にトリガーを引くだけで撃ててしまう。

 人道的な武器とかおかしい気もするけれど、銃は効率よく人を殺せ過ぎる気はするな。まあ、結局、どんな殺され方でも死ぬのは嫌だけれど。

 

 自分が殺されないために敵を殺すと考えれば、銃はアリだな。この世界で戦う覚悟はしっかりできていた筈なのに。

 平和だったと思っていた地球が、この世界と変わらない修羅の国だったと気づいたのがショックだったんだ。これじゃあゲーム感覚で暴れてた連中を笑えないよ。

 

 

 上空を、三隻の飛行船が通過していく。

 モリさん達にはっちゃん型飛行船を貸してあげたら、昔の部下を集めて神の国相手に無双し始めたみたいだ。調子に乗って勇者に壊されないか心配だ。

 

 モリさん達も、セーラちゃんも、アイナ村の人達も、戦いに対する忌避感とかあまりないんだよなあ。人手をとられたり、略奪されたりするデメリットは承知しつつも、世の中に戦争はあるものとして受け入れてしまっている。

 

 僕達は小学生の頃から、戦うことは絶対悪だとすりこまれているから、リアルな戦争にはアレルギーがある。

 そうか、剣と魔法で戦うのはゲームで慣れていたから、わりと大丈夫なんだ。

 

 教師達の唱える絶対平和主義が嘘っぱちなのは、クラスの虐め一つ無くせないことからも明らかなんだけれど、僕は真面目な生徒だったからな。いつか世界は争いのない平和なパラダイスになるんだと、素直に受け入れてきたんだよ。

 

 羽山とかも真面目なタイプだから、今回のことではショックを受けただろうな。不良の竹井とかはどうなんだろう? でも、不良って教師は絶対殴らないって前提で暴れているから、戦う覚悟なんてないかもしれない。

 

 戦う覚悟か。結局、敵が襲って来た時にどう行動するか、それだけなんだけどな。

 唖然としている間に殺されるか、逃げるか、反撃するか。ほんの僅かな心構えが生死を分けることもある。

 

 常在戦場、死中に生あり。それが分かるようになればなかなか死なない。この世界でも新兵は簡単に死んじゃうけど、何度か死線を超えると生き残るコツを覚えるって言うね。

 

 よし、まあいいや。敵が目の前に現れたらその時は戦うしかないし。覚悟という程の覚悟もないけれど、勝手に体が動くし。闘争本能?

 

 ジャンプして、おなら噴射。そのまま空に飛びあがる。悩みがあっても、働きたくなくても、僕には僕の仕事がある。アイナ村で新鮮な牛乳と肉を仕入れて、配達して回らないと皆が困るんだ。

 

 竹井みたいにサボりの常習犯だと、皆も期待しないのでサボっても大してトラブルにはならない。あれ? 真面目に生きると馬鹿をみる? 勤勉でもそれが当たり前だと大して感謝もされないけれど、たまに竹井が頑張ると皆に褒められるもんな。

 

 救いがあるのは、おならで空を飛ぶのが楽しいということだ。おならをするのは気持ちいい。空を飛ぶのも爽快だ。ダブルで嬉しい。

 

 上空の寒さも、対策すれば苦にならない。海上の眺めの単調さも、考え事をしていればあっという間だ。

 

 背負うものが無ければ、もっと気楽で楽しいんだけどな。セーラちゃんだけで良かったのに、どうしてこうなった? まあ、おかげで食生活のレベルは向上したし、いいこともあれば悪いこともあるさ。

 

 

 アイナ村に着くと、何故かイステアが待ち構えていた。

 

「先生! ご覧ください! この私が怪しい魔物を討ち取りましたぞ!」

 

 得意げに見せてくれた物体は……ドローンの残骸? カーボンパイプの先端にモーターと破壊されたプロペラ。カメラはまだ生きていて、周囲をサーチしている。咄嗟にインベントリに収納する。

 

 地球製だよね? それも多分軍用の奴だ。

 

 獲物を横取りされたと思って不服そうなイステアに、どう説明するか?

 僕だって状況が良く分からないよ。

 

 地球の凄い科学で探査機を送り込んで来たんだろうか?

 チラッと見ただけだけれど、機関銃のようなものが付いていたかもしれない。

 

 原始的な火縄銃で無双できる世界に、機関銃とか持ち込んだら反則だろう。

 異世界、終わったかも。

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 中世野蛮ファンタジーをチートで生き抜く。そんなつもりでいたけれど地球も実は同じ野蛮ルールだった…戦う覚悟を決めたミー君。 その途端にやってくる地球製武装ドローン。早い、早いよ…みんな大好き…
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