ネーミングセンス
羽山の蜂達が作った奇妙な飛行船。僕は『心太丸』と命名したんだけれど。
「この子は、はっちゃんよ」
竹井が勝手に変な名前をつけてしまった。
「えー、せめてハッチにしようよ」
「はっちゃんが可愛い」
最近気づいたんだが、どうも竹井は可愛いにこだわりがあるみたいだ。竹井のくせになあ。あと、ネーミングセンスが酷い。ダサい。
すぐに意固地になるので、誰も竹井には逆らわない。別に船の名前なんてどうだっていいしなあ。なんなら飛行船2号でも全然問題ないし。
はっちゃんはびっくりするくらい高性能だった。なので蜂達には引き続き建造してもらうことにした。別に急いでないし、のんびり作ってくれればいいよ。最初、羽山は年に四隻とか言ってきたので、無理せず年に二隻でいいよって注意した。
蜂の数を増やせば、それだけ短期間で仕上がるみたいだけれど、あまり増え過ぎても餌とか大変だしな。アイナ村から牛や豚の捨てる部位を運んできているけど、蜂達が最も好むのは虫やカエルの肉、次点で鶏肉みたいだ。
空島の田んぼの害虫は、蜂達のいい獲物になる。狩られ過ぎて大型のバッタやイモムシなんかは見当たらない。それでも葉っぱの中に潜り込んだり、水中や地下に潜んでいたり、害虫達はあの手この手で稲を狙っている。
多少虫がいても、収穫量は大して変わらないので、羽山もセーラちゃんもそこまで気にしていないみたいだ。むしろ害虫が一匹もいないのは気持ち悪いと言う。
そういえば、イナゴはセーラちゃん的にはご馳走なんだった。バッタよりずっと美味しいらしい。
スズメみたいな小鳥も、稲穂を狙って来るんだけれど、たまにスズメ蜂達に狩られている。羽山がいなければ、人間も蜂に狩られていたかもしれない。怖い。
スズメ蜂を増やせば、軍隊相手にも戦えるんじゃないかな。ただ、魔法があるからね。巨大な蜂も、火の魔法に結構弱いんだ。
モリさんや部下の人達は、はっちゃんの有用性にすぐ気づいた。竜骸四機を運用できる空飛ぶ拠点だ。何隻か揃えれば、いろんな作戦ができるんだそうだ。
でも、はっちゃんは竹井がほぼ私物化してしまい、女子達の溜まり場になってしまった。
本来の居住スペースは狭くて、二段ベッドを持ち込んで四人一部屋にしたんだけれど、女子達はそっちは使わない。前部格納庫を改装してリビングみたいにしてしまった。で、後部格納庫は風呂場にされていた。竜骸を載せる場所が無くなってしまった。
豪華客船というか、お金持ちのクルーザーみたいな? まあ、みんな楽しそうだからいいけどさ。
「戦争になったら真面目にやるって。普段は楽しまないと勿体ないじゃない?」
そう言われれば、そうなのか? その発想は無かったな。竹井は馬鹿だけど、たまに頭いいから困る。
それに、馬鹿なことって皆が真似したがるんだよ。