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空中軍艦

 空島の開発が一段落したので、グラさんの手足となって働くスタッフを募集することにした。

 

 交渉事なんて苦手なので、最初から餌で釣る作戦だ。お茶が大好きな神官さんには心当たりがあるからね。

 幸い、クッコロトリオが捕虜にした元神の国の騎士達から情報を得ることができた。捕虜達の中からも、見どころのありそうな奴らはピックアップしたけれど、欲しいのは武官より文官なんだよね。まあいいけど。

 

 信者が増えれば、グラさんの力も増す。神の国の連中は狂信的な信者になる素質がある者が多い。ちょっとヤバイ人達だけれど、正しく導けば善人にもなれるんだ。

 

 

 モリなんとかさんは、白い服を着ているグループのトップで、事務関係に強いらしい。

 

 神の国の組織は服の色でいくつかの集団に別れている。子供っぽいよね。

 それで今は、黒グループが勇者須田と結託して聖都を牛耳っていて、白グループは解散してしまったらしい。上手くモリさんを引き抜けば、芋づる式に人材が確保できる。

 クッコロトリオが所属していた青グループも似たようなものらしいので、モリさんが駄目でも次がある。できればどっちも引き入れたい。

 

 

「伝説の天空の島が!! この目で見ることになろうとは!!」

 

 モリさんのお供の人のリアクションが楽しい。凄く楽しい。いいリアクション芸人になれるよ。この人の食レポとか見てみたい。あとでスキヤキを食べさせてあげよう。

 モリさん自身はポーカーフェイスを気取っているけど、さっきからワクワクしてるのが隠しきれていない。よいなよいな。男の子はいくつになっても少年なんだよ。

 

 空飛ぶ絨毯が光の道を通って島に降下していくと、二人の表情は恍惚としたものになった。

 このプロセスはアトラクションとしても優秀だよね。自分が映画の主人公になったような、これから大冒険が始まりそうな、なんかそういう気分になれる。

 

 

「あれは! 空飛ぶ船!!」

 

 葉巻型の黄土色をした飛行物体が、四基のローターをゆっくり回転させながら目の前を横切っていく。

 

「ああ、飛行駆逐艦ユキカゼです」

 

 タイミングよく試験飛行していたようだ。まだ空島上空しか飛ばしていないので、光の道を通れるかは未知数なんだ。

 

「なんと巨大な! 空を飛ぶ軍艦ですかな」

 

 確かに見た目は大きいけれど、飛行船だから大部分は気嚢だしね。ぶっちゃけただの風船だ。駆逐艦とは大きく出たけれど、竜骸を一機搭載するのがやっとなんだ。

 次は飛行巡洋艦、巡空艦かな? 一クラス上の船を作らないとね。船体は羽山、エンジンは野村の担当だ。二人ともノリノリだから、いずれは飛行戦艦だってできるかもしれない。

 

 おなら魔法では何故かヘリウムは出せなかったので、危険な水素で浮力を得ている。水素の気嚢を収めた外殻を窒素で満たし、安全性を確保しているつもりだけれど、実際には何が起きるかわからない。

 水素による浮力のバランスを、わざと少し足りない程度に抑えて、ローターの揚力で空を飛ぶ仕掛けだ。これが正解かどうかはわからないので、ユキカゼは無人機。羽山が虫を使って遠隔操縦している。

 地味な印象の羽山の能力だったけど、ここにきて思いっきり化けたね。ハチを使った特攻ミサイルとか、完成したら超ヤバいよ。

 

 

「この島は、失われた超文明の遺産!」

 

「失われてなんていませんよ。実際にこうして存在します」

 

「あなた方はもしや、伝説の天空人の末裔では?」

 

「その辺の物語は、そのうちまた、ね」

 

 やっぱり、モリさんもその手の伝説を知ってるんだね。

 実際にこんな島がある世界なんだから、そりゃあ伝説にもなるか。

 

 

 地上に降りる。

 

 周囲は見渡す限りの水田だ。風にそよぐ早苗が美しい。

 秋山さんが頑張ってくれたんだけれど、本当に凄いのは灌漑施設を作った古代人だ。ほんの少し修理するだけで広大な農地がゲットできた。

 これだけ広いと田植えとか無理なんで、大部分は僕が空から種もみをばら撒いた。カリフォルニア米は飛行機で種撒きが普通らしいし、多分大丈夫だろう。収穫のこととか考えてないけど。

 

「あれは!! あれは神殿ですかな?」

 

 いきなり見せて驚かしたいんだけれど、ここからでも見えるよねえ。あれだけ高く建てたら、そりゃあ目立つのは仕方ない。

 

「ご案内しますよ」

 

 実際に神殿を訪れれば、もっと驚くから。

 本物の神様に出会った時のリアクションが楽しみだ。

  

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつの間にやら飛行船まで。本格的な勢力に? さて、神殿のデザインや如何に。ホネホネ・ロックな神様を見ての反応も楽しみですね。 [一言] 天空の島に茶畑は無いのだろうか。単なる比喩?
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