グラさんの神殿
急遽グラさんの神殿を建てることになった。
グラさんはそういうの興味なかったみたいなんだけれど、主に竹井が建てたがった。
神様にその辺をぶらぶらされちゃたまらないそうだ。
『体のいい座敷牢じゃのう』
「実際、禍つ神の神殿なんかは封印ですからね」
セーラちゃんは何でも知ってるなあ。
「でも、神殿があるとメリットもあるんだよね?」
「信仰心が集まりやすくなります。邪神様なら生贄が定期的に捧げられます」
『神と人とは対等ではないからのう。足りない分は飴で補う魂胆か』
「まあ、神殿が完成したら入り浸りますから」
『うむ。面白設備を期待しておるぞ』
快適なダベリゾーンにする予定なので、そんなに面白くはならないと思うな。
「和風でもいいですよね? 畳の部屋で寝そべりながら、渋いお茶でお煎餅食べたいので」
『早速面白そうじゃのう。儂神様じゃから、食事もできるので』
「ああ。じゃ、プリン食べます?」
仮普請の社務所で、三人でプリンを食べる。いや、二人と一柱かな? この世界では神様の単位って、なんだ?
『冷たくて甘くてなめらかじゃのう。初めて食べる味のような、遠い昔にどこかで味わったような……』
「神様でも、忘れたりするんですか?」
『そうさのう。少なくとも儂は万能ではないな。まだまだ駆け出しじゃから』
修行したり信仰心を集めたりして、地道にレベルを上げていくみたいだ。クラスチェンジとか限界突破もあるみたいで、凄くゲームみたいだ。
勇者の須田とかは、悪の限りを尽くせば邪神ルートに入るだけの素質があるらしい。ゲーム感覚で大量虐殺とかやめて欲しい。
『儂としては、せっかく神の力を手に入れたんじゃから、お前さん達をそふとらんでぃんぐ? なるたけ円満解決に持って行きたいんじゃ。一応責任者でもあることじゃし』
「魔法や特殊能力を消せるのなら、地球に送り返すのがいいんですけどね。なんだかんだで甘い世界ですから、食いっぱぐれる心配はありませんし」
『それは相当に難しい。というか、とっかかりが思いつかん』
「それじゃあ、私がニホンに行くことは可能でしょうか?」
『可能じゃな。安全性の問題だけじゃが、研究の余地はある。面白いな、儂もニホン見物に行ってみるかのう』
異世界への転移はなんか簡単みたいだよ。難しいのは行先を間違えないことだそうだ。神様パワーで僕達と地球の縁を利用してなんとかできるらしい。
あ、閃いた!
「地球に帰ったら能力は使わないって約束させるのはどうでしょうか?」
『人間の約束など当てになるものか。いや、契約で縛るという手もあるか』
「神との契約ですね。神話だと抜け道だらけですけど」
『そう、そこなんじゃよ。儂とか絶対騙されるし』
グラさんは学者バカなとこあるしね。神様になっても本人に改善する気持ちが無いんじゃ駄目みたいだ。
『その辺は、有能な神官が大勢で手伝うもんじゃろ? そうじゃ、神殿より神官じゃな。誰か心当たりいない?』
「神の国の神官達なら、今なら選り取り見取りですけど。他の神様から引き抜いて大丈夫なもんですかね?」
『引き抜きはマズいな。じゃが、神の国の連中って、アレな。特定の神を崇めとらんから問題あるまい』
宗教国家なのに、本物の神様を崇めていないって変なの。
集められた信仰パワーはMPの代用として消費されているらしい。
勇者が気に入らなくて野に下った神官達も多いみたいだから、そういう人達に声をかけてみようか?
あ、それなら神殿は別の島に建てた方がいいかもね。