婚活クエスト
久しぶりにアイナ村でコロ達の特訓をする。
最近じゃクッコロトリオもなかなか様になってきている。神の国から流れて来た騎士崩れ達の竜骸を、皆で協力して撃退したそうだ。
村を守るために命懸けの覚悟で戦ったらしいのだけれど、拍子抜けするほどあっけなく勝っちゃったらしい。
一応秘密にしているつもりらしいけど、元同僚だよね? しかも格上の相手だったらしいから、最悪の事態も想定していたようだ。
まあ、イステアなんかは最初から舐めプしていたらしいけど。弱過ぎて勝負にならないのは一目でわかったらしい。
好きこそものの上手なれってのは本当みたいで、イステアはぶっちぎりで強くなっている。リシアさんもそこそこ。ライルも頑張っている。
クッコロトリオは、まあ、まだまだなんだけれど、それでも来た時よりは強くなった。竜骸をかなりパワーアップさせたしね。
竜の化石さえあれば、修理ついでにどんどん強化できるのがいい。
竹井の奴がタマゴドンをすぐ壊すので修理していたら、なんか相当強くなってるしね。多分、竹井はライルより強い。本気で戦ったら、実戦経験の差でライルが勝つだろうけど。
「命懸けで村のために戦ったので、我々もようやくこの村に受け入れられたのですよ」
クッコロリーダーのカッシャは嬉しそうだ。
「それは良かった。それじゃあ、ちゃんとした家を建てようか? ああ、でも、結婚してからの方がいいよね?」
「結婚! いや! それは! いえ! 嫌ではないのですが!」
あ、ヤバイ。これでは勘違いされてしまう。
「三人とも美人なんだから、村の男達にプロポーズされまくりでしょ?」
「いえ! それはありません! 魔族と人は風習が違いますので!」
ああ、そういう問題もあったねえ。
「あたしは村の男に襲われたよ? ぶっ飛ばしてやったけど」
クッコロトリオの最年少、エリザが自慢気に言う。
「ああ、それ求婚だよ。この地方だと、祭りの夜にできちゃったら、そのまま結婚なんだって。私は丁重にお断りしたけどね。殴らなくていいんだよ」
ライルの奴がちょっと自慢げに言う。
「何それ野蛮な。文化が違う!」
クッコロトリオで一番弄り易いパリータが憤慨する。
「あたしだって、襲ってきたのが超いい男だったらぶっ飛ばさなかったわよ」
なんというか、姦しいね。でも、騎士やってた頃より人間味があっていいかも。
「私はイフリートの騎士だからな。一生独身を貫く所存。あ、でも、師匠が良ければいつでもどうぞ」
イステアも、わりとツンデレだね。最初イヤミな奴だと思ってたから、そういう目で意識したことはないんだけど。
「あ、そういうのズルいですよ。師匠はみんなのものです」
「何を言うか! この顔の傷は師匠に治療して頂いた痕。言うなれば私は師匠の御手付きなのだ!」
「師匠は、女の顔の傷を気にされないのですか?」
カッシャがいきなりアップで迫って来る。そういえば、彼女も顔に大きな傷痕があるね。気にしていないように見えて、やっぱりコンプレックスなのかもしれない。
「ああ、まあ、僕は気にしないね。痘痕もエクボって言うし、萌えポイントだと思えばいいさ」
処置した外科医は腕が悪いとしか言いようがないけどね。ライルの傷の方が酷いのに、今ではほぼ目立たなくなっている。
「ああ、私が十年若ければ、後先考えずに愛の告白をするのに!」
「カッシャ姉は二十を超えちゃったもんねえ。その点、あたしは十四歳だから、まだ間に合うわ」
嘘か本当かエリザは十四らしい。カッシャは二十歳? 意外に若かった。
栄養状態が悪くて紫外線に当たりっぱなしだと、老けるのも早いからねえ。僕くらいの若い船員達が、皺だらけでどう見てもオッサンだったのを思い出す。
カッシャは貴族だから、普段はそこまで日に当たることはなかったんだろうけど。ああ、でも、貴族の女性が使う化粧品はヤバいらしいね。鉛とかガンガン使ってるみたいだし。
「やっぱりアンチエイジングとか、そういう知識は大事だね。肌年齢が十年若返るとしたら……」
「下手すると戦争になりますね」
リシアさんがボソッと呟くと、皆がウンウンと頷く。いつの間にかアイナ婆さんまでいるし。
「儲け話の匂いがプンプンするねえ」
「十年若返るなら、焦って婚活しなくていいから良くない?」
エリザは目の付け所がシャープだね。
「ああ、そりゃ不味いね。子供を産める数が減っちまう」
アイナ婆さんが落胆する。この世界の女性は普通に十人くらい出産するもんね。それだけどんどん死んじゃうってことだけど。
医学が発達すれば、病気で死ぬ人が減る。食料を増産して飢えをなくし、戦争なんかもやめれば、そんなに子供を産まなくても大丈夫だよ?
「わかってないねえ。あたしみたいに、とにかく沢山子供を産みたい女もいるってことさ」
ああそうか。十人子供を産んで、全員立派に育て上げる子育て上手な人もいるんだ。
逆に全滅してしまうご家庭もあるわけで……村ごと全滅ってパターンもあるしなあ。
普通に考えれば、この世界は地獄で日本は天国、その筈なんだけれど。バイタリティ溢れるアイナ婆さんを見ていると、なんか自信が無くなって来たよ。