プリンに世界は救えるか
「ねえミー君? プリンは世界を救うわよね」
なんか吉田が変なことをいってるな。ま、脳味噌プリンの吉田だからね。
「うん」
相づちをうつと、何故か吉田が怒る。
「もうっ、ミー君のバカッ」
「え? なんで怒るの? プリンを出せば大抵のことは解決するよ。だから新鮮な卵とミルクは欠かさないし、砂糖だって山ほど備蓄してるんだし」
わざわざ結構なMPを使ってまで、インベントリ内に時間停止ゾーンを作っているのも、半分はプリンのためだ。
「え? あー、なんかごめん。あたしの言ってること聞き流してるのかと思っちゃって。ちょっと試してみたの」
「ちゃんと話を聞いてるよ。ただちょっと、情報が多過ぎて考えるのが忙しいけど」
吉田が聖女グループの居場所を突き止めた。正確には、鈴木達が隠れるのをやめた。その必要も無くなったからだ。
いつの間にか巨大な宗教組織を作り上げている。下手な小国より大規模なものだ。
「なんか神の国から離反した人達もどんどん合流して、急速に勢力拡大しちゃってる感じ?」
「あー、神の国ね。なんか内情は大変みたいだよ。勇者須田がいろいろやらかしてるみたいで」
「須田君はセンスないからなあ。でも聖女の鈴木さんだって、あたし達だって五十歩百歩だと思うのよね。なんで皆で国造りみたいなこと始めちゃうかなあ」
「召喚チートがあるからさ、ハズレジョブでもレベルさえ上げちゃえば、わりとスーパーマンじゃない。全能感でいろいろやっちゃう、みたいな?」
女子と話していると、ついつい話し方まで女子っぽくなってしまう。
「ところで再教育施設って、本気なのアレ?」
「名前はともかく、捕虜達はなんか喜んで労働してるみたいだよ」
「カリスマの影響かしらねえ」
カリスマ、魅力みたいなものだな。ゲームだと魅了的な力だったり、交渉力がアップしたりする奴だ。
「勇者ってカリスマが凄いんじゃないの? 聖女の鈴木は確かに凄そうだけど」
「鈴木さんは多分、影で涙ぐましい努力をしてるね。須田君はあの性格でマイナス補正かかってるかなあ」
なるほどね。チートを与えられても努力を怠っては駄目ということか。
おならマスターは、まず間違いなくカリスマなんて無いだろう。なんだったらマイナス補正がかかっていてもおかしくないし。
でも僕は知っている。おならの臭いとバラの香りの成分は、ほんの僅かしか違いがないということを。
おならで空が飛べるんだからね。ハズレジョブでもレベルを上げれば、わりとなんとでもなるもんだ。
同じことが、他のクラスメイト全員にも言えるわけで。
落ちこぼれ扱いされていた干物トリオのバフデバフは凶悪過ぎるし、赤松だっていろいろおかしい。
吉田も、多分まだ切り札とか隠してそうな感じあるな。
秋山さんだって、非戦闘員みたいな顔をしてるけど、反抗したゴリマッチョな水兵を素手でボコってたし。レベルが高いだけで、いろいろおかしい強さだった。
みんな、人間やめてきちゃってるよなあ。
僕自身、日本に戻ればちょっと凄い自信はある。おならで、メタンガスで、世界のエネルギー問題とか解決できるよ。電気代もガス代も只みたいなものだ。素晴らしいおなら文明が始まるよ。
なんとなくだけど、国を造りたいって人達の気持ちが少しだけ理解できた。僕だっておならの国が見てみたいよ。