再びブービートラップ
「あ、また来てるよ。海賊船」
船着き場の帆船を赤松が目ざとく見つける。やれやれ、着陸地点を岩山に変更だ。
「あれは多分どこかの軍艦だよ。状態がいいから」
「前の船は酷かったねえ。ゴミ屋敷みたいだった。酒まで腐ってたし」
秋山さんの酒への執念は謎だ。北の島で収穫したジャガイモは自由に酒にしていいって女子達から許可が出たので俄然やる気になっている。聖女グループがやって来ても、島を渡さないとか言い出しそうだ。
「こうも外道ばかり入れ食いというのは、仕掛けに問題があるんじゃないかね?」
「軍艦なら高級酒を山ほど積み込んでますよ」
「本当か? それなら話は別だな」
「戦うの? いきなりアレぶっ放す?」
「一度戻って緊急会議をしようか。緊急事態の練習にもなるし」
グラさん島に戻ると、皆は大いに盛り上がった。対岸の火事どころか、遠くの島の事件だからね。安全な場所から自由な発想ができる。
とにかくまずは偵察ということで、羽山を連れて行くことになった。わりと無難な作戦だと思う。
問答無用で焼き払えという竹井の主張は却下された。馬鹿っぽいけど、シンプルでそう悪くはないね。
今回はある意味予行演習なので、失敗を恐れず思いついたことはどんどん試していこう。
北の島でもハエなんかは普通にいるわけで、偵察に関しては虫使い羽山の能力は凄くチートだ。
まあ、相手がどこにいるかは、煙を見ればだいたいわかるんだけどね。村は占領されているし、軍艦にはきちんと見張りが残されている。他に、島を調べている部隊がいるようだ。山狩りしてる?
羽山が虫達を操っている間、僕と赤松で岩山に地下要塞を建造する。泥縄もいいところだ。
秋山さんによれば、地下壕は火炎放射器に弱いらしい。火炎放射器はないだろうけど、火魔法はあるかもね。でも、赤松の結界があれば大丈夫だと思うんだ。
入り口は、僕と赤松で力を合わせてなんとか動かせる大岩で塞ぐ。これを動かせるようなバケモノが相手なら、勝ち目はないから降参してしまおう。
地下要塞の弱点になる通気口に関しては、最初から作らない。そっち系のおなら魔法はかなり極めたから。今の僕なら潜水艦でも宇宙船でも作れると思う。
「地下要塞って、半日で作れるものだったかしら?」
「今の僕らなら、ピラミッドだって一週間で作れると思う」
ああ、それも面白いね。やることが無くなったら砂漠にでっかいピラミッドを建設してみようか? いつかはお墓も必要になるんだし。
「ふう。だいたい全員把握したわ。百人以上いるわよ。船って大勢乗れるのね」
「帆船だからね。動かすだけでも結構な人手がいるんだ」
「悪い人達でも、百人も殺すのは可哀そうね」
「悪い人達なの?」
「家の物を略奪してるし、畑を荒らしてるし、やりたい放題よ」
うーん? 無人島だと思ってるんだったら、この世界の人間としては普通の行動かな?
このあいだの海賊達だって、バカやって自爆しちゃったけど、無人島での略奪行為そのものは合法というか、そもそも法律なんて存在しないだろうし。
「話し合いで解決、は難しいだろうなあ。多分、問答無用で殺される」
「面白いからやってみましょうよ、それ。大丈夫、あたしの結界で守ってあげるから」
どうせやるなら念には念を入れて、干物トリオのバフつきでやりたいところだけれど、グラさん島を無防備にするわけにもいかないからなあ。
「とりあえず一度戻って相談ね。ホウレン草よ」
ホウレン草のバター炒めが食べたくなってきた。こっちのホウレン草はアクが強くて、一度しっかり湯がいてから炒めないと口の中がイガイガするんだよ。
バターといえばじゃがバター最強伝説もあるな。そういえば、こっちのジャガイモもそろそろ収穫できそうだけれど、侵略者達が食べたりしないよな?
ジャガイモの芽には毒があるけど、新じゃがならそのままでも大丈夫なことが多い。芽とか出てなければいいんだっけ?
ああ、よく考えたらジャガイモをこの世界に流出させるのも問題ありそうね。しまったあ、育てるのはこの世界の作物にしておくんだった。