大爆破
二人が同時に駆け出す。すかさず指を向けて弾く。
同時に周囲の建物の壁が爆発する。
内部の空気を爆破すれば脆いここの壁を壊す事自体は容易いからな、やって当然だ。
「なっ!?」
「手段選ばずか……!」
手段を選ばない?勝者が全ての弱肉強食の世界なのに手段を選ぶ余地はあると思っていたのか?
降り注ぐ瓦礫に二人が埋もれる。降ってくる瓦礫を空気の壁で受け止めて二人が埋もれた山に投げ捨てる。
「死んでたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
咆哮と共に瓦礫の山を吹き飛ばしたウェスタが真っすぐに迫る。
【魔装】を展開し具足で刺突を受け止める。
反撃の拳と同時にウェスタは後ろに跳躍し、弧を描くように氷の刃が降り注ぐ。
身のこなしだけで氷の刃で躱し、瓦礫を足場に肉薄したウェスタの尻尾による殴打をパイルバンカーで防ぐ。
尻尾を弾き、後ろに下がるウェスタ目掛けて瓦礫を蹴り飛ばす。ウェスタは腕を振るい瓦礫を粉砕する。
後ろに下がりながら体重を乗っけてない。なのに粉砕された。魔力による身体強化もされてないようだし、完全に力技だな。
降り注ぐ氷の剣の一本の柄を掴み2本目に目掛けて横に振るう。双方が砕けると同時に氷の針が一直線に迫る。
身体を反らして躱し、肉薄したウェスタのナイフをサマーソルトで弾く。
「曲芸師かよ……!」
「意外とこの体は柔らかいからな」
女性の筋肉は男性よりも筋肉がしなやけで関節可動域が広い。前世では力が弱く、卑怯な攻撃方法が多かったし虚を突くを動きをしやすいのは本当に楽だ。
地面に足がつくと同時に降り注ぐ氷の剣を空気の盾で防ぎ、投擲させたナイフを落ちてきた氷の剣で防ぐ。
柄だけになった氷の剣を放り捨てると拳を握り勢いよく迫るウェスタに目掛けて指を弾く。
空気が破裂し放たれた衝撃波でウェスタは吹き飛び瓦礫の山に叩きつけられる。
「がっ!?」
「切り裂かれろ」
呻き声を見据えながら左手を振り上げ、手首の先から真空の刃を生み出す。ウェスタ目掛けて左手を振り下ろし刃を放つ。
ウェスタは咄嗟に飛び起きて横に転がり刃を避ける。刃は瓦礫の山を切り裂き奥の建物を両断する。
「くそっ……!」
「ふん……!」
恐怖に顔を引きつらせながら接近するウェスタに向けて背を屈め、地面を蹴る。
振り下ろされる拳に向けてパイルバンカーを殴りつける。拳が砕ける感触と共にウェスタの右手の長手袋が血の色に染まっていく。
「鱗を砕いたのか……!?」
「パイルバンカーは結構重いからな。それを振り回せるだけの膂力はある」
間合いを詰めパイルバンカーで殴る。躱した放たれる拳をパイルバンカーで防いで弾き、左手の貫手を抉るように放つ。
貫手はウェスタの頬を掠め血を垂らす。
間合いから逃げようとするウェスタの尾を掴み引き寄せて額に向けて頭を振り下ろす。
「〜〜〜!?」
あまりの攻撃にウェスタは後ろによろめく。一歩でその間合いを埋めるとパイルバンカーを胸に密着させる。
同時に上から落ちてくる氷山に気づきパイルバンカーを向けて放つ。
氷山は衝撃で粉々に粉砕され、氷の粒が落ちてくる。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
上から落ちながらナイフを振り下ろすノルディに目を見開いて驚きながら後ろに下がる。ナイフを持ち変えながら手を向けるのと同時に手を向ける。
瞬間に放たれた氷の剣を空気の砲弾で粉砕する。
「彼女は支配型の魔法使い。その上得意としているのは空気。地上戦は圧倒的に不利」
「分かってるわ。でも、ここには水がなくて魔法を使いにくい……!」
どうやら、ノルディは私と同系統の魔法使いらしいな。まあ、得意とする魔法は明確に違うようだが。
手を軽く叩くと同時に二人が前に転がり、衝撃を躱す。
「支配型の魔法使いの特徴は支配下になければ力は大きく減少すること。私の支配下の中なら攻撃の予兆を読むのは楽でしてよ!」
手を向け放たれる氷の剣に向けて突貫する。
触れる直前に空気の砲弾で吹き飛ばし、地面、瓦礫、壁、空気を跳弾のように足場にして後ろのを取り真空の刃を横一文字に振るう。
触れる直前に同時に前に跳びながら二人は反転する。
「速い……!本当に植物系なの!?」
「化け物か……!」
失敬な。分類的には最弱の植物系『ミストルテイン』だぞ。
二人のナイフと拳、蹴りを交えた攻撃を空気の盾で防ぎながら大きく後ろに跳ぶ。
周囲を見回し、辺りの建物が殆ど壊れているのに気づき、小さく舌打ちをする。
立体的に動くための足場がない。空気を使えばそれなり動けるが、それはあくまでアクセント。メインは壁や屋根といった環境だ。それを壊し過ぎた。
となれば、ここを使うのは潮時か。
「ここは火薬庫だ。それは何かわかるか?」
「何を言って……!」
答えは、これだよ。
手を大きく振り上げて力強く叩く。
パァァァンッ!という子気味の良い音と共に周囲がドーム状に吹き飛ぶ。
ドゴオオオオオオオオオオオオン!!!!という轟音と共に周囲の建物や死体は吹き飛び、身体も大きく吹き飛ぶ。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」「くっ……!」
ノルディの悲鳴とウェスタの小さな声を聞きながら吹き飛ばされ、空気を傀儡を操るように細かく操作して体勢と衝撃を制御して建物の屋根に着地する。
我ながら、凄まじい威力だ。
残っていた死体から出ていた無色の魔力。それを支配し一斉に起爆、爆発が刹那的に広まりドームの爆発になった。私が起爆しようとすれば簡単に出来た、巨大な爆発だ。それなりにダメージを負ってて貰いたいが……。
「ぐっ……!大丈夫かノルディ」
「ええ……。周りの被害も考えない戦い方、無茶苦茶だわ」
まぁ、そう簡単に致命傷にならないか。
千切れたり破れたりしてボロボロになったメイド服を纏う二人が瓦礫から這い出てくるのを確認し口角を上げ、好戦的な表情を向ける。
二人は両腕の長手袋を脱いで捨てる。隠された鱗と木の幹に覆われた手を握り、睨みつける。
勝負はこれからだ、こいつらはここで殺すぞ。




