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精霊憑依

さて、どうしたものかねぇ……。


ジリジリと間合いを詰めてくるエリザとブルーに少しばかり警戒しながら、拳を構える。


ブルーの方はほぼ完全に洗脳されてしまっている。何を言っても私の事は聞くことはないだろう。対してエリザはまだ少し話を通す余裕がある。


まあ、正義の基準がこの国の法律である以上相容れることはないけど。


「はああああああ!」


エリザが叫びながら間合いを詰めてくる。同時にブルーも動き間合いを詰めてくる。


振り下ろされる剣を空気の盾で防ぎ、ナイフの切り上げを篭手で防ぐ。


私の周りに突風の層を作り、二人の身体を吹き飛ばす。


「なっ!?」

「吹き飛べ」


風でエリザを引き寄せて磁石の反発のようにブルーに向けて飛ばす。


ブルーはエリザを受け止めて地面に転がる。起き上がるより速く肉薄しパイルバンカーを振り下ろす。


ブルーとエリザはすぐさま互いの身体を押して地面を転がり、パイルバンカーを避ける。


「これでどうだ!」

「仕留める……!」


立ち上がり様に振り下ろされる剣とナイフを篭手とパイルバンカーで受け止める。


すかさず足払いをするが後ろに跳ばれて躱される。


「法は正義か、エリザ」


エリザとの間合いを詰め剣とパイルバンカーがぶつかり合う。火花が出るほどに競り合いの中、エリザは私を睨みつける。


「ああ、正義だ!法とは過去の人々の積み重ね。即ち、私達を導く道標となる」

「道標?他種族を壊し、絶滅にまで追い込むようなものが正義と言えるか?」

「言えるさ。他種族は人である事は認めるが、それだけだ。彼らが重荷から開放されればどうなるか、わかったものではない!」


エリザがパイルバンカーを弾き、上段に上げた剣を振り下ろす。振り下ろした剣を後ろに退いて躱し、背後から迫るナイフを反転しながら篭手で弾く。


「せやああああああ!」


間合いを詰めたエリザが一点を点くように剣を真っ直ぐ放つ。サマーソルトで剣を弾き、着地と同時に首筋に向けて振るわれるナイフをパイルバンカーで弾く。


「少なくとも、この国は消える。そして、他種族至上主義の国が生まれ、人族が蔑まれることとなる。そんなのを他国が許すわけがない。そこから始まるのは世界を巻き込む大戦争だ。お前はそれを望むのか」

「背負われた負債は返さなければならない。それだけの話だ」


奴隷、外法の研究、重税……オグマの話が確かなら、帝国は徹底して他種族を差別する法を作り、他種族たちを人として扱わず、数多の命を貪ってきた。


その重荷は長い年月を経て日に日に積み重ねられ、戻る事が不可能になるほどになってしまった。


帝国はあまりにも罪を重ねすぎたのだ。そのツケを払うだけの話だ。


「千年の重荷、それはお前らが払わなかっただけだ。それを払い、数多の命が失われようと私には関係ないな」

「ふざけたことを……抜かすなぁ!!」


我武者羅に振るわれる剣を冷静に捌いていく。 


エリザの剣技はそれなりに高い。だが、高いだけだ。そのあり方は道場剣術と同じくどうあっても応用が効いてない。


事実、エリザの攻撃には決定打に足り得るものがない。こんなもので勝てると思うのなら……、


「片腹痛い!」


パイルバンカーが剣と触れると同時に真空の杭が放たれる。剣は衝撃で砕かれ、目を見開くエリザの太腿にパイルバンカーを密着させる。


そして、破壊の杭が放たれる。


「ぐうっ……!?」


衝撃で吹き飛ばされ、地面を転がるエリザは起き上がろうとしてそのまま地面に倒れる。


まあ、そんな状態で立てたら普通に凄いよな。


「あ、ああ、足がああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

「貴様ぁ!!」


千切れた足の断面を見てエリザが絶叫する中、吠えたブルーが飛びかかりながら逆手に持った二振りのナイフを舞うように振るう。


ナイフを足で打ち落とし、力強く地面に踏み込み左手の拳をストレートに放つ。


「ぐっ……!」


拳がブルーの胸にヒットし、大きくのけぞる。


すかさず大振りのハイキックを放つがナイフで受け止められ、間合いの外に出してしまう。  


ちっ……体躯が同じくらいの相手は流石に相手した事がないが十分に厄介だ……!


「私は死の舞踏。数多の命を奪う狩人なり……!」  


何か唱え……!


「シッ……!」


瞬きする間に肉薄したブルーが振るうナイフをギリギリのところで躱す。


演舞の如く美しく、それでいて当たれば命を刈り取るナイフを篭手とパイルバンカーで防いでく。


さっきの言葉はルーティンか!思考の切り替え、それに伴う思考の最適化。なるほど、存外厄介だ! 


振り下ろされるナイフを持つ手を掴んで大きく反り、その頭に頭を振り下ろす。


「がっ……!?」 


後ろに下がろうとするブルーを引き寄せ、その顔面をパイルバンカーで殴りつける。


「暗殺者として有能なのは認めよう。だが、接近戦に出たのが悪手だな」 


ブルーの手を離し、手を軽く叩く。 


同時にブルーの周囲が破裂、そのままブルーはテントを巻き込みながら倒れる。


今のをもろに食らうのは流石に危険だった。死んではいないだろうし、確実に止めを刺す……!? 


咄嗟に反転すると同時に眼前に光の剣が迫る。


「くっ……!」


僅かに地面を蹴って後ろに跳ぶと同時に強烈な衝撃と共に吹き飛ばされる。


空中で回転し着地し、胸に刻まれた傷と漏れ出す赤い血を指に着けて舐める。


「【疑似憑依ー光の精霊ノトス】」


蛍が舞うような淡い光の粒を漂わせ、無くした足を光の義足で補強し、金色の髪が赤く染まったエリザを見て目を見開く。


口角を上げ、パイルバンカーをエリゼに向けて構える。


「そうか。それが全力か」

「ええ。ブルーはこの魔法の足がかりを作ってくれました」

「なるほどな」 


大仰なルーティンをしたと思ったが、エリザの魔法を使うための布石だったとはな。 


だが、これで対等。ブルーは完全に気絶しているし、エリザも本気状態。私も負傷したしな。


「【宿り木の支配下】」


だから、全力でいく。


魔力が空中や地面、周囲の木々や葉にランダムに溜まっていくのが分かる。 


私も本気だ、この命はそう安くはないぞ。


「貴女に一つ問いましょう」 


エリザが地雷原を一直線に突き抜け、振り下ろされる光の剣を空中を蹴って後ろに引くことで躱す。


素早く間合いを詰めるエリザの腹に風の砲弾を直接叩き込み吹き飛ばす。


地面を転がり倒れるエリザの身体を起動した地雷が吹き飛ばす。 


木に叩きつられたエリザは尻もちをついたから立つのと同じくらい自然に、何事も無いように起き上がると手を振り下ろす。 


本能の警鐘を感じると同時に真上から光の剣が落ちてくる。剣の軌道を目視するよりも速く察知し最低限の身のこなしで躱すとエリザが開けた掌を握る。


同時に光の剣が強い光を放ち、爆発する。 


「ぐううっ!?」


焼かれるような痛みを覚えながら後ろに跳ぶと背後に回り込んだエリザの剣が振り下ろされる。 


後ろに翻して剣を躱し、追撃が振るわれると同時に指を弾く。光の剣が肌に触れる直前、エリザが吹き飛び同時に複数の地雷が爆発する。


「がああっ!?」


左手を振り下ろすと背後から風の槍がエリザ目掛けて放たれる。エリザは風の槍を光がの剣で切り裂くと一足で間合いを詰めて突きだす。


身体を逸らして躱しながら足を払う。体勢を崩したエリザに向けてパイルバンカーを向けるが強い殺気を感じて飛び退く。


同時に光の槍が先程までいた場所に突き刺さる。


「貴女は他種族の事はどう思いますか?」

「はっ、決まってるだろ。人間だよ。あいつらはお前らに押さえつけられる弱者じゃない、対等な存在だ」 


私からすれば、人族も他種族もその本質には差がない。故に、何故差別が起きるのかが理解できない。高々見た目が違い、身体能力や魔力が違うだけなのにな。


「そうですか。なら、死んでください。貴女のあり方はこの世界では害でしかない」

「そうか。まあ、こんな死に方は嫌だから確実に潰してやる」 



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