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双子の兵士

「それじゃあ、短い間だが世話になったな」

「ええ。たまには帰ってきてもいいよ」


明朝、短い言葉を交わし、選別にリュックを貰い、家から立ち去る。 


さっぱりとした関係だったな。まあ、感謝はしてるし来ることがあれば、立ち寄る事もできるだろう。


さて、と。今後、私がすべき事は幾つかあるが、重要なのは帝国の地理を正確に把握することだな。リュークに聞いても良かったが、流石に熟睡しているリュークを起こして聞く必要は無いしな。 


それに、『ドラゴニュート』の寿命は長い。それに、この角が正しく家族に渡るかも分からない。あくまで私の人生のついで、でしか無いのだから。


「とりあえず、人族を探して情報を聞き出すのが一番楽かな」


できたら、なるべく高貴な人間が良いな。そっちの方が情報を多く持っている筈だ。


朝の日差しに身体を当ててエネルギーを生成しながらひたすら森を歩いていく。


時折、猿が襲ってくるためその都度【魔装】を纏い心臓を穿いていく。


猿が集団で狩りをするタイプでなくて良かった。相手をするのが一々面倒だしな。それにしても、魔物というのは種類はそこまで多くないのかな。


「「「ブブブブブ……」」」


おっ、新しい魔物が来たな。


殺した猿を放り投げていると、3匹の蜂が風切り音と共に飛んでくる。


身体が大きく、成人男性程度はあるようだな。まあ、それ以外はオオスズメバチのような見た目をしている。奇襲されたらヤバかったが、この程度なら問題ない。


魔力で周囲の空間を支配し、軽く手を叩く。


同時に蜂の一匹の空気が破裂し、吹き飛ばされながら身体を粉々に破壊される。


まず、1匹。蜂という種は何となくだがろくものではない気がするし、ここで処分していた方が楽だ。


味方が殺られたのを冊子た蜂たちが同時に動きだし、針を突き刺すために突進してくる。


空気を操作し、風の壁で受け止めて片方にパイルバンカー、もう片方に風の玉を向ける。


「吹き飛べ」


パイルバンカーの起動と同時に風の砲撃が放たれる。


蜂の一匹はパイルバンカーの間合いから離れて躱し、もう片方は風の砲撃に直撃し爆散する。


「ブブブブブ……!」


勝ち目が無いと悟った蜂は飛び去ろうと上に移動し始める。同時に手を叩き、一匹目と同じく空気を破裂させて粉々にする。


ヒエンの話だと支配系、だったか。間合い内ならどこでも攻撃できるのはかなり優秀だな。まあ、欠点もあるだろうけど。


それでも、個人的には欠点があった方が人間らしくて良いし、何より使い方を考えれて楽しい。近接戦のサポートができるし、弱い相手なら問答無用で殺せる。魔力量が魔法種族に比べて低い以上、近接戦でのカバーが出来るのは大きい。


「さて、と。なるべく早く遠くの方が良さそうだな」


破裂音がどこまで響くかはわからないが、聞き取った魔物に狙われるのは億劫だ。さっさと逃げ……、


「おっと」


木々の隙間を縫うように飛来する氷の矢を身のこなしで躱し、リュックを異界に放り込む。 


そして、木々の間から出てくる鎧姿の人族を睨みつけながら魔力で周囲をより強く支配する。 


人族、しかも私達に敵対的な人族だな。エンカウントするのが分かっていたらフードでも着けていたのに。


「おやおやお嬢さん。こんなところで何をしているのか……!?」


どうでも良い。散れ。


言葉を発した人族に向けて指を弾くと同時に地面が爆散する。男は黒煙の中から飛び出して突進してくる。


……躱されたか。まあ、指を弾くのと爆発するのに僅かにタイムラグがあったから仕方ないか。


振り下ろされる剣を空気の盾で防ぎ、挟み込まれるように振り下ろされる剣を後ろに跳んで躱す。


「ちっ、避けられた。気をつけろよ、相手を子供だと舐めてかかるなよ。何、子ども一人殺すぐらい、どうとでもなる」

「はい!」

「分かりました!」


ふーむ……髭面の中年くらいの兵士一人とよく似た顔立ちをした兵士二人か。中年兵士は若手兵士の指導役、教育係みたいな立ち位置か。


間合いに入り、剣を振り回す若手兵士たちの攻撃を躱し、時折中年兵士に視線を向ける。


やはり、動かないか。子供相手だと舐めてかかってくれた方が良いのだが……まあ、それもそれでムカつくし、こっちでも良いか。


「おおおおおお!」


垂直の振りをおろしを空気の盾で防ぎつつ、空気の玉を放つ。


兵士は剣の柄で攻撃を防ぎ、距離を取る。間合いを詰めようとするとその間にもう一人の兵士が割り込み剣を振るってくる。


アンダスローの拳で手の付け根を殴り軌道を逸らし、パイルバンカーを放とうすると殺気を感じ、身体を反らす。 


その刹那、刃が肌に触れるギリギリの場所を横切る。続け様に振るわれる足を空気の盾で防ぎ、距離をとる。


先程距離を取った兵士が背後に回り込んで剣を振るってきたのか。


波状攻撃に追撃の阻止、休息を入れさせない動き方。念入りに連携の訓練してきているな。相手に僅かにでも身体を休める機会を与えずに体力切れにさせるつもりか。


いくら人族より肉体的、魔力的に優れている『ミストルテイン』だと言っても子供だ。体力は大人よりも少ない。痛いところを突いてくるな。


まあ、それがどうかしたのか、というところだけど。


「破裂しろ」


右目を閉じ、同時に距離を詰めてくる兵士たちの一人を照準を合わせ、手を叩く。


それと同時に片方の兵士の身体の穴という穴から血が吹き出す。


「ゴボッ……!?」


何が起きたのか分からず、体から血を流し、膝から地面に崩れ落ちる。


「兄さん!?」


甘いな。


崩れ落ちた兵士の方にもう一人の兵士が顔を向けると同時に手を叩く。崩れ落ちた兵士と同じく、全身の穴から血が吹き出す。


彼らは私の支配している空気を吸い込んだ。その空気を体内で爆破させれば簡単にダメージを入れれる。汚いが、それがどうした。殺し合いなのだから汚くて当然だ。


それに、主要な血管は壊していない。強烈なダメージは入ったが殺すほどのものではない。見た目が派手なだけだ。


腕をサイドスローに振るい、風の刃を放つ。立ち上がった兵士たちはその場を蹴って飛び退いて躱し、同時に迫ってくる。


はっ!そうだよな。ただ他種族を痛めつけていたら反発が起きる。それを力業で封じてきたんだ、新兵だろうとそれなりの実力が無ければ意味がないよな!


後ろに跳んで初撃を躱し、後ろにあった木の幹を足場に跳躍、ムーンサルト気味に背後に回り込みパイルバンカーを背中に密着させる。


吹き飛べ。


「ぐっ……!」


パイルバンカーが起動すると同時に兵士の体が吹き飛び、木に叩きつけられる。しかし、体には風穴は空いてない。


ちっ……放たれる直前に前に跳んで威力を減衰させたか。やはり、侮れない。


「カストル兄さん。彼女、かなり強い」

「ああ、ポルクス。全力で始末するぞ」


カストルにポルクス。まさに、双子座の兄弟のようだな。だが、それがどうした。敵対した以上、潰すだけだ。


さあ、勝負の時間だ。

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