表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ある放課後の爪切り

作者: 那珂さん

 パチン、パチン。

「あたっ、いててっ」

 二人だけの教室に響く音と痛がる声。

 パチンッ

「いったぁ……」

 我慢ならなかった、声をかけると

「どうしたの?」と彼女がとぼけた声で返事する。

 パチン、いたっ。

「それやめて」

「どれー? 」

 ため息まじりに目線を落とせば私の机でのびている彼女と目が合う。ぱっちり見開かれた双眸はイタズラな光を反射して私を見つめている。

 パチン

「おうっ」

「それよそれ、気が散るから黙っててくれない?」

「どうしよっかなぁ」

 ムカついたので切った爪をばら撒いてやろうかと思ったけど目に入って傷ついても困る、さっさと残りの爪を切ってごみを捨てる。ヤスリがけしないとガタガタになるんだー、とかのたまったが知ったことじゃない。

 振り向くと先ほどと同じ、寝そべるような姿勢の彼女が聖母のごとく優しい表情でこちらを見ている。レース越しの日ざしに包まれた構図は聖画か、または

「心中現場ね」

「ロミジュリ?」

 二人がそんな表情で死ねたとは思えないし、そもそもあれは心中というより事故だ。

「早くどいてジュリエット、お昼食べに行くんでしょ」

「やだー、お姫様は王子様のチューがないと目覚めないんだから」と言ってから目を閉じて親鳥からのエサを待つヒナのような顔をする。

「この学校に王子様はいないから諦めなさい」

「去年の文化祭」

「やめて」

「新訳 白雪ひめ、んっ」

 恥ずかしい思い出のせいで顔が少し熱を持っている。彼女はというと「いひひ」だか「うひひ」みたいな笑い声をあげつつ満足したような顔で自分の荷物を取りにいく。

「食堂やってるかな」

 今日は午前で終わりだったからやってなくてもおかしくない。

「さあ、やってなかったら購買いけばいいでしょ」

「購買も閉まってたら?」

「駅前」

「私の手料理って選択肢は?」

「雪山に遭難しない限りは無いわね」

 彼女の弁当に異物が入っていたことを思い出す。いわく卵焼きだったらしい。

「愛情いっぱいだよ」

「味から始めて」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ