第三話 「歪みの正体」
「ここか、刻羽大高校とは。」
刻羽大高校、いわゆるエスカレーター式の高校で少し、いや、かなり学力に差がある学校である。
なんせ幼稚園児の時に努力さえすれば高校受験をしなくてすむのだからな、
だが高校受験がないということだから学校としての評価は偏差値50後半といった感じだ。
昔は栄光ある学校だったもののエスカレーター式になってからは生徒の学力が下がる傾向にあり、今では全生徒528人中、特権生が1人という(これでもかなり凄い)長所と大学受験成功率50%という短所を持つ学校になった。
「資料どうりだな。」
これは俺が気になったから調べた独自の情報だが、この高校に転校した者は絶対に受験失敗や就職失敗になると伝われ、今まで転校生で成功した生徒はいないんだとか、
俺の前に転校して来た生徒は4年前でその間転校生は誰もいないとのことで学校のブログでは言われ放題だった。
まったくなんて場所に居てくれちゃうんだか、また田沼の名に泥を塗ることになっちまったな。
まあグチはここまでにして真面目にかかるか、こればかりは奴らに先をこされるわけにはいかないからな。
もし先手を撃たれるような事があってみろ、大真面目に大惨劇だ、それだけは勘弁して欲しいな。
まあ、逆にこっちに引っ張れたらかなりのものだ、一気に戦況がひっくり返る。こいつが第一目標だ第二目標は…まあ今はいいかすぐ分かることだしな。
「ん、まさか彼女は……」
なはは、まさか彼女が来ていたとはな、こんな所にも来るとは驚きだ。
「ようこそ刻羽大高校へ、副校長の鈴音 禀よ。」
場所は変わって1-Bの教室へ
「どうも初めまして、田沼 風神です、以後よろしくお願いします。」
『あーーーーー』
「キャーーーステキーーー」
「ブーブー帰れ帰れ」
「男は消えろブーブー」
おー聞こえる聞こえる良いリアクションとその他もろもろ、
(さて、どう切り出そうか?やっぱ周りを黙らすには<アレ>に限るか、そうと決れば)
俺はいかにも『僕、困ってます』的な目線で担任の富崎先生に助けを求めた。
「あー田沼君に質問のある奴、手を挙げろ。」
『ハーーイ』
おうおういるね、これは黙らせがいがあるな。
ん、野郎の人数も多いな、こいつはまた珍しい事だな。
「田中」
『いけー特攻隊長、洗い浚い全部吐かせろ』
特攻隊長?なんじゃそりゃ、どーゆー役割だよ!つーか特攻で尋問っておかしくないか?
「なんでこの高校に来たんですかー?」
早いなーこの技使うとかなりの間気まずい空気になるから後半に使いたかったんだけど仕方ないか、ここしかチャンスはなさそうだしな。
「美少女が沢山いるからです。」
シーーーーーーン
ほらね。
キーンコーンカーンコーン
(ようやく終わったか)
あの後俺はK-1並みの会話術(意味が分からない人はすみません)で程よくクラスに馴染み特別扱いされる事はあまりなかった。
さて、程よく馴染めたところで下校は自動的に帰り道が同じ彼女達になるだろう、
流石に一日目に一緒に帰るなんてフラグイベントを起こす奴はそうそういやしない。
(しかし助かったな)
彼女達がここをどこかも忘れてあの事を喋っちまったら彼女達だけでなく俺までもが変な目で見られちまう、俺は多籍 軽あたりがそれをやっちまうかと思ってたがその心配はなかった。
まあ、北条 愛がその話抜きで俺に話しかけてきた時は結構びびったけどな。
「田沼君、帰り道はどこなの?」
「桜門から駅に向かう道です。」
「だったら赤謝さん達と一緒に帰ったらどうかしら?」
「ありがとうございます西野さん、そうさせてもらいます。」
流石だなK-1会話術、最初はドン引きだった彼女も今では何気なく普通に会話出来る。ひぐらしで勉強したかいがあるってもんだ。
「ねえ田沼一緒に帰らない?もちろん軽と崗ちゃんも一緒だよ。」
「分かりました、一緒に帰りましょう。しかし何故帰り道が同じ事を知っているのですか?」
「てへへ、盗み聞きしちゃった。あと、何度も言うけど同い年なんだからそんな堅っ苦しい言葉はなし、分かった?」
もちろんだこの俺が忘れるはずがない、こいつは単なる空気作りだ。
北条 愛と話せても多籍 軽と赤謝 崗と会話出来なければあの事を彼女達に教える事が出来なくなりみすみす奴らにチャンスを与える事になる、
わざわざこの俺が出向いたんだ、必ずこちらに引き込んでみせるさ。
「おっと、俺としたことがすっかり忘れた、すまないな。」
俺が思ったとうり帰りは無言の状態が続いた。
三人は話そうとはするものの空気を読んでかそれとも言いたい事はあるものの何から話せば分からないと言いたげな様子でこちらを伺う。
もちろんこちらは完全スルー、こんなとこでそんな話しをされたらたまんないのでこれを機会に例の場所へと迎う
「次左に曲がるぞ。」
「どこに行くんだ?」
「んーお前達の知りたい事を話せる唯一の場所、とでも言っておこうか。」
正直緊張していた。奴らからすれば最高の狩場でこちらはお荷物三人に+α、さらに援護なしときたんだから奴らは多少無茶をすればこちらを阻止出来たんだ。本当、奴らの馬鹿さに感謝感謝である。『もってっけ〜♪』
「おう俺だ、……分かった、こっちもやっておくからすぐに進めてくれ、頼んだぞ。」
「もうすぐ着く、聞きたい事を三人でまとめておけ。」
「株式会社イージス?聞いた事ない会社だな。」
その会社は綺麗なガラス張りのそこそこ大きい会社だった。
「それで多籍君、どんな事から話せばいいのかな?」
「アドリブで良いじゃない、どうせああいうのは自分の話を一方的に押し付けるだけなんだろうしね。」
「そうなの多籍君?」
「北条が言うからにはそうなんじゃないか、多分。」
あいつは俺達の少し前を歩いているから俺達の会話は聞こえてない。
だが、聞きたい事は山ほどあるんだ、話がスムーズにいくとは思えないからあいつはきっと色々な方法で俺達の会話を盗み聞きしてると思う。
俺は個人的にあいつが嫌いだから北条の言う通りわざと話を決めないであいつを困らせたかった。
しかし
「それでもやっぱり話す事を決めとかないと話が進まなかったりするから決めとこうよ。」
やっぱりな。
「アハハ、崗ちゃんならそう言うと思ってたよ。」
「ったく真面目だよな赤謝は。」
これがいつもの俺達のパターンだ。
真新しい建物の中に入る、
あいつは偉いやつみたいでヤクザの手下のようなおっかないオッサンがズラリと出迎えていた。
「お帰りなさいませ田沼様、お連れの方は」
「ああ、例の特別客だ、あの部屋へ案内してやれ。」
「承知しまいました。」
「こいつらがお前達を案内する、部屋で少し待ってくれ。」
「…でね、あの子ったらそれで泣きだしちゃってね。」
「マジかよ!それはやりすぎだろ。」
「でもその子だって悪いよ、もっと相手の事を考えなきゃ。」
「うっわ冷た、赤謝って思ったより冷たいよな。」
「そ、そんな事ないよ〜」
「クールな崗ちゃんも良いけどやっぱ困った崗ちゃんの方がもっと可愛い〜〜」
綺麗な個室に連れてこられたものの待ってるのも暇だから北条達と話していたのだが今までの緊張感はすっかり抜けてしまった。
コンコン
「失礼するぞ、おやおや、ずいぶんと面白そうですな。」
「まーねー」
「本題に入ってもいいかな?」
場に今までの緊張感が漂う
「まず君達の聞きたい事は?」
「はーい」
「どうぞ、北条さん。」
「私達を襲ったあの怪物はなんなんですか〜」
「それよりお前達は何者なんだ?教えろよ。」
「はいはい分かったよ、とりあえず二つ同時に話すよ。」
「お前らを襲った怪物は[アシッド]と言うんだ、漢字で書けば[惡影]だな、奴らがお前達を襲ったのはお前達の[存在力]を奪うためだ。奴らは人の存在力を糧とし、成長し、進化する。」
「それじゃその存在力を全て奪われてしまったらどうなってしまうのですか?」
「良い質問だ、存在力を全て奪われた者はその日の内に様々な形で……死亡する。事故や殺人事件の被害者、心臓麻痺、なんでもありだ。」
「!!!」
「え………」
「お、おい」
「だがそれだけじゃない、素質のある強力なアシッドは存在力を全て食らい尽くすと対象の存在を完全に消滅させる、つまり、消滅させられた者は[この世に居なかった]という事につまり[この世に産まれなかった]という事になる。」
「おいちょっと待てよ、わけ分かんねぇよ!何言ってんだよ!」
「まあ、そうなるだろうな、休憩するか?」
「いいえ、続けて下さい。」
「フ、理解が速くて助かるよ、二つ目の質問、俺は何者か、だ。」
「おい!人の話を…」
「落ち着いて軽、まずは田沼の話を聞こうよ、」
「…では話すぞ、面倒だから一発で聞き取ってくれ。俺は平行世界神族代理管理者、通称[平界者]の戦士だ。我々はこの世界のアシッドを戦滅し、悪魔神サタンの片割れ惡影神ルシファーの力を最高神ゼウスに渡し、惡影及び悪魔を全ての世界から消し去る事が目的である。なにか質問は?出来れば一つづつゆっくりと頼む。」
「わけ分かんねぇよ、もっと分かりやす……」
「特権生法との関係は?」
「今こちらで調査中だ。」
「おい赤謝、お前は黙っ……」
「多籍君静かにして!!」
「!あ、あぁ」
「私の祖父が死んだ事と関係あるのですか?」
「崗ちゃん………」
「鋭いとは困ったものだ、相手が鋭いと大体は困ったことになる。……ああ、あなたの祖父、赤謝 一馬を亡き者にしたのはアシッドだ。」
速く速くと思って作ったけど、やっぱり時間がかかるものですね。今回はいつもより長く作ってみました、中途半端に次が気になる内容に仕上げたので気になったら次話も読んで下さい。