第一話 「歪み始めた日常」
それは家への帰り道での出来事。いつもどうりの帰り道、いつもどうりの友達と別れてからいつも通る道を抜けて交差点で止まる。
交差点の信号が青になるのを待ちながら今日の夕食を考える。
「今日はカレーにしよっか」
妹の喜ぶ顔を思いながら青になった信号を渡る。すると、
キキィィーー
ガシャン
ドシャ
わけが分からなかった。目の前には何かがいた、その何かは私を天国へ連れて行く天使でもなければ地獄へ連れて行く悪魔でもない、血に餓えた目とワニの様な口をした狼の頭のゴリラや熊の様な体の怪物。
それは真っ直ぐ私に襲い掛かろうとする、私は逃げようとするが痛みと恐怖で動く事も叫ぶ事も出来ない。もう駄目だと思い目を閉じたその時、停止した時間が再び動きだした様な感覚を感じた。恐る恐る目を開けると目の前には男の人がいた。その人が前に手を出すとその怪物は煙の様に消えた。
その人が私の方を向き目が合う、その人は驚いた様に私を見つめ
「…お……見え…………か……」時間が完全に戻った感覚と共に私の意識はそこで途切れた。
気が付くと私は嗅ぎ慣れた匂いの中ベッドで横になっていた。
「ここは……病院?」
そうだここは星峪病院、昔から身体の弱い私はいつもこの病院にお世話になっていたんだ、それにしてもなんで私はここに?……そうだ思い出した、今でもはっきりと覚えている正体不明の怪物と男の人、思い出しただけで恐ろしい。はぁ、嫌なものを思い出してしまった気持ち悪い。あれは一体なんだったのだろう。そう考えている内に部屋のドアが開いた。
「お姉ちゃ〜〜ん!!」
「鈴、どうしたのこんな所に?」この子は赤謝 鈴八つ下の私の妹。
「どうしたのじゃないよ、お姉ちゃん車にはねられちゃったんだよ!ボケボケさんもいいかげんにしないと死んじゃうよ!あ、パパ、ママこっちこっち!」
そうだそういえば私、車に跳ねられたんだっけ、あの怪物の事ですっかり忘れてた。だけど、全然実感わかないな。なんでか分からないけど車に跳ねられたというよりあの怪物に襲われたっていう感覚しかしない。
「大丈夫か崗、身体の方は無事だと医者から聞いたが具合は平気か?」
「大丈夫、何ともないよお父さん。」
「ホント、ビックリしたわよ。今まで病気で道に倒れたこともあったけど車に跳ねられたなんて初めてだったから心配で心配で寿命が十年縮んじゃったわよ。」
「心配かけてごめんねお母さん、これからは気を付けるね。」
「それにしてもお姉ちゃんこれで何回目?お姉ちゃんなにか悪いのついてるんじゃないの?」
それを言っちゃうか、
「七回目よ、こんなのもうラッキーセブンならぬアンラッキーラッキーセブンじゃない、あぁ、みんなにどんなにイジられることやら……はぁ」
「それじゃあもう暗いし私達はそろそろ帰るわね。」
「うん、お休みなさい。」
バタン
ちょっと今後が心配だけど嫌な事も忘れられて今日もぐっすり寝れそうだ、今なら分かる、あれはきっと幻、悪い夢だと。
………あれ、俺の出番は?
続け