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剣より魔法が似合っているっ!!  作者: 椎木唯
王の種族と職業
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剣より詰め込みが似合っているっ!!

 道をさ迷いながらやっとのことで大通りに出る。出た瞬間を一言で例えるなら刑期を終えた受刑者みたいな気持ちである。僕は何もやってない。


 その後、道すがら人に教会への道を聞きながら進んでいく。道中、お腹が空いたので買い食いをしようとしたらシャーネが財布を出すのを渋り始めた。おいおい、そんなケチな女じゃないだろ?


「女に金を出させるのもどうかって思うけどね」


「いや、もっともな事言ってるけど報酬は全てシャーネに預けて必要になったら私を通してね、って言ったあの瞬間は何だったんだよ」


「多分空耳」


「随分ハッキリ聞こえる空耳だったな」


  結局落とし物は報酬を入れていた財布だと言うことが発覚し、特に返す言葉も思い浮かばなかった。誰かに取られてなければ良いけど…。


「ま、無くなったらその時はまた依頼を受ければ良いだろ。苦労はするけどただそれだけだしな」


 男らしさを含めながら言ったのだがその言葉はシャーネに上手く伝わらなかった。


「粗末な考え方で扱っていたら無くしそうね…」


「それは自己紹介か何かか? じゃなくて本心でとかで言うならお前の顔面にドロップキック案件だぞ」


「DV」


 脳みそがはち切れそうな勢いでキレそうだったので静かに深呼吸をして呼吸を整え思いっきり頭を打った。後悔はない。

 痛いー! と、言うシャーネを耳で聞き流しながら教会へと到着する。数時間ちょいでまた来るのか…と、始めてきたときの行列を想像しながら入った。想像とは違って人が全く居なかった。


「ん? 営業時間外とか?」


「教会の営業ってなんだよ…お祈りとか?」


 腹痛などのよっぽどな時以外は神に祈らない系男子なので鼻で笑いながら返す。そして同じような考え方をしているシャーネも笑いながら「それ」と言った。俺が言うのも何だがそんな性格だと彼氏を作れんぞ…だが、その前にその髪のアタッチメントを変えないとだな。流石にドリルは…ねぇ?


 人がいないことでより探しやすくなり、パッと全体を見てその後に俺達が並んでいた場所に行ってみる。遠目では判断できなかったが何度か踏まれた後のある財布を発見することができた。二人揃って視力悪くねぇか?


「よし、これでお腹一杯ご飯を食べれるね!!」


 どうしたそのテンション。変な道草でも食べたのか? だからあれほど道草は選んで食えと…え? 違う? まぁ、草なんて毒さえなかったら食えるもんな。

 ふーん? 女の子は月に何回も性格が変わるだと? そう、例えるなら猫のように。あの、可愛い猫のようにねっ!

 犬派の俺からしてみれば良く分からない話なのだが、シャーネとは年がら年中グータラ娘なのである。そんなシャーネが女の子は~とか言い出しても信じるまで至らないしもう俺の中ではシャーネは男だったと結論付けている。もう手遅れだな。

 何故、俺は男と一緒に居なきゃならんのだ。俺が許せる男は筋肉メンしか許せないのだ。それはそれで重症なのだがシャーネは女の子である。良かった。


 よし、用事も済んだし帰るか。いや、帰る場所がないからその前に宿屋を探さないとな。

 出口に向かおうとする俺をシャーネはがっしりと腕を掴む。帰らせてもらえないの? 雨の中、一人寂しく雨に打たれ潤んだ瞳で見つめる。だがそれを鼻で笑い


「ごめん、私猫派」


「これは代理戦争勃発か…?」


 何の代理かと問われればそれは犬猫である。既にアイツらは仲が悪いような気がするがこれは各々の個人的な自己満足でもあるのだ。これは何者であっても止めることは出来ない。さぁ、始めようかどちらが正しいかをッ!

 一人で盛り上がっていたのだがシャーネは終始冷めた表情で何かに集中しているようだった。


「何かこの先から奇妙な声が聞こえるの…」


「そりゃあ、まぁ教会なんだし司祭とか教祖とか? あと関係するものってあったっけ? と、そんな感じな人がいるんだし声は普通に聞こえるだろ」


 それに対しシャーネは誰も信じず、ただ己だけを信じる。その一心でご神体的な像の脇にあった扉をそっと開けた。

 開けた隙間からこちらまで響く何かを叩く音、それに続いて聞こえる誰かのあえぎ声っぽい何か。


「なぁ、これが良いんだろ!? なぁ! 正直に言えよこの雌豚がッ!」

「いっ、あっ……はぁはぁ……は、はぃいいき、気持ちいいですぅ」

「もっと、大きな声で叫ばんか!」

 見覚えのある何誰かが四つん這いで、かつ鞭に叩かれながら頬を赤く染めているのを見て、ゆっくりと前に佇むシャーネを押し退け扉を閉める。この世には知らなくてもいい事も少なくないのだ。そしてそれはたかが一瞬、一時の事であろうと顔を知った相手ならばより一層の事である。それがちょっとエッチなことでも同じことなのだ。


 やはり、教会の人は皆変態チックな思想をお持ちなのか……

 何時の日か疑問に思っていた一つが想像もしない形で解決された。

 対してシャーネはと言うと頬を赤く染め、食い入るようにして見ていた。そんな彼女の腕をつかみ落ち着いた心を持って出口に向かう。

 入り口付近に司祭さんおめでたです! と紙を貼ろうかと考えたのだがそれをやってもただ虚しくなるだけなので教会から出る瞬間には大声で「音漏れてますよっ」と言うことで押さえておいた。これで俺は何も見ていないし、聞いていないぞ。


 なによりも心配しているのはこんな現場を見てしまったことでシャーネにそっちの経験をしてみたいとそんな感情が出てくることが心配なのである。女の考えは良くわからんからなぁ。ある日、ふとした考えでシャーネの寝床を見ていたら赤いシミが…とかだったら次の日からセッ○スメンと言って冷やかすしかなくなる。それはそれで悲しいなぁ。つか、宿屋のほとんどが藁を引いただけの馬小屋チックなものなので証拠隠滅は簡単である。友人談である。


 このまま宿屋を探しても良かったのだが心機一転する為簡単な依頼を受けようと冒険者ギルドに寄った。

 同じお兄さんが良かったのだが探してみる感じ居る気配はなかった。気配で見るとか俺は忍者かよ。ドーモ、ミーアデス。あのお兄さん見た目は良いのでセ○クス休憩かな? 性病にかかっちまえ。


 この時間帯は結構人がいるみたいで受付が相当な行列を作っているだけじゃなく、両サイドにある依頼が貼り付けられている掲示板にも蜜に寄ってくるコバエの如く群がっていた。正直行きたくねぇ。

 俺の行きたくないオーラが出ていたのかシャーネは共鳴するかのように同じようなオーラを被せてきた。お前は人間か。


「結構、人が居るみたいだけどこの中を行くって…そんな苦行はしたくないでござる」


「どうしてござるなのか分からないけど、まぁ、連れてきたのは俺だもんな。この際掲示板って奴で探してみるわ」


「お任せするわ。何か、ちょっと疲れちゃったし」


 苦行に幼馴染みを送り込むのか。まぁ、自主的だけどね?


 気を使ってシャーネを置いて罠に掛かった昆虫達の軍に入っていく。掲示板の上には大きく太い文字で銀、銅と分けて書かれていたので間違えて高難易度の依頼を受けるようなイベントを受けないで済むようだ。はえ? どんな意味があるんだ? 少し悩んだのだがすぐに冒険者になるときに貰った板の色だと判断ついた。いや、説明。

 徐々に老若男女の話の内容が聞こえてくる。


「あ! ちょっと、それ私が選んでいた依頼なんだけど! ねぇ、勝手に取んないでくれない」


「あ? それ外でも言えんのかよ『それぇあたしのぉ獲物なんですぅ』って言えんのかよ。つか、ゴブリンクイーンの集団かよ」


「は? 言っているのはミサトちゃんだけで私達は言ってなくなーい? 酷いんだけどー」


「私がブスって言いたいの?」


「時には言うことで傷付ける時ってあると思うのよねー」


「殺す! いや、生かす! 生きたままオークの群れに投げ込んでやる!」


 キャー、野蛮ーと、向かってくる剣を危なげもなく回避していく。

 何か漫才っぽくなっているのだが目を逸らし、銀と書かれている掲示板を向くと違う意味で混沌としていた。筋肉ゴリゴリのマッチョなダンディや布面積が極小の淫乱女に目が引かれるがそれ以上、遥かに越える逸材が多数見受けられた。ここはカオスか。

 それに比べて見ればこの、ほぼ同年代くらいの男女の集団で、それほど格好にも特徴を求めていない雰囲気は冒険者と言って過言ではなかった。あ、女グループが漫才っている隙に男グループ受注しに行っみたいだ。


 対面がカオス状態で、相対的にこちらが普通に思えてきた現状で隙を見て、これが良いかと依頼の紙を一枚もぎ取ってシャーネのところに向かう。


「えっと、依頼内容は……」


『魔王の部下、六天の直属の部下である“極炎の使徒”の討伐。依頼の難易度、最高級。現在、確認されている現在地は最果ての大地の中心部。注意としてはとにかく、低ランカーは間違っても受注しないように』


 低ランカーの定義とは。心は上級者だからみたいなソウルで語る系なの? 勿論破り捨てておいた。嘘である。しっかり掲示板に戻しておいた。次来る少年少女に地獄を見せてやろう…。






 その後、人が少なくなってきた頃を見計らって残った依頼の中で色々と探し、逃げ出した馬を見付けてきて欲しいと、いった依頼を発見し、受注することに決定した。完全に魔王云々の依頼は人を間引きするためって言うか…やっぱこっち側にあるって事は文字が読めない低ランクの奴等を…って事だよな。意味がわからねぇよ、つか分かりたくねぇよ。と愚痴を垂れていたら何故か提示された最低ラインの馬数に達していた。


「魔法…か」


「えっと、剣士ですもの私を守っても欲しいですわ!」


「舌を引っこ抜くぞ小娘ぇ…」


「ひぃいいぃ」


 心の奥からの叫びに怯えるシャーネだった。だがそれもすぐに元に戻り呪術で呼び出したバカデカイ黒い腕を使って見付け出した馬を丁寧に馬車に詰め込んでいく。馬で馬を積んだ馬車を引くとかどんなダジャレだよ。と、一人で突っ込みを入れるしかやることがない。

 最終段階ではこれ放牧とかっすかね? と考え始めた。

 馬を捕獲、と言うより捕縛な感じの奇妙な黒くてバカデカイ腕がそこらで馬を馬車に詰め込んでいく光景が視界の端でも正面でも見えるこの現実。どんなのを見せ付けられているんだ。


 心の底から改めて魔法が使いたいと願ったミーアであった。


 因みに報酬は2万3000Gだった。馬鹿げてますねこれ。

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