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剣より魔法が似合っているっ!!  作者: 椎木唯
王の種族と職業
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剣より初依頼が似合っているっ!!

 編集日、3月31日

 薬草の見分け方は単純である。食べてみて青臭い苦味ではなく、純粋な渋味を感じる苦味が出てくる草が薬草なのである。


「うえぇ、苦すぎだな…」


「え、本当に食べたの? やば、知能指数獣かよ…」


「…平気で嘘をつくお前の口は人を名乗れない程だよ」


 そんな情報をシャーネから聞いて早速試したのだがそれが正しいやり方ではなく、ただ単に騙されただけであった。普通に考えれば食べる以前に見分ける方法がないと一々食べる手順を入れないといけないからな。万が一食べた草が毒草だったときの絶望感は異常だろう。だが、今だけはそんな絶望感をシャーネに味わわせてやりたかった。





 薬草の採取の依頼を受け、受付で頑張れば成人男性を詰め込める背負えるタイプのかごを受け取り、南門から外に出る。ちなみにだが初めて入った場所は東門だった。特に必要ではない情報だったわ。そして聞いた話だとその先にある場所に因んだ名称があるらしい。これだな必要な情報は。


 最初に、俺達が入った東門はその先の方向に多数の国があることで外交を主に重点的に行う区域になっている。名称とは。そして上に行って北門。これは警備が厳重で行き来しやすい東門とは違い、国王が住む城があるため厳重なのは変わらないが、外から入ることもそして出ることも困難な構造になっている。通称難攻不落の北門である。北門を入れた意味とは。からの時計回りで西門なのだがこれは説明が殆んどない。出た先には殆んど何もなく、東門ほどではないが外国があるのだが小国であるため眼中にない。言ってしまえば西門は東西南北と名付けるために無理矢理門を置かれた場所だ。そして南門。

 南門は外交向きに設計された東門や警備を厳重にしている北門と違い、言うほど外観が良く初めて来た人を圧巻させるような造りには成っておらず北門のような景色から一つ飛び抜け、圧倒的なオーラを放つようなものでもない。ただただ頑丈さだけを意識して造られたものなのだ。

 その理由はただ一つ。南門の先にある森の存在だ。


 春は緑が生い茂り長い眠りから目覚めた動物達がゆっくりと実りの恩恵にあやかりながら生活し、夏場は貯蓄された雨水などがろ過され傾斜を流れ行き人々や動物達を暑さから目を逸らさせ、秋は特有の涼しさと独特な生態系を覗かせ驚かせる。冬はこれまでとは違った銀世界を見せ生き物を魅了する。

 そんな自然を体現した森なのだがこれが冒険者にとっては格好の稼ぎ場所なのだ。


 年がら年中雑草のように生え、時には雑草をも勝った生命力を見せ一面を薬草に変える。森の入り口となる場所にはまだ魔物を倒すに至れない初心者が集まる。薬草などで金を稼ぎ、装備を整え敵に挑んで戦闘の経験を積んで森を進む。その先には自然の力とそれに感化された魔物が住んでいる。代表的なものを上げるならゴブリンやオーク、ドライアドなのだがそれが土足で入ってきた侵入者を排除するために命を狙って襲いかかってくる。

 そんな一種の飽きない遊びは初心者飽き足らず、上級者までおも呑み込んでしまう。


 魔物の素材は金になる。そして冒険の経験を積める。そんな森の存在は別の形で国を支えている。



 歴史上、数えるほどしか襲撃されていない南門なのだが少なくても歴史はある。そんな背景を抱え、城壁として南門は構えている。




 そんな事を頭の中でリピート再生しながら今度は普通にシャーネから教わった薬草の見分け方を使って順調にかごを満たしていく。

 シャーネが薬草を知っていることに驚きだが聞いた話によると俺の母親に教わって近くの森に取りに行った事があるらしい。おーん? そう言えば久し振りに外に出たと思ったら森に駆け出していくシャーネの姿を何度も見た記憶が走馬灯のように浮かんでくる。最初に草を口に含んだときに毒草でも混じってたんじゃないか?

 不安が一瞬で全身を包み込んだ。俺は大慌てでもぎ取った薬草を口に頬張った。涙目で「何やってんのぉ!?」とシャーネに叩けれたりしたのだが我慢してくれ…依頼達成も重要だけどその前の命あっての金なのだ。草食ったら毒草で…て、死因がダサすぎる。

 馬鹿正直に言えるはずもなく、涙目のシャーネを無視して…


「って、お前も毒草か…」


「実演でやった私がバカだった」


 知能指数云々と知能指数低い猿みたいなことを言っていた本人が毒を貰うと言う。まぁ、見た目は野草だもんね。薬草も毒草も。

 増えて、急に減ってその減った分を急いで採取してプラスに変えかごを満タンにした。何事も効率的に、が重要なのだ。口で言うだけだけどな。





 そんなに距離がある訳じゃないので時間が余り掛からずに冒険者ギルドにまで帰った。

 最初に受注した同じお兄さんの受け付けに向かい、よっこいしょと背中に背負っていたかごを下ろす。それを見て困ったような表情を見せたが特に何を言うでもなく、受け取って奥の方へと入っていった。


「これが接客業の弊害よ」


「弊害って…いきなりなんだよ」


「客…まぁ、私達に何かを文句があったとしても“客”の肩書きを持っている状態では何も手出しできないって事」


「何その奴隷みたいな感じ。つか、何でそれを今話した…」


「…ツンデレのデレの部分?」


「デレがデレとして成り立っていない時点。そもそも誰がツンデレなんだよ日頃の行動を見返せよ」


「…もう、ミーアの為に言ってるんじゃないんだからね! これは私の回りを彷徨く不純な感情を抱いた奴等に言っておるのだ」


「せめて口調は最後まで揃えような。な?」


 言い終わったシャーネは顔を軽く横に向ける。

 表情が見えなくなったのだが見せつけるように出ていた耳は真っ赤だった。やり取りの最後に頬が赤くなるのもどうにかしろよ。頬どころじゃなくて顔全体が赤くなってもう、そんな病気としか認識できねぇよ。んで、他人から見たら何か如何わしいことやってるって思われるから出来れば止めて頂きたい。


 漫才を一通りし終わった直後。狙ったかのようにお兄さんが帰ってきた。


「えっと、キロ三百で買取りしていますので…はい、達成報酬と合わせて一万二千ですね」


「あ、どうも」


 勢いをつけて振り回していたら中身だけ吹っ飛んでいってしまいそうな粗悪品の袋に硬貨を詰められ、手渡される。

 直後に思い出したかのように逸らした視線を合わせてきた。


「宿とかって決めてます? 決めてないのでしたら一泊六百でやってる店…僕の実家なんですけどね。少しややこしい道ですがーーって行けば着くと思いますんで…因みに冒険者ギルドの裏の宿屋では一泊千二百円ですね」


「あら、親切にどうも」


 咄嗟に出た言葉が軽くオネェになってしまったのだがこの際どうでも良い。どうでも良いって言うか手にあるこの確かな重みを感じながら生活の水準を上げよう。来て一日も経っていないのだがそんな考えでお兄さんの紹介通りに宿屋を探す。

 右行って左行って…んでこの階段を下って…ああ、ここか。


 必死に言われた事を思い出しながら道を進み、目的の場所へとたどり着いた。言うのは初めてかもう覚えてないがこんな道の先にある宿屋を紹介したあの糞雄は絶対殺す。既に口癖が殺すに成りかけつつある今日この頃。口に出さない限り見た目は好青年。発言も青年で留まるのだ。多分。

 

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