亜紀先生の娘で愛先生の友達
生暖かい風…に大好きなお魚の匂い。
最近、生臭い(笑)男性というものを意識して疲れていた私には心安らぐ。
愛先生のふるさとの島の港に入って最初に感じた思いは、
うん!お魚いっぱい食べれるね!って事。
なんてね。
珠ちゃんと私の肩に白い先生の手が乗って紹介してもらった目の前の女性。
垂れ目で低い鼻、白い肌…身長は160いかないくらい。
女の私が言うのもなんだけど、物凄い美人だし年下の私が言うのも可笑しいけど凄く可愛い。
まあ、そっちの趣味は無いからそれ以上の関心は無いけど、
仮にもお世話になってる先生の知り合いだし、とりあえず、挨拶しようかな。
「 初めまして、御山みけって言います。」
私の後に落ち着いた声で珠ちゃんが続く。
「 中村珠美です。先生にはお世話になってます。」
ひえ、珠ちゃん挨拶ちゃんとできるようになったねぇ…
先生と九鬼さんの最近の教育のおかげだねぇ。
まあ、何気に卒業したら旅館で雇いたいから専務さんの腹黒いのもあるんだよね。
人手不足で若い子欲しいからさ。
私の声に少し考え事をしていたのかはっと気が付いて彼女は慌てて
「 ありがとう、初めまして南 瑞希って言いますの。」
物凄く甘い声…物腰も柔らか…へ?南って?
私が不思議そうに首をかしげると先生が
「 ああ、こいつはさ三谷澤のあの先生の娘だよ。」
「 ああ…え? 」
先生の言葉に私も他のみんなもびっくりした。
確かによく見るとあの化け物先生によく似てる…しかしこんなに大人の人が娘?
何か信じられないわ。
その上、この下に小学生の女の子がいる。
「 瑞希さ…この子たちは亜紀さんの高校の教え子たちなんだ。 」
その言葉に瑞希さんは目を細め私の顔を見ながら訪ねてきた。
「 へええ、母は元気にしてる? 」
「 凄く元気ですよ、それはもう。
この間は旦那様とうちの旅館に来て楽しくやってましたし。」
「 そう…孝之とねえ 」
瑞希さんは少し寂し気な笑いを浮かべて愛先生の方に眼をやる。
先生は軽くそれに微笑み返すだけ…意味ありげだけど。
「 こいつはさ、うちの元の同級生なんだよね。孝之とも仲良かったし。
まあ、いろいろあったけど高校の時は親友だったんだよ。」
込み入った話が苦手だし、私はその言葉には”そうですか”って頷くだけだ。
自分の同級生の男の子が母親と結婚するって結構複雑なんだろうからね。
「 亜紀さんは私のクラスの担任でもあるし、大変よ良くして貰ってます。
私達にも尊敬できるしイイ先生で何でも相談できるし。」
「 そうなの?ちゃんと先生してるんだ。
年取ってから先生になるって夢物語を果たしたんだものちゃんとしてるわ…
私と違ってね。」
瑞希さんはそう言うとほっとしたような笑顔を浮かべた。
しかし、
先生たち(化け物に愛先生)も年齢と容姿のギャップが相当反則だけど
瑞希さんも相当だ…私の姉でも通りそうなほどだわ。
「 凄い先生だからなぁ… 」
後ろで智彦君が小さな声で呟いた。
あんたさ…旅館で見ただけでしょ?
私なんか高校で穴が開くほど見てるもん…
見た目も考え方も若いし、知識だって凄くあるし…まさに化け物だわ。
それを思えば瑞希さんは娘とは言え
言われれば先生と同じ29歳に見えなくもない普通の人だよねぇ。
ま、お母さんが若いのはいいじゃないの。
私なんか会いたくても雲の上なんだしその気になればいつでも会えるんだからさ。
そうこうしているうちに港に着き
私達は人の流れに従って船を出る。
オレンジの光もかなり暗くなり夕闇が迫っているように思える。
先生と瑞希さんが先頭で昔話をして、その後を私達がタラップを降りて待合の建物へ向かう。
海鳥の間抜けな声が近くに聞こえ、
フェリーから車たちがゆるゆると連絡橋を伝って島の待合の駐車場を抜けて
街中へと消えていく。
待合の建物は潮風で痛んだ感じはするけど結構立派。
本土との窓口がこの港だけ。
傍には集荷場やフォークリフトが置いてありフェリーから荷物の積み下ろしを始めだす。
降りた徒歩の乗客の半分は島の人のようで迎えの車に急ぎ、
私達や他の観光客は待合の案内で観光案内を頂いて待合の木製の椅子に座る。
夕闇が迫る薄暗い外に出るにはお迎えが無いとどうしようもない。
私達も暫くすると厄介になる旅館のバスが来るらしいからね。
その時に女性が息せき切って飛び込んでくる。
見覚えがある… さっき漁船で横断幕を広げた女性だった。




