森ノ宮スポーツ店にて その3
なんでこの子の相手俺がしてんだろう…
智彦はちょこまかと水着の吊るしているハンガーラックを掻き分けては
布の面積が狭いものや、
扇情的なデザインのものや、
極楽鳥かよって色彩の物を選んでくる翔子を見ながら思った。
瞳や珠美なら似合いそうだとは思うけど…147のチビにはなぁ。
小学生みたいにまな板だしお尻だって貧弱だし…そういう趣味ねえよ。
まあ、瞳や”みけ”の同級生ってことだし無下には出来ないけど、
なんで僕に水着選んでほしいんだよ?
しかしこの子、性格は良さそうだけど決して美人じゃないし
鼻は低くて目は大きいけど離れてるし…カワウソみたいな感じだよなぁ。
「 これなんかどうかな? 」
翔子が笑顔で7着目に選んできたのはハイネックにショートパンツ。
子供体型だし、ひだもゆったりとしてそれ自体はいいがどうも地味すぎる。
青色ハイネックに白のショートパンツなんて合わせて今時着る子いるんか?
「 えっと、君さ聞くけど…水着の目的は何?
それが分からないと、ただ単に似合ってるか似合ってないかぐらいしか分かんないんだけど。
まあ、
それは君には似合いそうなんだけど…普通?って感じなんだけどね。 」
すると翔子はじっと智彦の顔を見る。
「 智彦君って男前だよね…モテるでしょ 」
いきなりなので、智彦が驚いて何度も咳をした。
「 あ~そういうの分かんないなぁ…普通じゃないの? 」
「 ダメダメ惚けても、智彦君の事は同じ中学から来てる子にリサーチしてるから。
それもあって珠ちゃんにお願いして君を連れ出したんだから 」
「 そうなの? 」
前日の”星の海”でのバイトで”みけ”には散々無視されてはいたけど、
夕暮れで仕事も一段落して旅館の裏手で背伸びして欠伸を休憩をしていたら
作務衣姿の珠美に声をかけられたのだ。
珠美は”星の海”での仕事はないが、従業員価格で買えてとても安いし、
動きやすいし周囲の人と馴染みやすいので好んで従業員用の作務衣を着る。
ただし、
夏の仕様は薄手だし珠美の様に胸が大きいと少し襟元が開き気味になるし
洋服と違って地味だし少し目つきのまだきつい珠美も少し柔らかく見える。
「 休憩? 今日も仕事か頑張るねえ 」
竹の長椅子に柔らかい腰を下ろして両手を少し開いて脚を組んだ珠美は
少し口元を緩めながら智彦にそう話す。
「 …まあね。お金は欲しいし 」
「 そか?他に目的があるんだろう? ”みけ”と一緒に仕事できるからだろ? 」
「 は? 」
「 なんかあったんだろ?あからさまに”みけ”が人を遠ざけるってのは可笑しいからね。
ま、瞳は超鈍感だし気が付いてないだろうけど… 」
「 ひ…瞳は 」
「 なに言ってんだ?幼馴染で誰から見ても西宮のこと好きじゃないか。
関係ないってことはないよ。」
智彦は困惑しながらも珠美の顔をじっと見る。
「 瞳が好きなのは知ってるし、僕もまんざらでもないけど…本命は”みけ”だよ。
可愛いし抜けてるけどしっかりしてるし、料理もうまいし… 」
「 ま、瞳の料理は酷いけど、それとは別に結構はっきり言うなぁ。」
珠美は少し顔を赤らめて笑顔になった。
「 で、なんで無視されてる? 」
「 実は…”みけ”には振られちゃって。 」
「 ま、そんな事だとは思ったけど…智彦君さ一度駄目だったから”みけ”を諦める?
言っとくけど初回のお断りなんて礼儀みたいなもんだよ。
生理的に駄目!とかじゃないと女性って少しは考えるもんだしね 」
「 そうなの? 」
「 そうなの…そうだ、うちの同級生から男を一人連れてきてッて言われてるんだ。
夏に海に行くでしょ、彼女部外者だけど私たちの友達ってことで招待されてね
水着をみんなで買いに行くんだけど付き合ってくれない? 」
「 なんで… 」
「 ”みけ”もちゃんと来るし、後でみんなで食事するんだよ。意味わかる? 」
中村さんの悪魔の様な微笑みに僕は首を縦に振るしかなかった。
「 でね、”みけ”とのことは私も協力してあげるから男性にぐっとくる感じって水着選んで欲しいの。
うちの高校って女性にマジでモテる感じの子いないしそういうの苦手な感じだし
智彦君って幼稚園からバレンタインでチョコ貰ったり
小学校から何度も告白されたって言うじゃない 」
「 いやいや… 」
「 瞳が知らないだけで何人かとは女性とつきあったこともあるんでしょ?…聞いてるの 」
「 つきあうってのはそりゃあ、どんな人かなって感じでデートはしたことあるけどさぁ 」
「 それで充分よ男の人って良く知らないからどんなのが好きか分かんないもの。
水着選びには私の将来掛かってるし真剣なんだから 」
「 将来?水着にか? 」
16歳の恋愛で頭を悩ませている自分に、その将来かけてる水着選ばせるのか?




