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2本の尾  作者: ジャニス・ミカ・ビートフェルト
第一部 ”みけ”
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森ノ宮スポーツ店にて その2

 店長さんがお話ししているのを横に見ながらも

大人同士の話だし、私は地元だしと気を使ってくれて

木田ちゃんたちは階段を上がって二階の水着コーナーへと上がっていった。


珠ちゃんがチラチラとこちらに視線を向けてくる智彦君の背中をぶっきらぼうに押しながら後をついて行き、私は一度も振り向かずに店長の前を離れなかった。

もう…いい加減にしてほしいわ。


「 なんだよ…くーちゃん今日は引率の先生か? 」


「 は?何言ってん。今日は会社の経費で”みけ”たちの水着を買いに来たんだわ 」


 片手で私の頭を撫で 

 もう片方の手で”星の海”と書いた小さなビジネスバックを目の前で振った。


「 こんな平日に?しかも経費?落ちるんかいなそれで領収書が 」


「 平日だからだって。

  ”星の海”だって休日前なんかは忙しいが平日は暇だよ。


  今は海外から”旬の出戻り”の鮎目当てにチラホラって感じぐらいだもん 」


「 外人さんが鮎なんて分かるんか? 」


「 うちの持ってる漁場で道具貸すし家族連れで来るよ…ドイツ人が多いけど 」


「 へえ…ってことはベスさんのとこが一枚噛んでるんか 」


「 まあそういう事だね…領収書の方はさ、ちょっと細工してもらうけど 」


「 細工?税務署って意外と厳しいけど 」


 店長が少し渋い顔をしたけど九鬼さんは気にも留めづに殺し文句を並べる。


「 ついでに日焼け止めからビーチパラソルまで買ってやってもいいんだが…

  向こうにもあるんだしぃ…どうしようかなぁ 」


「 え… 」


「 うちで貸し出してる漁の道具は専務のお古で揃えてるんだけど…

  そろそろ人も増えてきたことだし新品で揃えたいんだよね…10人分ぐらい 」


「 えっと…其れなりに揃えると一人20万程度でも… 」


 店長の顔が少し赤くなってくる…


「 まあ、ネットで揃えてもいいんだけど地元にも還元したいしなぁ… 」


「 あ…ああ、わ、わるっかった。ごめんごめん何でもするわこの際。

  水着や遊び道具ぐらい総額からの割引ってことで何とでもなるし 」


「 そうそう、それでいいの。ところで舞は? 」


舞さんって言うには店長の奥さんね…


「 上で、接客中だよ。多分あの子たちの相手もするだろうし 」


「 そっか…まあ、おばさんの水着は後で一緒にゆっくり見るとして… 」


えっと…50過ぎの九鬼さんが水着買うの?まあ自由だけど。

ってことは、間違いなく専務さんも来るんだろうねえ旅館も忙しいけど一日ぐらいは。

でもさぁ…若女将はまだ30代前半だよ、体で勝ち目なんかないって思うけど。


そんな失礼なことを思っていると九鬼さんが私に


「 ”みけ”もさ、みんなと水着選びに行きなさいよ。

  拓郎と仕事の話してから行くから 」


と言った。

金の話になるのだろうし、同級生なら私はお邪魔だろうしと

横で計算機を取り出してきた店長に軽く挨拶をして、二階へと向かって歩き出す。

背中に


「 は?こんな金額で全部やれと… 」


「 いいじゃないの、来年もある事なんだしさ 」


「 本当かよ… 」


って声を聴きながら。



 二階に上がる階段の壁には夏らしくありきたりな砂浜と青い海なんかが映った写真が飾られている…

 でもさ、窓の外には鬱蒼とした山また山にしがみついてる住宅団地達という現実がとても可笑しいけどね。


 階段を上がりきると、デッキチェアーが並んでおいてあり、その間にはガラスのテーブル

そこに瞳と珠ちゃんが寝そべってジュースを飲んでいた。

二人の足元には砂浜を模したビーズが敷き詰められた箱があるので間違いなく飾りの物なのに

誰からも文句が飛んできてはいなかった。

 少し奥の方で木田ちゃんの笑い声とぼそぼそと話す智彦君の声が聞こえ、

他に知らない声が混じって、少しハスキーな舞さんの声が響いていた。

デッキチェアーの陰で、奥の方は見えないがそんなに人はいないようだった。


「 なんで二人がここにいるの? 一緒に選べばいいじゃん 」


「 まあ、木田ちゃんが気合入れててさぁ智彦連れて先に選びたいんだと…

  向こうでうちらをおどろかしたいらしいわ…どんな水着買うんだよって思ったけど 」


「 いいの?智彦君と二人っきりで 」


「 なに言ってんのよ、木田ちゃんは”みけ”のお兄さん狙いなんだし

  木田ちゃんより珠美のほうが怖いからさ私の横に座らせているの…これで安全だし 」


「 はああ? 」


「 智彦って移り気なんだもん 」


「 そ…それを言うなら”みけ”だって 」


「 それは無いわ… 」


 と、珠ちゃんと私の胸を見比べる。


「 ? 」


「 珠美は結構大きいけど、あんたや木田ちゃんは圏外だもん 」


一瞬、頭に血が上りかかったがそんな智彦君から告白された私の方は

事実は嫌だけど、瞳には少し優越感がある。


「 まあ、よろしくやってよ…邪魔なんかしないから 」


しかし、こいつ剛ちゃんも好きなんだよね…自分では気づいていないけど

いや、忘れてんだけど。




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