森ノ宮スポーツ店にて その1
私の住んでる住宅団地にの近くには気の利いた量販店やデパートは無いが、
商店街には三谷澤高校御用達のスポーツ店がある。
指定水着や各部活のユニフォームや道着など少なくない量を扱っているので小さくはない。
ここら辺はどこの学校でもそうだろうけど、
どこでも買えないようにしないと競争原理が働いて住んでるところで不公平が生じるからだけど
多分…
水面下ではお金のやり取りもあるだろうし、単純に業者が一つなら管理しやすいし要望も出しやすい。
學校とお互いにウィンウィンの関係を維持するためなんだろうと思う。
私は馬鹿だけど、流石に旅館で長い事バイトしてるんで商売の事は多少は理解できる。
うちだって業者さんは指定だし競争も無いからね。
もっとも、うちの場合は地元の宿泊者が多いんで県外の業者なんか無視なんで当たり前なんだけどさ…
それでも海外からでもお客来るから不思議なんだよねえ。
まあ、そんな話はともかく夏のきつい日差しの中、みんなで水着を買いに来たんだ。
”森ノ宮スポーツ”って捻りの無い楷書の下にちょっとおしゃれな装飾筆記体のローマ字並んで
よせばいいのにブロック体の電話番号にメールアドレス(普通はWEBなのにね)が書かれたアクリル板の看板。
物凄く田舎らしい趣だよね。
まあ、でも私立の学校指定でバカ高い品物卸してるから遠く離れた県庁の駅前の店にも負けない店構えで
大きなウインドウに間口が広くこじゃれたエントランスが出迎えてくれた。
「 おはよう! 」
ちゃんとお迎えのチャイムが鳴ってるのに九鬼さんの大きな声が広い店内に木霊する。
11時近いんでどうかと思うし少し恥ずかしいけど、専務さんから貰った軍資金を預かってる人だから
文句も言わず後について行く。
珠ちゃんは行儀悪く頭の後ろに手を組んでキョロキョロと店内を見渡して、
木田ちゃんは短い脚をちょこちょこ動かして、瞳はジーンズなんで大股で店に入っていく。
その後に今日は私と目も合わせない智彦君が付いてくる。
女の私たちが着るんだし、特に私を女と意識してる智彦君は付いて来て欲しくないんだけど、
男の眼でどうかってのを何故か木田ちゃんは気にしてたし、瞳は…多分、選ぶの手伝ってほしいからだろうけど
二人して智彦君を引きずり出したからしょうがないわ。
それに、どうせ南の島(日本だよ)ではばっちりみられるんだし諦めもつくけどさ。
流石に夏休みとはいえ平日の昼間なんでお客はチラホラ…2人しかいない。
野球のバットかなんかを手に取っていたおじさんがこちらを向いて手を振ってきた。
「 おはよう。くーちゃん久しぶりやん 」
と満面の笑みをしながら…しかも凄く馴れ馴れしそう…
「 くーちゃん? 」
驚いて九鬼さんお顔を見る。
「 九鬼だからく~ちゃんだよ。まったく同級生って言ったってちょっと馴れ馴れしいわ 」
ど…同級生?
私はその同級生の風貌と九鬼さんを何度も比較しながら見た。
方や…痩せてるし背はそこそこ高いけど色黒の顔に深い皺で薄くは無いけど白髪が8割程度あるおじさんで
九鬼さんのほうは少しは小じわはあるけど殆ど皺はないし肌も若々しいし…本当に同い年?って感じなんで…
「 まあ、いいじゃんか…この町で同級生って僕とくーちゃんだけなんだし。
今日は何だい? 」
言いながら傍の私を見る。
「 ”みけ”が一緒ってことは…”星の海”がらみってことかな? 」
「 えっと…なんで呼び捨てかな? 」
森ノ宮のおじさんの事はよく知っているし、この間の旅行にもちゃんと来てはいた。
基本は紳士なんであのバカ騒ぎの中でもリンドさんなんかと隅っこの方で飲んでたけど。
「 前から呼び捨てだし梶の馬鹿だって呼び捨てだろ? 昔から見てるし
子供のいない僕から見れば娘みたいに思えるし…ちゃん付けでもしてほしい? 」
「 ちゃん付け…は遠慮します。なんか気持ち悪 」
「 どうした急に 」
「 いえ…もう高校生だし…って感じなんで 」
本当は智彦君の事や剛ちゃんの眼も最近普通じゃないんでちょっと男に呼び捨てにされるのが
少し怖いんだ。
なんだか、遠慮なく自分の中に入って来られるような気がして。




