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2本の尾  作者: ジャニス・ミカ・ビートフェルト
第一部 ”みけ”
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”みけ”逃亡す

  私は、ロビーのソファーの上で目を覚ました。

 ”限界知らず”で着ていたドレスのままでブランケットが掛かっていた。


 どうやら、寝ちゃったみたいだ…

 次に智彦君が心配そうに顔を覗き込んでいたの見たので、慌てて軽く押しのける。

 意外そうな顔をしたけど、乙女の寝顔を覗くオスには興味ないもん。


「 ありがとう、もう大丈夫よ 」


 興味は無いけどここまで運んできて寝かしてくれたみたいだし

 口の周りにも変な違和感ないし、必要以上には体を触ってないのは匂いで分かるから

 紳士的な智彦君にはお礼は言っておかないといけないなぁと思った。


「 すげーなー、御山はあんだけ寝てたのに寝ぼけないんだなぁ… 」


 猫に限らず動物全体は空腹になるのを抑えるため本能的に眠る時間が長いけど

 その睡眠は結構浅いので目が覚めると一気に体が覚醒する。

 寝ぼけ眼で捕食者に齧り付かれたら洒落にならないからだけどね。

 普段はちょっとした物音でも起きる私だけど、

 本体の”みけ”がよっぽど疲れてたんだろうなぁ…

 人生最高の性欲を持て余してる男子高校生のそばで寝てるんだもの凄く怖いわ。


「 変なことしてないわよねぇ 」


 私は、そんなことは無いとは思うが一応念のためきつい目で智彦君を見る。


「 う… 」


 ( なんだよ…何怖い顔で俺を見る? )


「 してるかよ…そんな事したら瞳に殺されるわ 」


 ( しかし、眼は大きくて相変わらず猫みたいに綺麗だなぁ…やっぱ )


 少し茶色い感じが多いが大きくて邪念を感じさせないそれは、

 バイト先で初めて”みけ”を見たときから心を握りしめている瞳だった。


 智彦は、”みけ”に一目ぼれしていたのだった。


「 だわね… 」


 私は、瞳の喧嘩の強さは知ってる。

 新入学の時に、まだ粋がっていた畜産課の馬鹿に校庭で言い寄られて

 相手の顔を平手でたたいて昏倒させたの見たことあるもん。


 言っちゃあなんだけど、畜産課に入るようなヤンキーと

 温室育ちの智彦君じゃあ体格的にも差がありすぎる。

 それに、まあ…可愛さ余って憎さ百倍だろうからなあ…


 私は、なぜかヘッドロックされて瞳に泣いて謝る智彦君をちらっとイメージした。


「 まあ、将来のお嫁さんが近くにいるんだからそんな事は無いだろうけど 」


「 は?将来の嫁って誰だよ? 」


 真顔で聞かれて、私が驚いた。


「 え?瞳じゃないの? 」


「 なんで?隣に住んでるただの幼馴染となぜ結婚?漫画かよ…無いわ 」


「 でも、美人だしスタイルもいいしよくモテるでしょ?中学だって結構人気だったでしょ 」


 他の中学でいじめにシカトでド底辺であえいでいた”みけ”でも、瞳のことは噂で知っていた。

 曰く、完璧な女子で自分の中学でも振られた男はかなりいるぐらいだったし…


「 美人?そかあ…そういわれればそう思うけどね 」


「 三谷澤に行ってるようなって言うんなら…軽蔑するよ 」


 私がふとソファーに手を着きながら溜息交じりに呟いた。


「 なわけあるか…僕が今好きな娘もそこに通ってるんだし 」


「 へええ 」


 意外な答えだった。

 16歳ぐらいになれば好きな女の子の一人や二人いるだろうけど…よりによってうちの高校か

 あ、でも…


「 タマちゃんは駄目だからね…好きな男の子いるし 」


 ここのところ勉強に来ているから、瞳より更にキツイけど美人なタマちゃんならあるか…


「 あのさ、いくら綺麗でも”狂乱”の相手には僕じゃあ役不足だし考えもしてないよ。

  あ~そうだなぁ…匂わせてなんて通用しないか御山には… 」


 は?何言ってんの


「 私が何… 」


 智彦君が急に正座したかと思うと私の方をまじまじと見てきた。

 え?

 なんか匂いが変わってくる…何かあると生き物って独特にな匂いが出るもんだけど

 この匂いは、野良猫だった時に嗅いだことのある匂いだ。


 いや、それ…それだけはやめてええええ!


「 あ~汗かいた…気持ち悪いからお風呂入ってくるね 」


 私はそれだけ言うと跳ね起きて、裸足でその場から逃げ出した。



 ”みけ ”は猫の時のように智彦が嫌いだから逃げだしたのではなくて

 せっかく友達になった瞳と

 こんなことで別れたくもないし、嫌われたくもなかった事だけだった。


( まったく、高校の馬鹿達と変わらないなんて…見損なったわ )


 同時に智彦が発情期の匂いと同じ匂いが微かにしたことに少なからず失望した。

 本能なんだろうけど、

 付き合ってもいないし、私のこともよく知らないのにそんな風に思われていたのが

 少し悲しかったのだった。

 


 なんだよあれ…


 智彦は、四つん這いになって猫のようなしなやかさで一気に走っていく”みけ”を

 呆然として眺めた。

 ドレスがはだけて飛びあがるたびにパンツが後方からはよく見えた…


「 … 」


 智彦はそんな”みけ”の走っていく姿に少し色っぽいものを感じたが、

 そんなに自分を避けたいのかと少し落ち込んでしまった。





 


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