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2本の尾  作者: ジャニス・ミカ・ビートフェルト
第一部 ”みけ”
76/100

他人の恋愛は見ている分には面白い

  「 趣味悪いですよぉ、覗きなんて 」


  瞳は、小山内たちが居るウッドデッキがよく見える少し離れた客室で

 窓い張り付くような勢いで眺めている九鬼に小声で訴えた。


「 なら、帰りゃあいいでしょ?別にいてくれって言ったわけじゃ無し。

  それに、そんな小さな声で誤魔化さなくても二重サッシで外には聞こえないよ。

  まあ、あっちの声は筒抜けだけどさ 」


「 帰りゃあってそう言うわけにいきませんよおって? 筒抜けって何です? 」


 ( どう見ても10メートルは離れているし、

  さっきも言った通りの二重サッシだからこっちの声が聞こえる訳ないけどさ、

  という事は向こうの声だって聞こえ無いじゃん )


 愛たちに悟られないように、部屋の灯りを全て落とした室内で瞳は頭を傾げた。


「 これこれ…画面は消してあるけど、そこのパソコンで盗聴してるの 」


 九鬼は窓の外の星の光で青く光る顔のまま

 ワイヤレスのスピーカの小さな灯りと、画面が消えているパソコンを指差した。

 よく見ると電源の赤いボタンはついている。


「 と…盗聴って 」


「 気になるからなぁ、一応、剛一郎君の為だよ。

  愛の奴はさ、見境なくなるとあの怪力だろう?

  酒も少しは残ってるし、押し倒されたら間違いも何も凄いことになるかもしれないし 」


 ( 真っ暗で九鬼さんの顔は見えないけど、多分興味津々だろうなぁ

   なにせ、自分には殆ど縁のない事だもん )

 

 独身街道まっしぐらの九鬼でも恋愛はあるにはあったが、

 流石に50も過ぎ独身だと高校生の眼は厳しかった。


「 間違いあったらって、愛さんはそんな人じゃあないですよ。

  ちゃんと両方に気持ちが無ければそんな気には…ならないと信じてます。

  だ、誰かとは違いますよ 」


「 は?誰かって誰なの? 」


 ( ああ…めんどくさいなぁ…九鬼さんの事じゃないですって、

   そんな勇気や行動力あったら、

   その器量でいまだ独身、恋人無しなんて事になってないでしょ。)


「 ジャニスさんや、町内会のおばさん達っていう意味ですよ。他に誰がいます? 」

 

 実際に”限界知らず”での狂宴きょうえんを見ているし、

 家庭内でも両親が不倫を謳歌して家庭崩壊しているので

 大人なんてそんなものという醒めた物言いだった。


「 そっか、そうだよね…じゃあ辞めるかい?盗聴 」


「 いえ、そこは純粋に興味ありますから 」


 九鬼の提案を笑顔で瞳は否定した。

 バツイチとはいえ今は独身の小山内 愛が誰と付き合おうとそれは自由だし


「 それに、剛ちゃんが女の人に興味持つってのはいいんじゃないですか?

  女みたいな顔してるけど男の子だもん 」


 実際、男に言い寄られて助けた身としては、

 これで少しは男の子らしくなるか持って期待はある。


 ましてや小山内 愛の様に少し男性的でさっぱりして歳も上なら丁度いいとも思っていた。


「 まあ…ああいうタイプはお姉さんもいるから愛みたいなのがいいかもなぁ…

  それはそれとして、音声拾うけどいいかな瞳 」


 九鬼がキーボードを操作しつつ瞳に同意を求めた。

 一応、了解も無く犯罪の証拠でもない盗聴は軽犯罪ではあるので共犯者として

 瞳を引きずりこむ算段の為だったが、


 瞳はニヤニヤ笑いながら九鬼の目の前にOKサインをかざした。


「 それなら…っと 」


 リターンキーを押すと外の虫の声などが微かに入ってきて続いて


 …”うちに興味があるんか? なんで? 一回りも上のおばさんなのに?

  ほれに、旦那もおったし中古だし…何がどう間違ったら興味あるん? ”


 とスピーカーからあまり大きくない声が流れてきた。


 今まさに目の前のウッドデッキの二人の会話が入り始めたのだ。


 彼氏いない歴どころか経験さえ殆どない行かなかった50代娘と、

 彼氏の気は友達の”みけ”に向いていて、ただの幼馴染って立場の16の娘は

 息を殺してスピーカーに耳を澄ましていた。




 一方、そうとも知らず星の海の下で、呑気に珠美は露天風呂の湯船に浸かり


 「 は~極楽極楽~~ 」と大きく足を開いて首を回していた。


 想い人の剛一郎が、自分の勉強の先生とそんなことになっているとは露程も知らずに…


 

 


 







 


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