星が綺麗ですよね
なんでここに剛一郎君がいるの?
この旅館は星空が売りの一つなので、
ウッドデッキの周りは非常に暗い…
特別室からの光も通路を屈折させて扉もあるので直接見えないし、
大きな窓もこの時間は電動のカーテンで確りと閉まるという徹底ぶりで、
安全確保のために足元に間接照明があるだけだ。
それでも、暗がりに慣れた私の目は彼をしっかり認識できたし、
その華のある笑顔もちゃんと分かった。
更には静かな夜の闇は彼の若々しい匂いをしっかりと感じさせてくれた。
「 こんばんわ。星が綺麗ですよね 」
甘い少し高めの声…
お…惜しいなぁ月じゃないのか、まあ、月なんか出てないけど。
高校生相手にバカな考えが一瞬浮かんだ。
そして…急に心臓が激しく動き出し
頬が赤くなっていくのを感じてすごく恥ずかしい気持ちになっていく。
はっと我に返ると浴衣が…結構開けていたので急いで襟や裾を治す。
気の利いたことでも言おうと思ったけど、普通な返事しかできなかった。
「 ああ、こ…こんばんわ。どうしたの? 九鬼の姉御は? 」
「 え?来ませんよ九鬼さんは。
仕事がまだあるからってが、小山内さんの相手してほしいいうんで 」
は?何言ってんだよ姉御…
「 今日は、僕ら姉妹もこちらに泊まるし別にいいですよって言ったら、
これを渡されて 」
顔ばかりに意識がいってたんで気が付かなかったけど
彼の手には氷の入ったバケツを下げていた。
中にはワインボトルとグラスが微かな輝きを帯びていた。
「 へえ、剛一郎君ってまだ未成年でしょ? 」
「 まあ、嗜む程度には飲めますよ お姉ちゃんも見てないし… 」
「 へえ、不良だね。ってうちが言えた義理はないか 」
漁業と漁師旅館が主な財源の田舎の娘が未成年までお酒飲まないなってのは無い。
うちなんか中学で5合ぐらい日本酒飲めたし…
お酒と不良行為はイコールじゃないから別にかまわないと思う。
タバコはいかんが。
「 横に失礼しますね 」
彼は微笑みながら私の隣にゆっくりと座ってきた。
心臓が破裂しそうになる…
ただし、彼にとってはお姉さんより年上のおばちゃんだから意識は無いだろうなぁ…
「 んで、何話す? 」
赤い顔を悟られたくなくて、再び夜空の星を見上げる。
勿論、どれがどの星かもよく分からないが心は落ち着く。
「 さあ… 」
ノープランかよ…って何を話せばいいんだよ?
「 でも、そうだ…小山内さんの事、ちょっと興味があります。
この町の人じゃなくて、どっかの離島生まれですよね。
僕、山の子だから海の方の人って知合いいなくて興味があります。 」
はあ、子供かよ…こんな美人が横にいてそんな話?
まあいいや、そのぐらいなら私も付き合えるから…でも、なんでこの子が来たの?
九鬼の姉御の考えてることよく分からんわ…年甲斐もなく私この子好きだけどさぁ
「 それに、南先生がご主人と出会った話も聞きたいんで 」
ふ~ん、そこか…興味ある年頃だもんね…
好きな先生でもいるのかな?
あんた、みけのことが好きでしょ?瞳もタマも好きでしょ?参考にならんがな…
同級生なんか彼女に比べたらヒヨコみたいなもんだわよ。
「 よしよし、孝之の話ならよく知ってるから話してやろうかな 」
うちは胡坐をかいて向きなおした。
孝之は幼馴染で何でもよく知ってる…初恋の告白もうちやったし。
「 小学校の頃とかから話とかしよか? 」
うちは、なんだか昔を思い出して幸せな気分になった。
「 ああそれと…小山内さんの話もね。
さっき、瞳ちゃんにも聞きましたけど、なんであの人振ったんですか? 」
心臓に金串が刺さるような気がした。
「 そんな話聞いてどうする… 」
「 え、興味あるって言ったでしょ小山内さんの事 」
思わせぶりな笑顔が私に向けられた。
「 僕が、好きですって告白したらどう返事するかなぁって興味があるんですよ 」
うちは揶揄われてるような気がしたが、彼の目は笑ってなかった。




