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2本の尾  作者: ジャニス・ミカ・ビートフェルト
第一部 ”みけ”
64/100

”限界知らず”へようこそ

  午後8時50分…先生が仕掛けた”限界知らず”の時計が鳴ると、

 暫く、渋い叔父様の神さんに任せていた店の中に、

 すっかりめかし込んだ先生が大股に歩いて出て来る…


 ミニのヒョウ柄ワンピースに背中はシースルーの蝶をあしらったレースバック

 ジッパー付きVネックで、ジッパーのアクセサリーが六芒星を模った18金

 短いスカートに入ったシャーリングに体の線が浮かび上がるストレッチ…


 ザ!水商売って感じの服装は、

 いつもは、原色のTシャツに薄手の上着羽織って、下手すりゃあジーンズって感じの

 仕事着と違って気合入りまくり。

 

 「 今日は、2週間分は稼がせてもらうからなあ…親父どもをいい思いさせないといかんし。

   どう?”みけ”珠、瞳…似合ってるか? 」


 「 せ…先生。続けて言われると猫でも団体で呼ぶように感じるんやけど… 」


 「 そうか?16の子供なんてうちから見りゃあ猫と変わらんよ… 」


 確かに、流石に29歳の先生の体は大人っぽい…

 身長は156センチで小さいけど、出るとこ出てへっこんでるとこへっこんでる。

 ミニだし、七分袖でぴっちりして艶めかしい感じだ。


 「 うん、先生似合ってる、似合ってる 」


  天然で、思ったことを素直に口にする”みけ”の言葉に、先生がにやりと笑う。


 「 でもさ、小山内さん…そこまで決めてたら…普通はハイヒールでしょうに。

   なんで、低めの黒いパンプス?しかも…猫耳付って 」


 瞳が怪訝そうに愛の足元を見ながら呟く。


 「 ハイヒールは甲が痛い。猫耳ってのはただ好きなだけやわな。

   あんまきっちり決めると、歩くのがきついし…スニーカじゃ問題外やろ?

   その点、こういう遊びのパンプスってフリーサイズで楽だし、

   黒けりゃあ、薄暗い店の中じゃあ分かんないからや 」


  しかし、お尻の形も胸の形も綺麗…29歳って体が崩れ出す頃だけど高校生みたいに

 かっちりして…それでいて柔らかそうだわ。

 ということで…先生の好意で低料金で飲んでる


( きっちり貰ってるって先生は言ってたけど、神さんに聞くと3割引きらしいし

  先生が飲んでるお酒は、勘定に入れない事もあるそうだから、

  大分、お優しいんだよね…口は悪いんだけどさ )


 牢名主や、仙人、ゴク潰しには目の毒だし…実際、鼻の下延びてるのがきもい。

 ちゃんとしたお客さん相手の勝負衣装の先生はもったいないし…準備の邪魔だわ


 「 ほら、帰った帰った…飲みかけの酒がもったいないとかツマミがとか

  いうんだったら、そのままねぐらに持ってていいからさ…

  

  あ、でもちゃんとカウンター拭いてけよな 」


 あたいが言う前に先生の方が可哀想なお客さんに注文付けた。

 まあ、とてもお客さん相手に言う口調だは無いけど、凄く優しい感じがする。

 それに、飲みかけの酒もツマミもさっき伝票に記入して無かったな…


 「 あ、悪いね! 」 「 ゴメンゴメン…つい根が生えて 」 「 洗って返すから 」


 まるで子供の様な返事をしながら、いいオジサンたちがお店を軽やかに出ていく。


 「 まあ、暇なら明日も相手してやるからな 」


 先生が、腰に手を当てて笑いながらオジサンたちを見送った。


 しかし、家にも帰らんと仕事もせんと、風呂入って部屋でゴロゴロ

 上げ膳下げ膳、炊事洗濯掃除一切しないで生きていけるってのは、一見羨ましい感じだけど

 先生にコロコロなおじさん達の寂しそうな後姿を見ると

 とんでもない重い何かがあるのかなって…



 「 ほ~い 」


 152センチのギーちゃんが、おじさん達と入れ違いにスキップしながら店に入って来る。

 浴衣の下の方が少し開けて、丹前も少し乱れているようだけど何も気にしない感じ…


 「 あんたさ~、女なんだから…少しは気を使えよ 」


 先生が、呆れてギーちゃんを諭そうとすると


 「 な、なんやその…いやらしい恰好。あかんあかん、あんたには似合わんて…

   ほら、ジーンズにポロシャツって感じでさ、

   客の酒横取りして大騒ぎしたるイメージやんか自分… 」


 ゴキ! 言葉にすると大した感じではないが、現実にそんな音がするほど叩くなど

 物凄い腕の力とキツイ握力が無いと成立しない。

 殆ど、殺すような勢いのパンチの振り下ろしである。


 「 あったー、頭が頭がぁ… 」


 と、涙こそ目尻に浮かんではいるが普通なら頭蓋骨が骨折してもおかしくないのに

 少し床で転げまわっただけで直ぐに立ち上がるギーちゃんもおかしい。

 しかし、本日3回目のパンチ…たんこぶが三段?


 「 ああ、この馬鹿が…ただの人間の様に思ってからに…特別製じゃん愛って。

   ジャニスが、悪魔降ろししたんでそりゃあもう… 」


 悪魔降ろし?あたいが首を傾げようとするのを見て清美さんが慌てて口を手で隠した。


 「 馬鹿やん、気分良く酒飲みに来て、アホなこと言って頭抱えてのたうち回ってさぁ

   しかし、腹が減ったなぁ…晩飯晩飯っと…愛ちゃんお願いね 」


 先生よりいくつか下に見えるけど、リンドさんが先生をちゃん付けするの?


 「 いや、あんたら…さっき宴会場で食べたんじゃないの? 」


 「 は?梶の馬鹿がショボい料理頼みやがったんであんまり食べてないんだよ

   全く…刺身に蒸し物、焼き物に揚げ物…に鍋と飯と汁しか食べれなかったわ 」


 「 はあ 」


 あたいは呆然とその言葉を聞いて呆れた。

 それって殆どじゃん…口取りにデザートと煮物ぐらいでしょ?食べてないの 


  リンドさんが大きなソファーにギーちゃんをつまんで放り投げ

 清美さんとリンドさんが、ギーちゃんを端の方へと追いやって胡坐を組んで座った。


 「 ちょっと腹にたまるものが欲しいなぁ…もう、腹が減って腹が減って 」


 スリムなお腹を摩りながら清美さんが辛そうに先生を見る。


 「 飯飯って…お前なぁ、ここは飲み屋なんやけど。…まあ、いいか  」


 先生が、神さんに目配せすると神さんがワゴンを押しながらカウンターから出て来る。


 「 準備してますよ…愛ちゃんの方から聞いてますから 」


 カウンターの上には、大皿のオードブルに2人前はあろうかというう大きな牛肉弁当が4つ


 「 お水じゃあ…失礼でしょうし 」


 3ℓのビールピッチャーにジョッキが4つを神はテーブルの上に並べる。



  うええ、どんだけ食うんだよ…と私の胸が少しムカムカしたが

 次の瞬間には、もっと胸がムカムカした。


    

 「 あら、瞳ちゃん…元気してた?お久しぶりよね…彼氏、借りてますから 」


 丹前を羽織らないで、

 その分の熱量を智彦からいただこうと抱き着いている初老のおばさんが目に入った。


 「 丁度、女性陣も終わって…そこで会ってね 」


 いやあ、旦那より悪いわこの人。


 梶 泉 54歳 勘弁して!確か、お子さん今年で33歳でしたでしょ?

 

 「 タ…助けて 」


 智彦の悲痛な訴える様な目をわざと無視する…考えてみれば、あの四人に比べればマシだし

 フリーで”みけ”にでもフラフラいかれたら私は自分を抑えていられなくなっちゃう。



 「 んっじゃ、竹ちゃんと梅ちゃんと松ちゃんでいい?

   お互い、細かい事しら無い方が楽しく遊べますしね 」


 ひらひらと…風もないのに浴衣が微妙に開けながら揺れて

 大の男三人の背中から抱き付いて、ニコニコ笑いながらナディアさんが入って来た。


 しかし、この人が智彦に憑かなくてよかった…結構タイプだもん智彦の…


 その後も何人か入って来て、暫くすると

 ノシノシ…と音を立てながら、あまり天井の高くない店の中に重々しい重量感が伝わって来る…


 空母の様なスリッパ…を履いた186センチのジャニスさんが


 後ろに南先生たちを伴って入って来た。


 「 タ…孝之? 」


 私の後ろで、びっくりした様な声が聞こえた。

 何事かと振り向くと、大きく目を見開いて南先生たちを見ている小山内さんが立っていた。


 


 

   









 




 

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