陽が高いってなんだよ?
旧館の特別室の扉の前に立ち…賑やかな女性たちの声を聞く。
若くて魅力的な感じの声だけど…酒の匂いが物凄い。
「 う…凄い酒の匂い… 」
僕の足が少し下がろうとするが、お構いなしに背中から柔らかい体が押してくる。
「 大丈夫だって、慣れますわよ 」
身長が違いすぎて僕の頭にジャニスさんの胸が当たってるんだけど
ジャニスさんはその上、肩に左手を覆いかぶせて部屋のドアを開ける。
むわっと…酒の匂いが更に強くなって、煙草の煙と一緒に僕に叩きつけて来る。
ゲホゲホっと咳き込んでくるわ、鼻はむずがゆくなるわ、目はシボシボする。
「 大丈夫、慣れますわ 」
ニヤニヤと笑いながら、白磁のようにすべすべの頬を寄せて来るけど
慣れる訳無いわって思う。
「 こんにちわ、お久しぶりですわね 」
ジャニスさんはそう言いながら、最後の襖を開けて部屋でくつろいでいる女性たちに挨拶した。
来てから一時間もしないというのに、
全員が浴衣姿で胸元は開いているわ、パンツは丸見えで胡坐してるわ、
一番色っぽいナディアさんなんか肩ははだけて…ブラもしていない。
そして、酒やたばこをくわえたままその場で凍りついたように動かなくなった。
で、全員がびっくりしたかのように目をこちらに向けて見開いてくる。
「 な…なんや、ジャ…ジャニス…うちらに何の用事や…ですかね? 」
しどろもどろしながらリーダーのギーディアムさんがジャニスさんにそう返す。
ちょっとおどおどしている風に見える。
「 なによ、やるっていうの?勘弁してよ… 」
何をやるんだ?って気にはなるけど、リンドさんが急に立ち上がって身構える。
なんか、柔道か空手の試合開始みたいに…
ま、帯が半分ほどけて黒いブラとパンツが丸見えなんで緊張感は無いけど、
凄く立派な胸と綺麗な長い脚に恥ずかしくなって僕は視線を下に落とした…
「 お楽しみのところですけど…ちょっとお願いがありましてね 」
ジャニスさんは呆れたように笑いながら話を続ける…
「 は?うちら今日は折角の休日なんで仕事なんかしたくないし、
コプートスのお願いってのはさ…余計無理!
それに、
ここじゃあ、お互いそう言うのしないで楽しむのが約束じゃんか? 」
ガラの悪い清美さんがジャニスさんに絡むようにそう言うが、
酒のせいなのか天然なのか、
ぼ~とした目つきで凄く色っぽいナディアさんが僕の方に気がついた。
「 あら、可愛い子連れてるわねぇ…僕いくつ? 」
その声に初めて僕の存在に全員が気がついた様だった…
「 ほお、なんやこの子…あんたの子供か? 」
ギーディアムさんは失礼なことをまだ若いジャニスさんに尋ねる…
ちょ…痛いんすけど
ジャニスさんの指が肩に食い込んで痛い…見上げるとかなり怒っているような
「 アホですか!経験も無いのに子供が出き… 」
と、信じられない言葉が出てびっくりした…
そりゃあ25前ぐらいに見えるから経験ないって言ってもギリギリ理解できるけど、
僕の頭を揺さぶる胸を持つ物凄い体なのに処…処女なんスカ?
「 は…いい加減、諦めて経験しろっての…蜘蛛の巣張るぞ? 」
呆れたようにギーディアムさんが何か憐れむような眼差しになっている…
しかし、凄く下品な言い方だなぁ…
それに、その言い方さ経験豊富みたいじゃん? 寸足らずで子供みたいなのに。
「 ああ、そこの君…人は見かけで判断しちゃあいけないって
こいつこう見えても酒好き、賭けごと好き、もっと好きなのは男って奴だから
結構経験してるんぞ?
まあ、君の言う通り武器は極端に少ないけどな 」
清美さんがなにがおかしいのか噴き出すようにそう答える。
しかし、また…ジャニスさんの時と同じで言ってもいないのに答えが出てくる。
でも、僕が怪訝そうに見たからそう判断したからなのかな?
「 で、お願いってのはこの子の事か?
あんたの考えは読めないんで、ちゃんと口で言ってほしいんだけど 」
リンドさんが構えを降ろして、帯を直しながら黒い下着を仕舞いだす。
そうしながら、僕の顔を見てウインクをしてきた。
残念だった?って感じが伝わって来る…まあ、残念ですけど。
「 簡単な用事ですわ、この子ちょっと落ち込んでいてね。
少し元気づけてほしいんですわよ…方法はお任せしますから、明日の昼まで預かってください 」
は?っと振り返ろうとするけどジャニスさんの巨体が許さない。
軽く手を頭に回されただけでぼ~とするほど変な気持になった事もあるけど…
「 ほうかほうか… なら好きにさせてもらおうかな。
おっさん達の飲み会だけど、こういう華があった方が楽しめるしな 」
値踏みするかのようにギーちゃんが西宮の顔をじっと見る…
「 ふ~ん、んじゃ私が面倒みるか 」
「 お酒とかは駄目ですから…それは守ってくださいね 」
ジャニスさんが僕を解放したと同時に、
ゆるゆると蛇のようにナディアさんが僕の体に絡みついてきた。
「 うふん…そうときまったら、座って座って!お茶入れてあげるからね 」
ナディアさんはどうやって歩いたのか分からないが、座卓の前に僕と一緒に座る。
「 おい、抜け駆けは止めろよな…智彦君はみんなで面倒見るんだろ? 」
反対側にすっとリンドさんが座って、背後から清美さんがくっついてくる。
「 あほか!これじゃあお茶入れるの私になるやろが! 」
ギーディアムさんの声が部屋中に響く。
「 ま、未成年だし煙草ぐらいは我慢しないとな… 」
清美さんが僕の肩を超えて灰皿に煙草をすり付ける…
その時、急に頬に山の涼しい風が当たって来るのに気がついた。
あれほど煙っていた部屋の中の煙草の煙が一切なくなって、
閉まっていた障子もガラス窓もちゃんと開いて外の風がいつの間にか入ってきたのだ。
しかし、両隣り背中に若い女性の体温で涼しく思う間もなく体が熱くなってくる。
その場から逃げたい雰囲気だが、
男の生理現象でその場から一歩も動けない。
「 お前ら、童貞相手に無茶するなよな… 」
ギーディアムさんがいつの間にかお茶とお菓子を持って前に座ってそう言った。
いや…その前に貴方の浴衣を直してください。
貧弱な胸だけど…乳首まで見えてますし。
気がついたのかバッっとギーちゃんは浴衣の前を閉じた。
「 まだ陽が高いから… 」
と小さな声をあげて少し頬を染めた…陽が高いってなんだよ?
いつの間にかジャニスさんはいなくなっていた。




