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2本の尾  作者: ジャニス・ミカ・ビートフェルト
第一部 ”みけ”
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ギーちゃんが来た

怖ろしい宴会話が始まります。

  今日で愛先生( 先生って付けるようになっちゃた )に勉強見てもらって2週間が経った。

 その間に期末テストが途中であったので今日はその成績チェックっていうことになってる。

 まあ、珠ちゃんとも見せっこしたからお互いの成績は知っている。

 この2週間で珠ちゃんとはすっかり仲好くなって友達にもちゃんとなったからね。

 成績は私が家政科の下から4番目で珠ちゃんが3番目

 指定席(ブービー及びドンケツ)に収まらずに済んだのは先生のおかげだ。


”ま、計算関係と長文翻訳問題なんか今からやっても無理、教科書を毎日3回読みなさい ”

 拍子抜けするほどの指導だったけど結果がすぐに出た。

 でも、簡単そうに思うだろうけど全教科の試験範囲を毎日三回も読むのは大変だった。

 お兄ちゃんに本を読んでもらって…必死にルビ打って(漢字もよく読めないんだよね馬鹿だから)

 英語なんか、カタカナで読みずらいのを下のお兄ちゃんが何度もついて音読してくれて

 なんとなく教科書の内容が分かっただけだけどね。


  というわけで、土曜日の今日はいつもの様に星の海のバイトに来ている。

 先生は5時にお店を開けに来るから、

 その時についでに成績表と返却された答案用紙を見せる事になっている。

 それまではしっかり仕事を頑張らなきゃね…

 

  今日はこの間と違ってきっちりお昼にご飯を食べてるから元気いっぱいだし、

 私は先生にテストの結果を見せるのがちょっと楽しみ…

 ウキウキした気分で

 いつもの様に旧館の玄関前を棕櫚の箒で丁寧に掃きあげていた。


 瞳の方は九鬼さんと一緒に常連さんのお部屋を用意している。

前に商店街の肉屋の梶さんが強引に宴会をねじ込んできた原因の人たちが

 3時きっかりにお泊りに来られるからだ。


 もう2時半だから、そろそろ駐車場に来る頃だわね…

 

 暫くすると、九鬼さんと瞳が首を回しながら外に出て来たので一緒にお出迎えに行く…

 なにせ、このお客様は年に何度も来てくれる上得意様だし

 化け物みたいに飲んで遊ぶからうちの旅館にはありがたいお客様だ。

 ああそうだ…

 梶さんと約束してたんだった。宴会に飲み代商店街持ちで誘わなきゃいけなかった。

 しかし、大丈夫かねえ

 ほんと化け物みたいに飲むし、

 ”二次会はうちンとこか…”って先生もニコニコしながら相当な数のお酒を仕入れてたし

 ”お前らも奢りなんだろ? 晩飯は控えめにしておけよ…ご馳走用意しておくから ”

 って本館から高そうな料理の注文もしていた…凄い金額になるって思うんだけど。



  駐車場について待っていると、北村さんが運転するお客様用のリムジンが入って来る。

 結構儲かっている星の海だけど、車は外車じゃなくて国産車だけどね。


 音も無く静かに車が止まると、涼しい風と共にドアが開いてお客様が飛び降りて来る。


「 んにゃ!久しぶりす! お世話になるっす! 」


 真っ黒い髪に白い肌、真っ黒い瞳は日本人形の様に上品な出で立ちだったが、

 何とも残念な言葉使いで、

 大股で万歳を何度もしながらその女性は九鬼の元へと歩いて行く。


 瞳と”みけ”は、何度も見ているんで少し頬が緩むだけだし、

 九鬼に至っては、慣れているんで静かに頭を下げる。


「 ようこそいらっしゃいました。お待ち申し上げておりました… 」


「 うんうん、よろしくね! 」


 身長152センチの小さい体で6頭身って少し頭のバランスが大きいその女性は

 天真爛漫を絵にかいたような光り輝く笑顔を見せる。


「 ”みけ”ちゃんも久しぶりだね!相変わらず洗濯板で可哀想だけど…

  それに引き換え、瞳ちゃんはまた胸がでかくなって重くない? 」


 遠慮も何もない言葉に瞳も”みけ”も顔が引きつる。


「 3か月でそんなに変わる訳ないですよ…ギー…ギーちゃん 」


 お客さんだけど、そう言わないと怒るんだよなあ。

 私よりはだいぶ上…多分25か6の筈なんだけど、ちゃん付の方がしっくりするから

 別に抵抗は無いんだけど。


「 そうだった? 」


 ギーちゃんこと、ギーディアム・ハイランドさんはそう恍けた。


 日本人形のようなではあるけど、一目見るだけで外人って分かる。

 磁器の様な白い肌と黒曜石のような瞳は日本人には無い深みのある黒い瞳で

 唇も鼻の形も西洋人そのものの姿をしている。


「 ねえ、チェックイン済んだらビール持って来てよ 」


 後部座席に据え付けてあったワインが2本空になってアイスペールに突き刺さって

 空のワイングラスをもって次々と女の人が降りて来る。


「 はい?備え付けの冷蔵庫に3本ほど入っておりますけど… 」


「 は?九鬼さんってば…3本なんて喉も潤ないんすけど 」


 いや、ワインで喉が渇いてるんじゃあ…とみけは思ったが、一応は聞いてみる。


「 リンドさん…どのくらい追加しましょう? 」


「 う~ん、とりあえず…大瓶6っ本ぐらいでいいかしら? 」


 750ccの度数14度の赤ワインを4人で2本も飲み干しているのにもかかわらず

 凄い量…3.8リットルもまだ飲むわけ? と瞳は驚いたが…


「 清美~ナディア そんでいいでしょ? 」


「 ああ…まあ駅でワンカップ飲んでるからそのぐらいでいいか? 」


「 ですわね… 」


 全く顔色は素面だが、吐く息に酒の匂いが混じる二人が背伸びしながら降りて来る。


 今日一日で、星の海の1週間分のお酒が消えていくとは思いもしていない”みけ”達は

 ただただ呆れた。


 

 

 




 

 


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