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2本の尾  作者: ジャニス・ミカ・ビートフェルト
第一部 ”みけ”
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寝不足の朝に

  窓の外が少し明るくなる午前5時半…夏の朝は早い。

 お味噌汁を作る鍋に水を張って、ガスレンジのつまみを廻して火を起こす。

 ご飯はもう少し後に炊きあがる…お兄ちゃん達には炊きあがりを食べさせたいからね。

 なんせ、昨日は剛ちゃんちで御泊りでインスタントだったらしいから…


 しかし、睡眠不足で眠いわ。

 あの後、愛さんにいろいろ指導という名の説教を夜中の3時まで食らった。

 眠いわ、お腹減るわ、喉渇くわ…さんざんな目に会ったのよね。

 んで就寝したけど、

 隣で珠ちゃんが歯ぎしりと、小声で愛さんの悪口言ってたから殆ど寝れなかったもん。


 なんで、急に珠ちゃん?って思うだろうけど

 これも愛さんの言いつけなんだ…

 私もだけど、珠美ちゃんは”みけ”ちゃんて私を呼ばなきゃならない。

 なんでも、卒業まで一緒に悶え苦しむ仲間になるからって言ってたけど、

 単に呼びやすいだけだと思う。


「 ”みけ”に”たま”ですか…先生としては呼びやすいですわね。

  そこらの感性は私に似てますわね、可愛いし私もそう呼ぼうかしら 」


 人事だと思ってジャニスさんがくすくす笑ったけど


「 ジャニスさんは、先生じゃないからちゃん付けにして下さいよ。

  呼び捨てにするのも教育的効果を上げる為ですか行うんですからね 」


 愛さんがそう言って釘を刺しておいてくれた。



 朝は二人とも赤い目をして起床して、早苗さんの朝ご飯食べて高校へ行った。

 授業も受けたけど、殆ど記憶が無い。

 目を開けたまま寝るという、中学時代の必殺分かんない授業回避術を駆使して寝まくった。

 珠ちゃんは…机に突っ伏して正々堂々と居眠りしてたけどね。

 それでも、休憩時間ごとに瞳や木田ちゃんがしつこく剛ちゃんちでの事を聞いて来るから

 熟睡は二人とも出来なかった。

 それでも珠ちゃんは面倒見ている後輩たちに引きづられて弓道部に連れて行かれたし、

 私もお兄ちゃん達にひもじい思いをさせないために家に帰って買い物に出かけてと

 普段と変わらない生活を送って、

 お兄ちゃん達の入った風呂に最後に入って浴槽洗って洗い場洗って、洗面して洗面台掃除して

 やっとこさ8時に布団に入ってゴロゴロして眠った。


 で、朝の5時に起きてエプロン付けて新聞取りこんで今に至る。

 睡眠時間9時間も取ったら寝不足も何もないだろうと思うだろうけど、

 前日の愛さんの指導で頭を使ったんでエネルギーが切れかかったのと、

 今後の事で更にない頭を使ってあれこれ考えたのが凄く利いている…眠いのは眠いのだ。




 ふと、昨日の事が頭に浮かぶ…



「 勉強、勉強っていったて時間が無いすけど…部活にバイトにぃ…家の事もあるし。

  ほら、うちってばあちゃんと二人暮らしだし 」


 珠ちゃんが途中で言った言葉を思い出す。

 私だって食いざかりのお兄ちゃん達と、家事も手を抜いてなんて出来ないしって思ったけど…


「 はあ?時間が無い? あんたら、テレビは見るか?パソコンやスマホは? 」


「 テレビは…そうやね~アニメを1時間でバラエティをちょっと見るかな?

  パソコンは無いからやらないけど…スマホは女将さんから貰ってるから1時間ぐらい? 」


「 ふ~ん。家事はどのくらい? 」


「 その日によりますけど、一日2時間…いや、1時間半?ぐらいですかね。

  だから、部活終わって5時でしょ、バイト行って帰るのが7時半、

  家事と娯楽時間入れたら…朝に少し廻しても夜の10時ぐらいまでいっぱいですけど? 」


 どうや!って顔で珠ちゃんが胸を張る…私は事情が変わるけどそれでも8時まではかかるか…

 テレビは全く見ないし、携帯はただの移動電話だし、パソコンは2時間ぐらいするけど…



「 んじゃあ、テレビやめてスマホは家事のながらかトイレの時間にでもして、2時間は切れるし

  家事も”みけ”や瞳に教えてもらったら効率が上がるから30分は短縮だな…

  2時間半もあるだろ?平日はそれで何とかなるし、

  部活で休日が潰れてって言うなら一緒に教科書持って暇の時に読めばいいし、

  部活やバイトを差し引いても時間はあるだろ?娯楽毎捨てればさぁ 」


 真顔で愛さんはそうのたまった。


 珠ちゃんが眉をつりあがらせて爆発しそうになるけど、

 珠ちゃん以上に暇の無い私は、目を剥いて怒った。


「 私にはお兄ちゃんやお父さんを面倒見る仕事があるし、バイトだって一生懸命… 」


 だが、


「 ああ、それは大変だなぁ。ま、死ぬまで”みけ”が家族の面倒見れる訳ないから

  多少は自分たちでやって貰うようにお願いしてみろ。

  

  バイトを一生懸命やるのは当たり前だ…お金貰うんだからな。

  そちらはうちが仕事で行くから旅館で教えたりできるから…タマより時間は出来るだろ? 」


 ああ言えばこう言う…しかし16歳の高校生に自由時間が無いなんて…


 私と珠ちゃんの思い出の青春高校生活が急に灰色になるのを感じて気が重くなったっけ…




 私は、眠い目をこすりながら、

 愛さんに何と言われようと、お兄ちゃんにはちゃんとした朝ご飯を作るのは止めないと決めている。

 特に上のお兄ちゃんには猫だった時に命を助けられたしね。

 






 



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