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2本の尾  作者: ジャニス・ミカ・ビートフェルト
第一部 ”みけ”
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怪力

 「 大学って…あたいが行くんですか? 」


 珠美が呆れたように大きな口を開ける…うちの方が呆れるけどな。

 大体やな、底辺校で無くても高校の家政科は進学にはめっちゃ不利やもん。

 進学先で思い浮かぶのも看護短大、栄養学系の短大、専門学校てのが定番じゃん。


 家政大学って4年制の大学もあるけど、そう言う所は進学高校の生徒が行く所だもんな。

 何気に偏差値だって45はあるか…普通科の高校なら余裕でも

 数Ⅰ、日本史はA、世界史は無いわ英語は総合のみの家政科では敷居が高すぎる。

 その上、この県下で芋虫状態の偏差値30だぞ無理に決まってるじゃん!


 その底辺校で進級がやばいって究極に絶望的だわ。


「 ま、まあ…世話になった女将さんの頼みだし…やるだけはやるわ 」


「 なんか、投げやりに聞こえるんですけど… 」


  投げやりになるやろ?あんたの頭はそれほど酷いんやから…でも、こいつ昔不良やったな。

 ここはひとつ強く出て具合を見るか。


「 はあ?投げやりになるやろ馬鹿なんやからさあんたはさぁ 」


 うちは覗き込むように珠美の顔を馬鹿にしたように見る。

 

「 はあ?馬鹿って何や! 」


 おお、反応した反応した…顔が真っ赤やわ。

 こういう奴ってのは挑発には弱いんだよね、うちも昔そうだったし。


「 あの高校の家政科でドンケツのあんたが馬鹿やなかったら、誰が馬鹿やねん 」


 うちの言葉に美人さんの珠美の顔がみるみる変わって、凶悪な目に変わる。

 それは”狂乱”って名前がふさわしいほどの猛烈な圧で、

 つい今朝までのうちなら少し引いてしまうほどだったが、

 悪魔の落ちたうち(ジャニスの言う通りなら)には毛ほども恐れはない。


 喧嘩好きの血の気の荒い漁師の息子たちを、”狂気の拳”で何人も屠ってきたし、

 この子が”狂乱”って通り名なら、うちは”狂虎”って呼ばれてたしな。


「 止めてくださいよおおお 」


”みけ”が重い雰囲気に耐えかねてそんな声を上げるが


「 あんなぁ…あんたもこの子とさして変わらん馬鹿やろ?

  卒業させるって目標は違っても、別メニューで勉強教えるめんどくさいこと出来んから

  同じようにしごくから覚悟しな 」


 おお、この子も凄い目でにらみ返してくるわ…可愛い顔して圧も結構あるな。

 しかし、髪が少し逆立っているような…怒った猫みたいやな。



「 ちょ…そんなに挑発して、困るんですけど 」


 うちや娘っ子たちが殺気だっているなかで、一番強そうな巨体のジャニスが蒼い顔をして

 泣きごとを入れ込んでくる。

 さっきの余裕たっぷりな態度が嘘の様だと思った。



「 なあ、タマ…喧嘩したいならいつでも買ってやるけど… 」


 うちは4人が付いている大きな座卓の端を持って、ひょいと90度の持ち上げる。

 三人が呆れてその机を見上げた。

 そりゃあそうだろう…2メートル×1.3メートルの大きな机が

 156センチの小柄のうちが座ったまま片手で持ちあげたのだから。


「 悔しいなら、うちがびっくりするほど勉強出来てからにしたらどうや 」


 珠美はうちを血走った目でまだ見ていたが、その顔はすっかり蒼くなっていた。

 こんな体勢でこの大きさの重い木の座卓を持ちあげるのが信じられないんだろう…

 人間の力を感情というブースターで飛躍的に上げるうちの特性。

 高校生のときまでは普通に出来た事だが、

 卒業以来、その力は消えてただの力持ちになった…どうしてか理由は分からなかった。

 150キロの剛速球を投げていた野球選手が行きなり120キロ以上

 どうしても出なくなる様な事例もあるから、そんなもんかと思っていたが

 今日、人間ですって言い張る偽物○○○○のおかげでその力を呼び戻せたようだ。


「 凄い…京都大学出て頭のいい人がこんな怪力ってずっこいわ 」


 ”みけ”の言葉に


「 はい?京都大学?誰が? 」


「 だって、九鬼さんが”愛は凄いぞ学歴は京都大学卒だって… 」


 ああ、姉御…勘違いが激しすぎるって!うちは京都の大学って言っただけじゃん。

 同じ国公立だけど、相手は旧帝大で東大に並ぶ難関大学だけど、

 うちの卒業した大学は…ただの府立なんすけど(馬鹿では入れないけどね)


「 ごめん、それ間違いだって。大学は出てるけどな…ふ、府立だし 」


 うちは少し顔が赤くなった…別に公立だし恥ずかしい大学ってわけじゃないけどね。


「 ま、まあ、そうだとしても公立で大学なら私や中村さんにとっては同じようなもんだよ…

  どんなに頑張ってもどうあがいても絶対にたどりつけない場所だもん 」


 いや、さっきまで酷い事言ってたけどそこまで自分たち卑下してどうするの?


「 たどりつけない場所なんてないって思うぞ…

  うちも高校生の時は田舎のしかも離島で馬鹿ばっかの高校で下から数えたほうが早い

  真正の馬鹿だったし… 」


 うちの言葉に、急に二人の圧が消えるのを感じた。


「 それって、もしかしたらあたいも大学に行けるってことなのかな? 」


 珠美の目が少し輝いたような気がした。


「 じゃあ、私も? 」


 ”みけ”も同じように目を輝かしてくる。


 う~ん、無理!馬鹿って身の程知らずなんだよね…うちと同じで。


 















  

  





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