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2本の尾  作者: ジャニス・ミカ・ビートフェルト
第一部 ”みけ”
40/100

ドリルから始める高校生活

  「 へえ…それって本当?教員って大学で必要単位取らないといけないんだけど… 」


「 そうなんですか?でもちゃんと先生として勤めてるから問題ないんじゃないですか? 」


「 いや、そうだけど… 」


( 私立の底辺校と言っても高校なんだから法律違反は無いか…

 まあ、教員資格を取っても教師にならない奴など星の数ほどいるからなぁ、

 最初に別の仕事してたかもな。

 でも、そうじゃなくて大学入り直すってのだったらびっくりだわ。

 小説や漫画なんかではそう言うのはあるけど、

 実際の話、勉強は持続してやっていないと忘れるスピードが速いから

 普通に高校行ってから大学行くより物凄く大変なんだよなぁ…最も例外もあるけど

 あくまでも例外なんだからさ )と省吾は思った。

 

「 後は、壮絶な生活指導ですかね…文字通り”死んでも構いません”の誓約書通りってな感じで 」


「 ああ、妹の時にも書いたなぁ…でも、それって覚悟を試すって感じなんだろ? 」

 

 それを書くのが”みけ”がいける高校の条件なら仕方ないなって思ってたが、

 勿論、それで死んだらただで済むわけないし許す訳ないけど。


「 いやですねぇ…マジですよマジ 」


 その言葉は真実の重みが感じられて省吾は背中に冷たいものを感じた。


「 それと…ドリルですかねェ…思い出したくもないですけど 」


 翔子はそこまで言って渋い顔をする。


「 ドリルから始まる高校生活か…懐かしいなぁ 」


 いきなり隣の机の珠美がそう言いながら手を縦に振ってジャニスに断り、

 ニコニコしながら省吾と翔子の真向かいに座った。


「 いいの?剛ちゃん…何か楽しそうなんですけど 」


 雰囲気的に危険な”みけ”を押さえてくれるだろうと期待している珠美が目の前に来て

 翔子は心配そうに剛一郎の方を見る。

 

「 まあ、慌てるなって。剛ちゃんは夢中かもしれないけど、

  ”みけ”の方は結構迷惑って感じだから…ほっといても大丈夫だよ 


  さっきからあたいがどうとか気になる事言ってたから、

  誤解の無い様に言っておこうかなって思ってさ。

  それに、”みけ”のお兄ちゃんたちもカッコいいから興味あるし 」


 臆面も無く珠美は省吾の顔を見て笑った。


「 剛ちゃんは? 」


 翔子は折角の機会を邪魔されて少しふくれっ面になった。


「 それを言ったら、あんただってそうだろ? 」


 珠美はそう言うと面白そうに翔子の顔を覗き込んだ。

 それは不良が脅しをかけるのとは違って柔らかい雰囲気だった。


「 ドリルから始まるって何? 」

 省吾は首をかしげた。


「 ドリルには、三つの意味があるって最初に先生から言われたんですけど聞きます? 」

 

「 三つ?穴をあけるドリルと後は…反復とか教練って意味だったけ算数ドリルとか… 」


「 そうなんですけど、ちゃんとあるって最初の指導の時に言われたんですよ。


  うちの高校に来る奴は最初から酷い状況…地獄にいる。

  頭が悪い地獄、家庭が地獄、虐めが地獄、そして周りから疎まれる地獄、

  だから、そういう地獄に穴をあけるって意味のドリルってのが三番目だって 」


 省吾は急に重い話を聞かされて唖然とした。


「 まあ、聞いた時はどこに来たんだって思ったよな 」


 翔子の横で瞳がポツリと呟いた。


「 で、ひとりひとりプリント貰ったんだよね…勉強のドリルと一緒に 

  私は馬鹿で勉強できなかったから目を白黒しちゃって 」

 

 翔子が懐かしそうにそう言うと、


「 掛け算九九や漢字の書き取りだったけどな… 」

 瞳がそう苦笑いしながら言葉を繋げる。

「 でも、一緒に貰ったプリントはみんな違ってたんですよ 」


「 貴方のドリルって、その人だけに行う特別な指導内容でした 

  入学生徒一人一人、丁寧に本当に丁寧に書いてありましたよ。

  ここなら私も変われるかなってそう思いました 」

 珠美が輝く様な笑顔でそう言った。



 省吾は思った…どこが底辺校なんだよって

 


  

  


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